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  • 2024/11/19 掲載

ユニクロの「ヤバすぎる」幹部向け小冊子の中身、柳井氏の「根っこ」がわかる

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ユニクロがここまで圧倒的なブランド力を築けた理由は、単なるカリスマ経営者の存在だけではない。「社長がいなくても回る仕組み」を全社に浸透させることだという。現場のスタッフまでもが経営者の視点を持ち、自分の店舗や売り場を自らの裁量で動かす。とはいえ、その実現は決して簡単なのものではない。元ファーストリテイリング執行役員の宇佐美潤祐氏によれば、それを実現するための幹部向けの小冊子があるという。同冊子はなぜ作られたのか、そしてどのようなことが記載されているのか。『ユニクロの仕組み化』を上梓した宇佐美氏が解説する。
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ユニクロ幹部社員向けの小冊子「経営理念23カ条」驚きの中身とは
(Photo:aappp/Shutterstock.com)
※本記事は『ユニクロの仕組み化』を再構成したものです。

ユニクロは「柳井さんがいなくても回る」

 今や国内では敵なしのブランドになったユニクロは、メディアなどではカリスマ経営者の柳井正さんにスポットが当たりがちです。

 ただ、実際はむしろ「柳井さんがいなくても回る仕組み」があることこそが、本当の強みになっています。

 「柳井さんがいなくても回る仕組み」とは、経営陣や管理職だけでなく世界中の店舗のひとりひとりのスタッフにも「変革」を求める仕組みです。ひとりひとりに「経営者」になることを求めています。

 たとえば、銀座店のメンズのインナー担当者には銀座のメンズのインナー売り場で、吉祥寺店のウィメンズのアウターの担当者でしたら吉祥寺店のウィメンズのアウターの売り場で、「経営者」としての力を発揮してもらう仕組みをつくっています。日々の自分の仕事の中で、自分の頭で考え、目の前の課題を解決できるようになるための仕組みです。

 そのための、雇用体系を変えたり教育制度を整えたりといった試みもあるのですが、その制度をうまく機能させるには当然意識づけも重要になります。むしろ、意識づけこそ最も重要といってもいいでしょう。

 環境を整えた上で、働く人ひとりひとりに魂を込める必要性があるのです。その最も難しい意識づけも「仕組み化」しています。それが、今やユニクロのバイブルとなっている「経営者になるためのノート」です。

柳井氏の「経営理念23カ条」

 ユニクロでは、幹部社員向けに柳井さんの経営理念をまとめた小冊子「経営理念23カ条」というものがあります。これは、柳井さんの膨大な具体的経験と古今東西の経営者からの学びから理念を抽出したものです。

 第1条から第7条あたりまでが比較的初期につくられたもので、少し紹介しますと、

  1. 顧客の要望に応え、顧客を創造する経営
  2. 良いアイデアを実行し、世の中を動かし、社会を変革し社会に貢献する経営
  3. いかなる企業の傘の中にも入らない自主独立の経営
  4. 現実を直視し、時代に適応し、自ら能動的に変化する経営
  5. 社員ひとりひとりが自活し、自省し、柔軟な組織の中で個人ひとりひとりの尊重とチームワークを最重視する経営
  6. 世界中の才能を活用し、自社独自のIDを確立し、若者支持率No.1の商品、業態を開発する、真に国際化できる経営
  7. 唯一、顧客との直接接点が商品と売り場であることを徹底認識した、商品、売り場中心の経営

となっています。

 もともとはユニクロの前身の小郡商事の経営理念として1979年に作成され、そこに継ぎ足しに継ぎ足して第23条まで増えました。柳井さんの経営哲学の根っこの部分であり、経営に対する基本的価値観です。

 これは現在まで全く変わっていません。ある外部有識者が「23個はあまりにも多すぎるので、もっと少なくしたらどうか」と柳井さんにアドバイスしたら、その人は二度と柳井さんに呼ばれることはなかったという、真偽は定かではない逸話も残っています。それほどの強い思いが「経営理念23カ条」には込められているのです(ホームページ上で公開されている2023年度のアニュアルレポートでは柳井さんの手書きのものを見ることができます)。

 ただ、「23カ条」は状況によって継ぎ足して構成されてきたこともあり、構造化されていない点は否めませんでした。重複感も一部あります。論理の集合体なので、そのまま読むだけではなかなか定着が難しい面もありました。

 そこで、2012年に「23カ条」をベースにしながら、柳井さんの頭の中にある経営の原理原則を改めて言語化し、体系化しました。それが「経営者になるためのノート」です。

 私がユニクロの経営者・人材育成機関(FRMIC)の担当役員として2012年に入社したときに柳井さんに真っ先に言われたことは、「2020年に売上高5兆円を達成しグローバルナンバーワンブランドになるために200人の“経営者”をつくってください」ということでした(この場合の経営者は執行役員以上という狭義の意味です)。

 当時の売り上げが1兆円で執行役員が約40人でしたので、5倍の売り上げには200人が必要という極めてシンプルな計算に基づくものでした。

 そのための私の重要ミッションは「経営者になるためのノート」をまずは役員、そして働いているひとりひとりに血肉化させることでした。それほどこの「ノート」は「経営者マインド」を根づかせるには不可欠でした。社外秘で門外不出の経営者育成のバイブルだったのです。

 これを聞くと拍子抜けされるかもしれませんが、「ノート」は2015年に市販されました。「あとがき」以外は社内の冊子とすべて同じ内容です。門外不出がなぜ市販されるのか疑問を持たれるかもしれませんが、経営の原理原則は古今東西普遍であり、柳井さんは広く世の中の人のための役に立てたいという思いが強かったようです。

 ちなみに、発売以来、毎年重版がかかっていて、すでに38刷のベストセラーになっています。

 ベストセラーと書いたので「本なの?」と思われた人もいるかもしれませんが、「経営者になるためのノート」はその名前の通り、ノートです。

 約180ページあるのですが、柳井さんや松下幸之助さんや稲盛和夫さんなどの名経営者や著名な経営学者の原理原則も踏まえながら、経営者とは何かの実践と経営者になるための4つの力について書かれています。

 特殊なつくりになっていて、本文の周囲に罫線の引かれた余白部分が用意されています。

 本文を読みながらそこに自分の考えや思いを書き込むことで、柳井社長と対話し、自らと対話します。「ノート」は経営者になるために自らを開く羅針盤のようなものです。 【次ページ】「経営者になるためのノート」に書かれていること
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