0
会員になると、いいね!でマイページに保存できます。
2016年は「VR元年」と言われるほど、業界も世間も大いに盛り上がった。「150万ドルで作っていたものが1500ドル程度で手に入れられるようになった」(HTCのJoel Breton氏)ことはその理由の1つだろう。日本では、ソニーが10月に発売したPlayStation VRが話題をさらったほか、「すべてのメーカーからVR製品が出そろった」(OculusのJason Holman氏)ことも元年というにふさわしい。さらに事業としても「収益化の道が見えてきた」(グーグルのNoah Falstein氏)という。それでは今後、VR市場はどうなっていくのか。グーグル、フェイスブック傘下のOculus、ソニー・インタラクティブエンタテインメント、HTCら、VR業界をけん引するキーパーソンが一堂に会して語り合った。
VR業界にとって2016年はどのような年であったか
11月16日に開催された「Japan VR Summit 2」(主催はグリーとVRコンソーシアム)の基調講演では、VRの主要キープレイヤーが集結し、2020年に向けたVRのビジョンと可能性について語り合った。
まずモデレータをつとめるカドカワ 取締役 ファミ通グループ代表 浜村弘一氏が、2016年を振り返って、VR元年と言われた今年の所感について各パネラーにたずねた。
OculusのHolman氏は「今回、このステージにいるすべてのメーカーからVR製品が出そろった。この2016年を総括すると、多くの人々にVR体験を届けられた1年間だったと思う。我々は12月にOculus Rift用のモーションコントローラー“Oculus Touch”を出すが、これも従来と異なる体験をもたらすだろう。技術的な前進だけでなく、コンテンツ側の進展もある。ゲームの没入感だけに留まらない可能性を見いだせた。今年は多くの新しいことがスタートした記念すべき年になるだろう」と歴史的な意義を強調した。
HTCのBreton氏も「非常にエキサイティングな年だった。我々もフルプレゼンスVRを提供できた。20年前に私は空中を降りるパラシュートのVR体験をしたが、当時は150万ドルの防衛予算で作られていた。今は同様の技術が1500ドル程度でコンシューマーに届けられる。今年はコンテンツ側から見てもVRの黄金期を迎えており、分水嶺の年になるだろう。開発側もUnityなどの素晴らしいアセットがあり、強力なコンテンツを制作して、どこでもデリバリーできる環境が生まれた。ようやく我々も“約束の地”にたどり着けた。感無量だ」と語った。
ソニー・インタラクティブエンタテインメントの高橋氏は「VRで新しい体験が始まった。ただし実体験をしないと、その良さがわからない。そこでイベントなどを通じて積極的に伝えてきた。また開発側もVRでプレイヤーが酔わないように工夫したり、制作法を検討することで、ハードもコンテンツも楽しめる環境がそろった。またPlayStation VRも発売され、一般コンシューマーに広げられるタイミングが訪れた。VRを伝える環境が整い、皆さんが楽しめて、クリエイターの制作環境が整ったので、本当に今後が楽しみだ」と期待を表明した。
グーグルのFalstein氏は「すでに我々は500万台のCardboardを提供してきた。ダウンロードされたコンテンツはその10倍だ。これによりVRを初体験した人が増えた。現在いろいろなものを試せる環境が整ったが、VRコンテンツの良し悪しを決めるのはコンシューマーだ。私は1994年に初めてデータグローブで魔法の世界を見た。いまでは技術の進展がエンタメ分野まで広がり、誰もがVRコンテンツに没入し、新感覚を体験できる。グーグルは、さまざまなことに挑戦してきたが、VRによって何が実現できるのかという点を理解することで、新産業を創出できると思う」と次世代産業への展開を示唆した。
【次ページ】2020年への新技術は2K/4K、フルボディ・トラッキング…その先は?
関連タグ