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- 2024/10/09 掲載
石破政権の最大政策「地方創生政策」が日本をダメにするワケ、論文が証明
連載:小倉健一の最新ビジネストレンド
石破首相の一貫性のない政策変更
総裁選の勝利後、石破首相の頼りなさが際立つ。総裁選前に掲げていた政策を次々と覆してしまい、何が彼の政策として残っているのかが不透明な状態に陥っている。総選挙の日程について、総裁選中に(早期解散を掲げた)進次郎氏に対して「何でもいいから早くやればいいというものではない」と上から目線で語っていたにもかかわらず、総裁選後に石破氏は予算委員会すら開かず、最速の日程で選挙を実施することを表明した。
さらに、リニア中央新幹線に対しては懐疑的な立場を示していたものの、推進派に転じた。経済成長よりも財政再建を優先するというスタンスや、日銀の利上げに対する姿勢もすべて放棄した。こうした一貫性のない政策の変更により、国民は石破政権に対する信頼を失いつつある。
「地方交付金制度は地域格差を増大させる」という調査結果
しかし、そんな石破政権においても、かろうじて一貫している政策がいくつかある。その1つが「地方(創生)交付金の倍増」である。今回はこの点に絞って述べたい。『Interregional Redistribution and Regional Disparities: How Equalization Does(地域間再分配と地域格差:平等化はどのように機能するか)』(2009年)という論文には、1982年から2000年にかけてのOECD諸国のデータを用いて、政府がお金を使って地域間の格差を減らそうとする「均衡交付金」が本当に効果を持つのかどうかを検証している。つまり、この論文では、日本でいう地方交付金のような制度が、実際に地域格差を是正することができるかについて分析しているわけだ。
結果として、大変興味深い逆説的な結論が導かれている。地域間の財政的な再分配は、むしろ地域格差を増大させる傾向があることが判明したのだ。均衡交付金が貧困地域を支援するために設計されているにもかかわらず、その効果は期待とは逆で、地域間の移住を抑制し、結果的に収束を妨げてしまう。つまり、既存の格差が固定化されるという状況を生んでしまうのだ。
なぜこのようなことが起きてしまうのか。この論文では、均衡交付金によって地域に一時的な財政支援が行われると、その地域の住民は、今後も支援が続くとの期待を持ち、移住や経済的な自己改善を行わなくなる傾向があるとされている。これにより、地域の経済的な活性化が進まず、逆に現状維持が続いてしまうことが原因だと指摘している。
このような分析を踏まえると、石破政権の「地方交付金の倍増」政策も、同じような問題に直面する可能性があると言える。地域への一時的な支援が逆にその地域の成長を妨げ、格差を固定化してしまうリスクを十分に考慮する必要があるだろう。 【次ページ】なぜ地方創生政策が逆効果になるのか
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