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- 2020/02/27 掲載
CIOのためのIT財務管理入門、ガートナーが勧める4つの視点と7つのアクション
IT財務管理が必要である3つの理由
IT財務管理とは、IT部門から提供されるITサービスを1つの社内ビジネスとして捉えるためのものである。 しかし、多くの企業で、財務部門は基本的に事業部門を見るためのもので、IT部門を把握することは少ない。CIOがコストと創出する価値を把握・理解していなければ、ビジネス上の意思決定が正しくできなくなってしまう。ネーグル氏は、CIOがIT財務管理を必要とする主な理由を3つに整理した。
1つ目の理由は、ビジネスの言葉でITの価値を伝達するため。ITを提供するのにどのくらいのコストがかかるかを説明する根拠としてIT財務管理が必要だ。
2つ目の理由は、より良いビジネスの意思決定をするため。より具体的にいうなら、新規投資の優先順位付けや、どの分野のコストを削減すべきかの判断する際に、IT財務管理が必要だということだ。
3つ目の理由は、ITと戦略との関連性を高めるため。「私のクライアントの多くは、ITの価値を説明するのが非常に難しいといいます。実際、CIOがテクノロジー視点で話してしまい、ITがもたらす成果についてコストの視点で語れないということが起こりがちです」とネーグル氏は話し、ITと戦略を関連付ける必要性を強く説いた。
目的に即したアプローチの重要性
ガートナーが顧客企業に対して「IT財務管理を行う主要目的」を聞いた調査では、「IT支出をビジネス価値のデリバリに連携させるため」と答えた企業が最も多かった。2番目に多かったのは「新しいプロジェクトと投資を優先順位付けするため」。「ただ、これらは多くの企業に共通であるということに過ぎません。ここでCIOの皆さんには、何のためにIT財務管理を行うのか、『自分にとっての』一番の理由を自問していただきたい。それによって、IT財務管理をいかに行うかの道筋が変わってくるからです」(ネーグル氏)
IT財務管理によってできることは大きく6つある。ネーグル氏はこれを「6つの柱」と呼んだ。その第1の柱が「IT支出(TCO)の管理」である。第2の柱は「戦略的投資(CTB=Change the Business)」で、これに対して第3の柱「サービスのコスト計算(RTB=Run the Business)」がある。第4が「パフォーマンスのベンチマーク」、第5が「コストの最適化」、そして第6の柱が「ITのビジネス価値」だ。
さらに、この6つの柱が立つ基礎として、IT部門としてのミッションやIT運営モデルが必要となる。また、IT財務管理を遂行するための文化、人材、スキルや、管理するデータを解析し、報告するためのツールも必要だ。
「中でも重要なのはミッション(目的)です。ITの需要を管理したいのか、コストを把握したいのか、それとも使用用途を変えたいのか、CIOの目的が明確でないと、仮にツールを導入しても成果を得られずに終わる」(ネーグル氏)
CIOが持つべき、ITコストに対する4つの視点
ネーグル氏は、「CIOには、IT支出に対して4つの視点を持っていただきたい」と話す。視点の1つ目は「資産/ゼネラルレジャー(勘定元帳)」。主に財務・予算策定の際に必要な視点だ。2つ目の視点は、「技術/領域」。スタックごと、サイロごとに把握するということである。3つ目は「ビジネス」的な視点。技術/領域ではなく、アプリケーション単位、サービス単位で見るということ。そして4つ目は、どれくらいITに投資しているかという「投資」視点だ。「ガートナーの顧客企業の多くは、IT予算の7割程度を通常業務を回すために使っています。しかし、有用なIT部門は、単に日々の業務を回すためだけでなく、成長・変革のために使っていかなければなりません。より戦略に影響を及ぼす予算配分を考えていく必要があります」(ネーグル氏)
IT財務管理を行う目的は1社ごとに少しずつ違うが、その中でネーグル氏は、顧客企業に共通する理由の大きなものを4つに集約した。この4つの目的ごとに、IT財務管理の受益者とアプローチは異なるのだという。
【次ページ】IT財務管理の4つのアプローチ
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