- 2015/10/29 掲載
日本のR&D部門に足りないのは、スキルではなくスケールだ
HCLテクノロジーズ 上級副社長 G.H.ラオ氏インタビュー
IoT活用の本質は、より良い製品やサービスの提供を売り上げにつなげられるようになること
日本市場における既存顧客とのサービス改善に向けた現状把握や、新規顧客開拓の支援のために来日したというラオ氏は、市場におけるIoTの需要の高まりについて以下のように語る。「IoTによる『スマートファクトリー』をはじめとしたイノベーションへの経営者の関心は高まっている。私たちのお客様の中にも、自社の生産オペレーションの効率化に留まらずグローバルな顧客の課題解決のためにIoTを活用しようと考えている企業が多い。特に、ヘルスケアや自動車産業などの分野ではIoTが活用され始めている」(ラオ氏)
ラオ氏によれば、企業のIoT活用はいくつかの要素によって構成されているという。第一の要素は、製品のスマート化だ。つまり、様々なセンサーが組み込まれた「接続性の高い」製品の開発である。
第二の要素は、プラットフォームだ。すなわち、スマート化した製品から収集されるデータを扱い、製品を中心としたエコシステムを発展させるためのプラットフォーム構築である。
そして第三の要素は、ビッグデータ分析だ。製品に組み込まれたセンサーからプラットフォーム、クラウドに収集されたビッグデータを、意味のある情報にしていくために、リアルタイムに、継続的に、データを分析、可視化し、企業のビジネスを改善していくものである。
「IoTではインターネットに接続された様々なデバイスから収集されたデータを扱うプラットフォームは、ほとんどがクラウドでホストされている。そのため製品やサービスの開発だけでなく、開発後の運用までトータルに考えていく必要がある。当社にも、日本のお客様から、製品のスマート化だけでなく、開発後の運用をどうするかという点を含めた様々なIoT活用の相談が寄せられている」(ラオ氏)
ラオ氏が考える企業におけるIoTの活用の姿とは、より良い製品・サービスを提供し売上につなげていくビジネスサイクルを、従来のシナリオよりも簡単に回していける状態になることだという。
「IoTが普及していくためには、製品をスマート化し、ユーザーにより良いサービスをシームレスに提供することで売り上げにつなげる、というユーザー視点を常に持つことが重要。一方、『インダストリー4.0』などの考え方は同じIoTをどちらかというとモノづくりのプロセスの観点から捉えたものである」(ラオ氏)
HCLの提供する製品開発支援サービス
「現時点でHCLのエンジニアリングR&DサービスにおけるIoTビジネスは、接続性の高い製品の開発支援が中心となっている。例えば、様々なセンサーを組込み、それらを統合するコミュニケーションプロトコルを確立する為の組み込みソフトウェアやエレクトロニクスの開発支援などである」(ラオ氏)
ただしHCLのIoT支援は製品のスマート化だけにはとどまらない。それぞれの製品、デバイスがコミュニケーションするために必要なプラットフォームの構築やクラウドまでカバーしているという。
「HCLは、エンド・トゥ・エンドなサービスを提供する。例えば、ヘルスケアや自動車といった分野の企業がIoTを取り入れる場合、我々のチームは、製品開発からプラットフォーム、アプリケーションの開発、クラウドインフラの監視、運用までをワンストップで提供していくことができる」(ラオ氏)
ラオ氏が責任者を務めるHCLの「エンジニアリングR&Dサービス(ERS)」は同社ビジネスの約18%を占めており、日本においても20年近くの歴史がある。
「ERSは、例えばデジカメやテレビ、冷蔵庫などの家電、医療機器、自動車などの製品開発をハード、ソフト、メカニカル、テストの全てのプロセスで支援する。国内のお客様向けには組み込みソフトウェアの設計、開発支援が多くなっている。製品のグローバル化や機能強化などを目的としたプロジェクトが多く、例えば製品の開発は日本で行い、製品をよりグローバル化するためのサポートをインドから提供するようなケースもある。また、組み込みソフトや製品そのもののテストも手がける」(ラオ氏)
【次ページ】日本の研究開発スキルは低くないが、スケールできていない?
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