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  • 2016/11/29 掲載

ソニー、グーグル、Oculus、HTCが語る「VR」戦略、2020年までに何が変わるのか(2/2)

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2020年に向けた新技術は2K/4K、フルボディ・トラッキングなど

 これらの所感を受けて、浜村氏は今年発売された各社のVR機器を提示しながら、「本当に素晴らしいスタートを切れた2016年だった。そこで、これから4年後の2020年までのビジョンとゴールを教えてほしい」と問いかけた。

 ハンドジェスチャーが可能なOculus Touchを発売するHolman氏は「重要なことは『インプット』だ。2020年までに、さまざまなインプットに注力したい。もう1つはソーシャルとの結びつきだ。我々はToyboxのデモによって、Oculus Touchで他人と一緒に指でプレイできることを示した。VRは社会的体験の拡張になるだろう。たとえば1つの場所に集まった4万人がウェーブを一斉に起こすような体験もできる。最後にテックデモの終焉が来るだろう。やがてユーザーはVR体験に慣れてしまい、デモの新鮮味もなくなってしまう。そこでVRもより快適で長期的に楽しめるものに変わっていくだろう」と予測した。

Toybox Demo for Oculus Touch


 Breton氏は「HTC Viveによる360度の体験が、クリエイターに非常に有効なことがわかった。頭を回して周りを見渡すだけなく、四方に動き回ってすべてのインタラクションが行える。今後はユーザー体験からフィードバックを得て、求められるフルプレゼンスも理解できるだろう。ハードウェアについてはケーブルレスの要請がある。来年にワイヤレスをアドオンできるキットをパートナーから提供する。また頭と手だけでなく、体も含めたフルボディ・トラッキングを2020年までに提供したい」と意気込みを示した。

 もう1つHTCには、ハイレゾへの挑戦がある。ただし、ケーブルレスと高解像度の実現は相反関係にある。「2020年までにはHDから2Kの解像度に上がるだろう。リビングでケーブルなしに動き回って、さらに全身でVRを体験できる時代になる。しかし次の4Kになると、またケーブルが必要になる。両立が難しい分野だが、コンテンツに没入するためには、高解像度は重要なので、引き続き挑戦していくことになると思う」(Breton氏)。

 ソニーの高橋氏は「1960年に初のカラーテレビが販売されたときは、4年後の東京オリンピックがキラーコンテンツになった。VRでも同様のことが起きるかどうかはわからないが、やはりVRの普及のためには『コンテンツ』が重要だ。4000万人を擁するPlayStation 4のプラトフォームをベースに、高品質なコンテンツを楽しんでもらうことが我々の戦略。ゲームだけでなく、たとえば映画や旅行などのエクスペリエンス系など、VRコンテンツが広がっていくことが重要だろう」と説明する。

 そこでソニーでは、よりリッチな表現で没入感を楽しめるPlayStation 4 ProによってVR環境を強化したり、またインタラクションも重視して、DUALSHOCK 4やPlayStation Move、さらに開発中のシューティングコントローラ「PlayStation VR Aim Controller」などを投入することで、より深くコンテンツを楽しめる環境を提供していく方向だ。

ソニーが10月に発売した「PlayStation VR」


 グーグルのFalstein氏は「VRでワクワクするのは収益化の道が見えてきたこと。我々はGoogle Daydreamによって、モバイルVRを模索してきた。モバイルVRは、専用VR機と比べて出力も100/1で処理能力も弱いが、その一方でスマホがあれば、PCやHMDを買う必要がない。2020年までの予測は誰にもわからないが、オーディオVRに課題があるため、ここで大きな一歩を踏めればよいと思う。また感情に訴えるホラーコンテンツも作った。今後も多くのコンテンツやアクセサリーが登場し、現実世界と同様のことができるようになるはず」と展望を示した。

6月に発表されたGoogle Daydream


VRは今後どのように世界を変えていくのか

 浜村氏は「まだ登場したばかりのVRだが、すでに次の新技術の準備が進んでいる点は興味深い。ますます面白くなりそうだが、VRは今後どのように世界を変えていくのか?」と質問を投げた。

 これに対し、OculusのHolman氏は「VRはすごく面白いエンタメのデバイスになるが、さらにそれを超えていくだろう。まだ何が一番役立つのかは見えていないが、社会的な観点から、VRの世界でどんなコラボレーションができるのかということだと思う。たとえばVRのアバターと一緒に働きたいと思うようになるかもしれない。そうなると人々のプレゼンスの考え方が変わってくる。いろいろなデータを操作して、多様な表現ができるようになり、それが積み木のように重ねっていく。VRを日々の生活に使うことは、生産性の向上にもつながるだろう」と説明した。

 HTCのBreton氏は「HTC Viveチームでは、主要10項目を目標に打ち立てている。数年後にVRによって破壊的なイノベーションが登場するだろう。そのなかでも我々はデザイン分野に興味がある。たとえばVRを利用して、ジャンボジェットのシートの最適設計もできるはず。また医療分野ではPTSD(心的外傷後ストレス障害)やアルコール依存症などにも効果を発揮するだろうし、教育分野でもVRによって月や火星を探検することができるかも知れない。パイロットや警官のトレーニングなども考えられる。彼らが共感しながら学べる点がVRのパワフルな点だと思う」とその幅広い可能性に言及した。

HTC Viveの医療分野での活用


 ソニーの高橋氏は「ゲームクリエイターが平面から空間の世界に表現を広げられた点が大きい。これからは完全に空間を作れて、どこからでも楽しめるようになる。そういう意味で、アートの世界が大きく変わるだろう。個人的には、その延長でショッピングも変わっていくと考えている。Web上の平面的なリストでなく、空間に好きなデザインの店をつくり、VRのアバターでユーザーもオブジェクトのスケール感やフィッティングを確認できる面白い世界になっていくのではないだろうか」と購買行動の変化について触れた。

 グーグルのFalstein氏は「私はルーカスアーツとドリームワークスで働いていた時代がある。映画分野では、スピルバーグや宮崎駿になりたいクリエイターたちが、新しい表現やインタラクティブ性をVRを使って感じられるようになるだろう。また、もう1つ面白い分野は医療だ。VRを使って人々を健康にしたり、障害を克服できるので、待ちきれない想いだ」と映画分野に対する高い期待を語った。

 最後に浜村氏は「2016年に最高のスタートを切れたVRだが、これからも急速に進化していくことが理解できた。さらに社会インフラを変えて素晴らしい未来を創ってくれることもわかった。もちろん、それを実現くれるのは、ここに集まったプレイヤーたちだ」と称賛して、ディスカッションを締めくくった。

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