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『M-1』以降のお笑いコンテンツはどうなる?
――最近のお笑い界に関するニュースでは、『M-1』の終了と、それに代わる役割を担うであろう、漫才日本一決定戦『THE MANZAI 2011』の復活が発表されたことだと思います。まず、『M-1戦国史』(メディアファクトリー新書)のご著書もあるラリーさんから見て、『M-1』がお笑い界に与えたインパクトと功罪をどう見ていらっしゃるか伺わせてください。
ラリー氏■『M-1』によって若手芸人の中で漫才をやる人が増えた。そして、全体的な漫才の技術レベルが上がった、ということが一番大きな影響でしょう。受け手に対しては、お笑いで真剣に勝敗を競うということの面白さを知らしめたというのが主な功績として挙げられます。
功罪の「罪」の側面について一言でまとめると、お笑い界でも世間でも、『M-1』だけがあまりに圧倒的に独り勝ちを収めてしまったせいで、それが絶対化されてしまい、「『M-1』こそすべて」という偏った認識を広めてしまった、ということがあります。実際には、面白いお笑い番組は『M-1』だけではないし、『M-1』に出ている芸人やそこで活躍した芸人だけが面白いわけではありません。でも、それに近い印象を与えてしまったということはあるのかもしれません。
――次に『M-1』の企画者であった島田紳助がやはり関わる『THE MANZAI 2011』についてはいかがでしょう? どのような点に注目されていますか?
ラリー氏■「THE MANZAI」とはもともと、1980年代初頭の漫才ブームのきっかけになった漫才番組のタイトルでした。この30年前の番組名をタイトルに掲げている以上、「伝統」としての漫才を評価する大会になるということが予想されます。つまり、発想の斬新さや演出の革新性よりも、安定感のある磨き抜かれた芸が評価されるのではないか、ということです。
『M-1』では、結成10年以内という参加資格の縛りがあったため、それは実質的に新人王決定戦であり、多少荒削りでも若くて生きのいい芸人が出てくることが期待されていました。しかし、芸歴無制限で行われる『THE MANZAI』は、もっと上の世代も参加して、幅広い年代の芸人がぶつかり合う戦いになるでしょう。そういう意味では、『M-1』とはまた違った楽しみ方ができるのではないかと思っています。
――最後に今後のお仕事のご予定あるいは手がけようとなさっているテーマをお教えください。
ラリー氏■現在、書き下ろし本の執筆作業に取りかかっています。それ以外では、『コメ旬』の2号目を出すことを目指して、企画を練ったり新しい書き手を発掘したりする作業を少しずつ進めています。『コメ旬』は笑いの総合誌でありたいと思っているので、まだまだ未開拓の領域はたくさんあります。今年の後半は、『コメ旬』を活動の中心にしながら、さまざまな形でお笑い市場を活性化する仕事ができればいいですね。
●ラリー遠田(らりー・とおだ)
1979年生まれ。東京大学文学部卒業。お笑い評論家。テレビ番組制作会社勤務を経てフリーライターに。お笑いについて取材、執筆などを行っている。著書に『M-1戦国史』(メディアファクトリー新書)、『THE 芸人学 スゴい!お笑い 戦国時代をサバイバルする30人の成功法則』(東京書籍)、『この芸人を見よ!』(サイゾー)がある。
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