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- 2021/07/26 掲載
【事例】SBIグループはどのようにしてAI活用の「高度化」「自走化」を果たしたのか
提供価値の向上を目指し、グループ全社でAI活用を促進
企業の活動には必ず目的と理由がある。SBIグループがAIを通して実現しようとしているのは「顧客中心主義の徹底」だ。同グループはインターネットを通して、証券、銀行、保険、住宅ローンなど多様な金融商品を提供している。AIの導入によって、それらサービスの価値の向上を狙っている。この「顧客本意の業務運営」を実現するために、同グループでは「AI活動の高度化」と「AI活用を自走する組織化」を掲げている。
AI活動の高度化とは、ビジネスにおける意思決定を可能な限りAIに置き換え、提供価値とサービス競争性を高めることを指す。一方、AI活用を自走する組織化は従業員自らがAIを用いてビジネス課題を解決できるよう、組織構築と人材育成を実施することである。要約すれば、社内の技術リテラシーを高め、従業員が率先してAIを活用できる環境をつくり、サービスの価値を高めていくことを目指している。
その構想を実現するため、グループ内では従業員の市民データサイエンティストの育成に力を入れているという。具体的には、座学と実践の場を用意し、従業員に「Data Prep」「AutoML」「MLOps」など機械学習技術の教育プログラムを提供するほか、実業務で訓練することで従業員の応用力を高めている。
加えて、グループ各社の役員には教育研修を通して「AI活用のテーマ設定」や「トレンドの把握」「CoE構築論」など、経営におけるAIリテラシーの取得を促している。これらの施策を通して、「2023年度には全事業への人工知能導入を目指し、120件のプロジェクト実現」を目標に掲げている。
同グループの構想において旗振り役となるのが、佐藤氏が所属するCoE組織(≒横断組織、中央組織)である「社長室ビッグデータ担当」だ。2012年に社長直下のチームとして創設された同チームは、後述する「ローカルCoE」と共にAI活用を推進しているという。
CoE組織の役割分担で、効率的にAI導入を推進
社長室ビッグデータ担当の主な役割は、グループ内データの収集や整備、分析基盤の構築とデータ分析、データ活用に向けた法的整備、外部企業との連携推進などだ。チームにはデジタルマーケターやエンジニア、データサイエンティストが所属し、AIを用いたイノベーションの中心を担う組織として活動している。グループ各社には「ローカルCoE」組織が設立されている。佐藤氏が所属する社長室ビッグデータ担当はホールディングス全体に共通する「難易度が高いテーマ」を扱い、ローカルCoEはドメイン知識が求められる「専門性の高いテーマ」を扱うという。社長室ビッグデータ担当がローカルCoEからノウハウを集め、集約して各社に再分配する体制を構築している。
もちろん、グループ各社の事業領域が異なれば、現場のニーズやドメイン知識も異なってくる。組織全体を横断できるCoE組織でも、必要な知識をすべて把握することは難しいだろう。そこでSBIグループでは、CoEとローカルCoEが役割を分担したのだ。
その結果、ノウハウの応用が進み、さまざまなプロジェクトへAIを活用しやすくなったという。ホールディングス規模の巨大なチームにおいて、CoEの役割分担は参考になる事例だと言える。
【次ページ】SBI損保ではどのようにAIを活用しているのか
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