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  • 2016/09/08 掲載

ふるさとワーキングホリデーは「地方移住」の架け橋になれるか

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総務省は、2016年度中に都会の学生や若手社員が働きながら田舎暮らしを体験する「ふるさとワーキングホリデー」をスタートさせる。制度の利用を希望する都道府県ごとに若者を受け入れ、製造業や観光業、農業などに従事してもらうもので、若者と地方の関係を深めて将来の地方移住を促すのが狙い。鳥取大地域学部の筒井一伸准教授(農村地理学)は「地方への関心をより高めるメニューとしては期待できる」と評価する。若者の東京一極集中が続く中、新制度は地方移住に弾みをつけることができるのだろうか。
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地方移住への関心が高まりつつある中、「ふるさとワーキングホリデー」は地方と都会の住民に架け橋になれるのだろうか=高知県大豊町
(写真:2015年12月、筆者撮影)

都道府県が若者を受け入れ、勤務先や滞在先をあっせん

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 ワーキングホリデーは、若者が海外で働きながら就学や観光をする制度で、2国間の取り決めに基づき、それぞれの国が専用ビザを発給する。この制度の考え方を生かし、都会と地方で若者の行き来を活発にするのが、ふるさとワーキングホリデーの目的。いわば地方移住の架け橋とするために計画されたものだ。

 計画内容はまだ詰めている段階だが、都道府県が若者を受け入れ、1週間から1カ月程度地方で働いてもらう。その間、市町村と連携して勤務先や滞在先をあっせんし、起業に向けた研修や地元住民との交流イベントを催す。

 勤務先の休日には、地域内観光とともに、地域おこし活動に参加してもらう。参加者は観光旅行で感じ取れない地域の実情に触れ、地域住民とのつながりを築くことができる。自治体は将来の移住に期待を持てるほか、滞在者が増えることで地方の消費を押し上げ、人手不足を解消できる。

 対象となる若者は、首都圏や京阪神の大学生だけでなく、企業で働く若手社員も加える方向。都会で生まれ育った若者に田舎暮らしを知ってもらう一方、高校や大学進学で故郷を離れた若者の帰郷支援も考えている。

 ふるさとワーキングホリデーが8月に決定した政府の経済対策に盛り込まれていることから、総務省は2016年度の補正予算を確保して初年度の事業費に国費を充てる考えだ。

 総務省地域政策課は「今回の取り組みはいわば国内版のワーキングホリデー。都会の若者に地方との距離を縮めてもらい、地方へ移住する人を掘り起こしたい」と意気込みを語った。

都会の住民間で田舎暮らしへの関心が急増

 政府は地方移住の推進で2020年までに首都圏から地方への転出を2013年の37万人から4万人増やす目標を掲げている。そのためには都会の住民の目を地方に向けなければならないが、若者の間では田舎暮らしに対する関心が徐々に高まってきた。

 国土交通省が、内閣府によって2005年に実施された「都市と農山漁村の共生・対流に関する世論調査」と、2014年の「農山漁村に関する世論調査」を比較したところ、どの年代でも「田舎暮らし願望がある」と答えた人が増えている。

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都市住民の農山漁村への定住願望。どの年代でも「田舎暮らし願望がある」と答えた人が増えている

 最も田舎暮らし願望が強いのは20代で、2005年の30.3%が2014年に38.7%まで上昇した。2005年には10%台にとどまっていた30代、40代の子育て世代も、2014年には倍増の30%台を記録している。

 ふるさと回帰フェアを開催するなど都会の住民の地方移住を後押ししているNPO法人ふるさと回帰支援センター(東京)に問い合わせや相談をした人の数は、2015年に初めて2万件を突破し、2万1,584件に達した。それまでも右肩上がりで増えていたが、2014年の1万2,430件から一気に73.6%の大幅増となっている。

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ふるさと回帰支援センター問い合わせ、来訪者数

 2015年に相談に来た人の45%は20代か30代の若い世代。安心して子育てできる環境を探す人が目立っているという。同センターでは相次ぐ自治体の相談窓口開設や移住相談会、セミナー開催が効果を後押ししたとみている。

 移住希望先は長野、山梨、島根、岡山など特定の地域に偏る傾向も見られるが、若者の意識が変わりつつあるのは間違いないようだ。

 同センターの高橋公代表理事は「若者のほか、Uターンや地方都市への移住希望者も増えてきたのが最近の傾向。非正規雇用の増加、東日本大震災の原発事故、地方創生ブームから都会の住民が田舎暮らしに目を向けるようになったのではないか」と指摘する。

【次ページ】全国の自治体が移住体験ツアーを実施
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