- 2014/01/22 掲載
世界CEO意識調査、「改善」が昨年比2倍に急増 懸念は過剰規制や新興国鈍化
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世界のCEOは世界経済に明るい見通し
今後12カ月間に世界経済は改善すると回答したCEOの割合は44%となり、昨年のわずか18%から急増した。また、世界経済が減速すると予想したCEOの割合はわずか7%にとどまり、2013年の28%から大幅に減少した。地域別にみると、西欧のCEO(50%)が経済情勢の好転を示す兆しを踏まえて、世界経済の短期的見通しについて最も強い自信を見せた。以下、中東(49%)、アジア太平洋地域(45%)、中南米(41%)、北米(41%)、アフリカ(40%)と続き、自信のレベルが最も低かったのは中・東欧のCEO(26%)だった。
業種別では、今後12カ月間の見通しについて最も強い自信を見せたのはホスピタリティ&レジャー業界のCEO(46%)で、次いで銀行・資本市場(45%)、小売(44%)、金融サービス(44%)、資産運用(44%)、通信(44%)、建設・エンジニアリング(41%)と続いた。自信が最も弱かったのは金属工業のCEO(19%)だった。
自社については、39%のCEOが今後12カ月間の収益の成長見通しに対して「非常に自信がある」と回答し、昨年の36%から増加した。なお、収益増への自信については、2009年の21%が底となっている。
地域別で、最も強い自信を見せたのは中東のCEOで、短期的な収益増に対して「非常に自信がある」と回答した割合は69%にのぼり、昨年の53%から増加した。これに続くのがアジア太平洋地域の45%で、昨年の36%を上回った。
西欧においても、この自信の割合は昨年の最低水準から8%増加し、30%まで回復した。しかし、アフリカでは、自信が引き続き低下した。アフリカのCEOのうち、今後12カ月間の成長について「非常に自信がある」と回答した割合は40%にとどまり、昨年の44%、2012年の57%から減少した。また中南米でも、この割合は昨年の53%から43%に落ち込み、CEOの自信は低下した。他方、北米のCEOの自信は昨年と変わらなかった(33%)。
国別にみると、日本は27%で、世界平均を下回ったが、2013年(18%)と比較すると大きく増加した。最も強い自信を見せたのはロシアのCEOで、53%が収益増に「非常に自信がある」と回答した。これに続くのがメキシコ(51%)と韓国(50%)で、韓国の場合は昨年のわずか6%から急回復した。
懸念事項のトップは政府の対策
加えて、65%のCEOが新興国の成長鈍化を懸念しており、先進国の低成長(71%)にほぼ並ぶ懸念事項となった。これ以外の大きな懸念事項としては、租税負担の増大(70%)、キーとなるスキルの利用可能性(63%)、為替相場の変動(60%)、資本市場の安定性の欠如(59%)などが挙げられたという。
一方で、データの安全性の欠如を含むサイバー上の脅威や、破壊的な技術進歩のスピードを脅威として挙げたCEOの割合は半分以下となった。
規制については、約80%のCEOが過剰規制によってコストが増加していると述べており、52%は規制によって熟練労働者の確保が難しくなることを指摘した。また、40%のCEOは、規制が新たな市場機会またはイノベーションを追求する取り組みの障害になると回答した。ポジティブな面では、半数以上のCEOが、サービスデリバリーや品質の基準を改善するための規制に対し、好ましいとの反応を示した。
そのほか、将来の成長の原動力は何かとの質問に対し、新製品または新たなサービスの開発と回答したCEOは、回答を寄せた世界のCEOの35%と最も多く、昨年の25%を上回った。また、翌年に買収・合併や戦略的提携を計画しているCEOの割合は20%で、昨年の17%から増加した。
同時に、世界のCEOは、BRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)以外の国での成長を探っており、今後3~5年間にはインドネシア、メキシコ、トルコ、タイ、ベトナムにかなりの成長可能性があるとの見方も示しているという。また、米国、ドイツ、英国も上位にランクされた。
CEOは、2014年の雇用計画についても積極性を強めているという。今後12カ月間に増員を予定しているCEOは半数にのぼり、昨年の45%から増加した。雇用見通しが最も明るい業種はテクノロジー(63%)、ビジネスサービス(62%)、資産運用(58%)だった。
