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今や家電やスマートフォンにも搭載され、身近になっているAI。その技術は言語の理解や推論を通して文章化のサポートをするまでになっている。話題に事欠かないAIだが、私たちの仕事にどのように関わってくるのだろうか。スマートフォンの音声入力を最大限活用して書かれた、「話すだけで書ける究極の文章法 人工知能が助けてくれる!」(講談社)の著者で、一橋大学名誉教授 野口 悠紀雄氏にAI、特に音声入力のビジネスパーソン向け活用法を聞いてみた。
(聞き手: 時田信太朗、佐藤友理 構成:佐藤友理)
音声入力は「書き始めること」のハードルを下げる
野口氏はベストセラー『「超」整理法』の著者であり、時間や空間活用の達人。そのメソッドをビジネスシーンで活用している読者も多いことだろう。
その野口氏の最新刊「話すだけで書ける究極の文章法 人工知能が助けてくれる!」(講談社)はスマートフォンの音声入力を最大限活用して書き上げた最初の著書となる。
同氏によると、音声入力をするようになって、書き始めることが各段に楽になったという。
「音声入力を使えば、まだ書ける段階でない文章でも、まず思いつくまま話して、メモとしてどんどん残しておけます。キーボード入力にしても手書きにしても、ここまでスムーズに文章化することはできません」(野口氏)
しかし、音声入力の効果は書き出しのハードルを下げるだけではない。
「さあ、音声入力しようと思っても、思うように言葉が出てこないことがあります。それは話す内容を持っていないからに他なりません。そんな時は、スマートフォンに向かってとりあえずなんでもいいからどんどんしゃべります。そうしているうちにアイデアが思いつくのです。そういう場面でも、音声入力は非常に効果的なツールなのです」(野口氏)
浮かんでは消えるアイデアを音声入力でつかまえろ
「中国北宋時代の文学者、欧陽脩は、『三上(さんじょう)』という言葉を残しました。良い文章は『馬上(馬に乗っているとき)、枕上(寝床に入ったとき)、厠上(用を達するとき)』に生まれる、ということです。しかし、かつてはそういった場所でのメモは至難の業でした。布団に入ったあと、何かいいアイデアが浮かんだとして、メモを取るか。取らないですね。トイレにペンと紙を持ち込むか。持ち込まないですね」(野口氏)
しかし、現在はほとんどのユーザーがスマホを持ち歩いており、AIを内蔵したスマートフォンにしゃべるだけでいつでもどこでもメモを取れる。これなら、「三上」のメモだって取ることができる。実際、野口氏はアイデアを逃さないよう、スマートフォンを肌身離さず持ち歩いているのだという。しかし、それは同時に、記録媒体としてのスマートフォンに依存することでもある。
「アイデアの源泉を止めないために音声入力が欠かせません。つまり、スマートフォンがなくてはならないツールになったということです。そういった意味で、今までで一番クリティカルにモノに依存しています」(野口氏)
野口氏はAndroidとiPhoneの2種類のスマートフォンを1台ずつ持ち歩いている。さらに、スマートフォンを落とさないよう、ストラップを使って上着のポケットにつないでおくという念の入れようだ。
音声入力では、アイデアを出したあと、自分一人でブレストし、アイデアをブラッシュアップできることも有利な点なのだという。
「自分のメモを見れば新しいアイデアが沸いてきます。これをまたメモに残し、繰り返すことでアイデアを発展させていくわけです。いわゆる自分自身とのブレストですね。そしてこの手法は、企業のエグゼクティブにも有効だと言えます」(野口氏)
【次ページ】これから求められるビジネスパーソンの能力とは? その訓練方法とは?
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