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  • 2017/07/07 掲載

アウトソーシングが残念ながら「人材不足」を加速させている

人材調達方法6種を比較

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人材不足を補うはずのアウトソーシングが、企業の新たな人材不足を引き起こす原因になっている。その主な理由は「人材の視点」を無視していること。アウトソーシングによって、技術知識とスキルの空洞化や、人材育成の場の消滅といった問題が起こっているのだ。企業はどのような戦略で、空前の人材不足環境に臨めばよいのか。ガートナージャパンのリサーチ部門でバイスプレジデント兼最上級アナリストを務める足立祐子氏が解説する。
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人材不足解消のためのアウトソーシングが新たな人材不足を引き起こしている
(© nd3000 – Fotolia)


※本記事は「ガートナー ソーシング&戦略的ベンダー・リレーションシップ サミット 2017」の講演内容をもとに再構成したものです。

アウトソーシングが人材不足を引き起こす4つの理由

 結論から先に言うと、情報システムのプロジェクトを進める上でアウトソーシング(外注)を利用したり内製チームを立ち上げたりする際には「人材の視点」を取り込むべきである。アウトソーシングによって人材育成コストが余計にかかったり、人材育成計画に影響を及ぼしたりすることがあるからだ。

 10年前の2007年当時、ユーザー企業の多くはアウトソーシングに注力していた。アウトソーシングの目的の1位は「人材不足解消」で、28.1%を占めていた。2017年の現在も、ユーザー企業の86.8%において人材不足は解消していない。アウトソーシングが新たな人材不足を引き起こしているからである。

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8割超の企業でIT人材が不足している

 なぜ人材不足は解消されないのか。アウトソーシングによって引き起こされた新たな問題とは何なのか。問題に対して、どう対処すればよいのか。ITリーダーは、ソーシング戦略にどのような人材の視点を盛り込むべきか。以下では、これらの問題について解説する。

 まず、裏側にある課題を見ていこう。大きく課題は4つある。(1)技術知識とスキルの空洞化、(2)全体感を持った人材の喪失、(3)人材育成の場の消滅、(4)新たに獲得すべきスキルと放棄すべきスキルのバランス、である。

 (1)の「技術とスキルの空洞化」とは、システムを開発するために必要な個別のスキルが失われるとか、工数を見積もるスキルが失われるといったことを指している。これはアウトソーシングによって引き起こされる。

 ユーザーは、工程の一部をオンサイトでベンダーに外注する。うまく行くようになったら、オンサイトからオフサイトへとアウトソーシングする。ここまでいくと、今までやっていたことが失われて空洞化する。

 (2)の「全体感を持った人材の喪失」とは、アウトソースを繰り返した結果、個別の技術力だけでなく、全体感を把握できる人がいなくなってしまうことを指す。たとえば、「どうしてこの技術を採用したのか」が分からなくなってしまう。要求を聞いても、システム要件をまとめられなくなってしまう。

 (3)の「人材育成の場所の消滅」とは、仕事のタスクを外部に切り出してしまったために社内人材の育成の場が失われることを指す。情報処理推進機構の『IT人材白書2016』によると、従業員1001人以上の日本企業の58.3%は、人材育成の主要な取り組みとしてOJT(On-the-Job Training)を挙げている。仕事を外注してしまうとOJTができなくなる。

 (4)の「新たに獲得すべきスキルと放棄すべきスキルのバランス」はこうだ。アウトソーシングの採用によって、ベンダー管理スキルなど、新たに獲得しなければならないスキルが発生する。また、アウトソーシング先に任せているはずなのにいつまでも企業固有のスキルを放棄することなく持ち続けてしまう問題がある。これらを把握しなければならない。

バイモーダルを考慮してソーシング戦略を立てる

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 プロジェクトにおけるソーシング戦略のステージは、(1)背景と目的整理、(2)選択肢の分析、(3)決定合意形成、(4)ソーシング計画立案、に分かれる。これらに人材の視点を盛り込むことが重要である。

 第1のステージ「背景と目的整理」では、アウトソースするか内製にするかという選択以前に、プロジェクトに対してどんな組織を当てはめるかを考えることが大切である。具体的にはバイモーダルITの視点で組織の戦略を立てる。

 バイモーダルとは、モード1とモード2という、情報システムに対する2つの流儀を使い分けることを指す。モード1は、確実に安全に慎重に取り組むモードであり、モード2は、失敗を恐れずにスピード感を持って新しいやり方を積極的に試すモードである。

 プロジェクトの特性に合わせて2つのモードを使い分けることが大切である。また、モード2は、合う/合わないがはっきりしているので、プロジェクトを安全に止めるための出口戦略を決めておくことも重要になる。

 モード2を組織化する上での注意点はこうである。よく、「モード1は堅物(地味)で、モード2は変人の集まりですね」という言い方をされるが、これは誤りである。モード1とモード2はアプローチが異なるだけであり、協調性やコミュニケーション力などは共通する。

 モード1は、より静的なアプローチである。ゴールを決めて、ゴールに着実に向かっていく。予見の正確さやチームの目標達成率が評価される。一方でモード2は、より動的なアプローチである。多様な選択肢を駆使して前進することが評価される。

 モード2のプロジェクトが沢山ある場合は、モード2の組織を組織化しても構わない。反対に、モード2のプロジェクトが数えるほどしか存在しないのであれば、モード2の組織を組織化する必要はない。なぜなら、モード1の組織との間で軋轢が生じてしまうからである。

【次ページ】代表的な人材調達方法6種を比較、クラウドソーシング?ニアショア?
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