世界経済が安定していることから、CEOは今後5年間に自社の事業形態を変えうる大きなトレンドについて認識するようになったという。そのトレンドの筆頭として、81%が技術進歩を挙げた。次いで人口構造の変化(60%)、世界的な経済力のシフト(59%)が続いた。
こうしたトレンドおよびそれ以外の課題に対応するための取り組みとしては、人材戦略の変更(93%)、顧客の拡大・維持戦略(91%)、技術投資(90%)、組織の構築/設計(89%)、データ利用と管理(88%)が挙がった。
半数以上のCEOは、事業計画対象期間を3年に設定していると回答しているが、この期間設定が理想的であると考えているのはわずか40%に過ぎなかった。
政府に対する最優先の要望、国際税制への課題
CEOが政府に対する最優先の要望として挙げているのは金融の安定性確保(53%)で、次いでインフラの改善(50%)、国際競争力と効率を強化した税制の策定(50%)が続いた。もっとも、自国政府による金融の安定性確保の取り組みが効果的であると回答したCEOは半数以下(46%)で、インフラ改善について政府を評価したCEOの割合はわずか37%だった。また、半数以上のCEO(51%)は、税制改正に関して政府が効果的な策を打ち出せていないと指摘した。本調査によると、世界のCEOにとって国際税制は十分なものではなかった。CEOの約3分の2は国際税制を総点検する必要性を指摘。特に75%のCEOは、相応額(フェアシェア)の税金を支払っているとみられることが企業にとって重要であると回答した。
CEOの大半は、租税政策と税制の競争力が企業の事業決定に際して重要な要因になると回答しており、多国籍企業には事業を営んでいる各国での収益、利益、納税額の報告を義務付けるべきであるという点に賛意を示した。また、世界中の税務当局が企業に関する情報を自由に共有すべきであるという点にも賛同した。
しかし、OECDによる国際税制改革の取り組みが今後数年間で成功すると回答したCEOの割合は、わずか4分の1に過ぎず、40%がこの取り組みは合意に至らないとの見方を示した。
世界のCEOは、それぞれの業種のステークホルダーの期待が過去5年間に大きく変化していることを報告した。顧客との信頼が高まったと回答したCEOの割合は52%であるのに対して、信頼が低下したと回答したCEOの割合はわずか12%だった。また、43%は債権者や投資家との信頼が高まったと回答しているのに対して、信頼が低下したと回答した割合はわずか16%だった。最後に、サプライヤーとの信頼については、42%が改善したと回答したのに対して、低下したと回答したCEOの割合はわずか6%となった。
しかし、政府や規制当局との信頼に関しては、24%が改善したと回答しているのに対して、34%が低下したと回答した。
3つの主要な世界的トレンド
プライスウォーターハウスクーパース・インターナショナルの会長であるデニス・M・ナリー氏は、本調査結果について次のようにコメントしている。「CEOは自信を回復し始めました。景気後退期には自社をうまく導いてきましたが、今ではより多くのCEOが、収益増を達成する自社の能力と世界経済の見通しに対して前向きになっています。しかし、危機後の経済において持続的に成長を遂げていくことが依然として難しいこともCEOは認識しており、特に新興国市場の成長鈍化といった情勢の変化に取り組むにあたっては、その認識を強めています」
「同時に、眼前には引き続き大きな懸念事項が立ちはだかっており、CEOは過剰規制、財政赤字、租税負担に対して、これまでで最も高い割合で懸念を示し、懸念のレベルがどの程度であるかについて政府に明確なメッセージを送っています」
「今後について、CEOは3つの主要な世界的トレンド、すなわち急速な技術進歩、人口構造の変化、経済力のシフトが将来の事業に大きな影響を与えるとの見通しを示しています。こうした世界のトレンドを事業の強みに転じて利用する方法を見つけることが今後の成功のカギを握っていると言えます」
「第17回世界CEO意識調査」では、2013年の第4四半期に世界68カ国において1,344のインタビューを実施。地域ごとの内訳は、アジア太平洋445、欧州442、北米212、中南米165、アフリカ45および中東35となっている。
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