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- 2021/12/10 掲載
クラウドとプラットフォームの最新動向、今やIaaS、PaaS、SaaS区切りでは理解できない
変化の激しい時代に求められる「E.R.A.」なプラットフォーム
ナティス氏は「プラットフォームは常に時代のコンテキストを反映する。テクノロジーやビジネス、そしてそれ以上に、世界で何が起こっているのかを映し出してくれる」と話す。そして、プラットフォームのトレンドを見て何が起こっているかを理解し、既存のプラットフォームを新しいものに置き換えるのか、それとも調整だけで十分なのかを考えるべきだと説く。ガートナーの調査によると、企業経営者の60%以上が、現在を「長期的かつ持続的な混乱の時期にいる」と捉えているという。新型コロナも混乱の大きな要因の1つではあるが、コロナが終息すれば、それでその“混乱”の時期も終わると考えている人はほとんどいないだろう。
そしてその事実が、ビジネス上の意思決定やテクノロジー上の意思決定に影響を与えている。これもガートナーによる調査だが、企業の取締役会のうち「自社のデジタル・ビジネス・イニシアティブを加速したい」と回答した割合は69%にのぼる。
「ガートナー アプリケーション・イノベーション & ビジネス・ソリューション サミット」に登壇したガートナーのナティス氏は、変化の激しい世界でリーダーたちが求めるのは、効率的(Efficient)で、しなやか(Resilient)で、適応力のある(Adaptive)テクノロジープラットフォームだと考えていると指摘する。
「変化に即応できること、受け入れたくない影響に抵抗できること、そしてそれを速く、安全に行えること。これらは大きな課題です。そしてビジネスの世界はプラットフォームに目を向けて、継続的な変化の中で、速く、安全に、効率的に行える能力の提供をプラットフォームに求めているわけです」(ナティス氏)
クラウドの変化は俊敏性に向かっている
プラットフォームとしてのクラウドのアーキテクチャーの変遷を振り返ってみよう。クラウドにはIaaS、PaaS、SaaSがあるが、20年ほど前に最初のSaaSが登場したのが始まりだ。その数年後に最初のIaaSが登場し、次にPaaSが登場した。IaaS、PaaS、SaaSといった区分は、初期においては人々がクラウドのさまざまな側面を理解する上で非常に有用だった。「しかし現在は、区分はありつつもその境界はない。クラウド全体がプラットフォームになっている」とナティス氏は話す。
初期のIaaSは、2003年に登場したAmazon EC2が行ったように仮想マシンを使って弾力性のあるモデルを提供するものだった。そしてPaaSは、Java、C#などの伝統的なプログラミングをクラウド環境に取り入れ、仮想マシンで作動させるものだった。従来のSaaSはある程度のカスタマイズが可能な開発環境であり、プラットフォームであったとも言える。
しかしそれらは、基本的にデータセンターで行っていたことをそのままクラウドでやっていたに過ぎず、出発点であった。「クラウドネイティブな振る舞いを学び始めると、それに伴って物事が変わってきました」(ナティス氏)。
現在のIaaSは、Kubernetesに代表されるコンテナへの移行が進んでいる。コンテナのクラスター化により俊敏性が大幅に向上し、リソース活用の流動性や、環境のスケーラビリティが大幅に向上した。
PaaSの変化は、AWS Lambdaなどのようなサーバレス化だ。従来は基盤となるインフラ部分をいじれたが、サーバレスでは完全に隠してしまうものがある。「PaaSは表面だけを操作すればいい。それがクラウドの原則です」とナティス氏は言う。
従来のSaaSはモノリシックなアプリケーションであり、それがたまたまクラウド上にあっただけのものだった。しかし現在、SaaSはさまざまなビジネス機能をAPIで提供するものへと変化している。提供されるさまざまなAPIを組み立てることで、自社のビジネスモデルを表現するということ。
これらの変化を総括すると、向かう先は「俊敏性の向上」だといえる。
単一のPaaSではうまくいかないため複数のPaaSを使う
見方を変えると、もう1つ別のトレンドが見える。それは「IaaS+PaaS」「SaaS+PaaS」に分けて捉えると分かりやすい。プラットフォーム技術の多くは、顧客がテクノロジーの専門家であることを念頭に置いて開発・提供されてきた。しかし今日では、ターゲットとなる顧客がよりビジネス志向の開発者だと想定しているものが増えてきているのだ。
仮想マシン、コンテナ、プロコード、サーバレスといった要素で構成される「IaaS+PaaS」はテクノロジー寄りの開発者向け。そして、ローコード、ヘッドレス、コンポーザブル、カスタマイズがキーワードとなる「SaaS+PaaS」が、ビジネス志向の開発者向けということができる。
SalesforceやServiceNow、オラクル、IBMなどきっかけは色々
クラウドを利用し始めるバックグラウンドはさまざまだ。ある企業は、SalesforceやServiceNowなどのSaaSの利用をきっかけにクラウドを使い始めたかもしれない。すると、やがてその企業は、SaaSの延長にあるPaaSへたどり着くことになる。あるいは、Amazon Web ServicesやGoogleのようなIaaSから始めた企業は、IaaSの延長線上にあるPaaS。前者が先述の「SaaS+PaaS」で、後者は「IaaS+PaaS」に当たり、これらはプラットフォームの表現としてはまったく別の性格を持つことになる。
プロバイダーという視点で見ると、たとえばオラクルやIBMなどのエンタープライズシステムを利用している企業は、それらと後方互換性のあるPaaSを利用することになる。さらには、数百にのぼる独立系ベンダーが提供するPaaSもある。
「ほとんどの組織はこれらすべてを活用することになります。これまで使ってきたSaaSやIaaSや企業システムとの連携が必要だからです。さらに、独自のイノベーションや独自の専門性を発揮するためには、差別化のための縛られない環境、独立系のPaaSが必要だからです」(ナティス氏)。
【次ページ】Microsoft Azure Stack Edgeなど分散型クラウドへの変化も
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