• 2006/09/04 掲載

【中堅中小IT化】Mac OS Xによる、メンテナンス性の高い販売管理システム

ビッグシェフ 代表取締役社長 藤咲秀知氏

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IT化が必要なことは、頭ではわかっている。しかし……。中小企業では、業務内容が1社ごとにまったく異なり、既存のパッケージ製品をそのまま導入するということが難しい。また、自社だけがIT化してもはたして投資に見合った効果が得られるのか、判断に苦しむ状況も多いだろう。そこで、現在IT化に挑戦している最中の企業を取材し、IT化する上での課題や対処法を具体的に紹介してい。
取引先の条件に制約を受けるメーカー

 今回、取材でうかがったのは、東京の大塚にある「ビッグシェフ」。同社は、ドレッシングやソース類の製造・販売を行っている。

【業務効率】藤咲秀知氏 ビッグシェフ株式会社 代表取締役 社長
藤咲秀知氏
ビッグシェフ株式会社
代表取締役社長
 問屋や大手スーパーから注文を受け、製品を製造・出荷するわけだが、そのワークフローには人力が必要な部分が多く、非効率な面が多いのが現状だという。

 まず、注文を受けるのが電話やFAX、EOS(電子受注)であるという点。注文を受けると、社員がそれをパソコンの販売管理ソフトに手入力している。EOSは電子受注とはいっても、けっきょく紙に出力され、デジタルデータで受け取ることができない。受取手が改めて製品名や数値を入力し直さなければならないのである。

 製品の在庫がない場合は、工場に生産指示を送るわけだが、これも多くはFAXで指示を出しているという。実は15年ほど前、本社←→工場間に専用線を導入することも検討されたが、当時の見積金額ではペイしないと考えて諦めたという経緯があった。現在のところ、同社内にはLANも構築されていない。

 受注時に関しては、自社で最新のITツールを導入したところで、取引先が対応してくれないことにはいかんともしがたい。こういった部分が中小企業のIT化を遅らせている要因だが、自社内で完結できる部分に関してはもっと効率化できるのではないかと、社長の藤咲氏は考えた。そこで、経済産業省の推進事業「ITSSP」で、ITコーディネーターの今野氏らを派遣してもらい、社内の改善点を探ることになった。


FileMakerによって、取引先ごとの柔軟な対応が可能に

 今野氏らは、ビッグシェフの業務を分析して、問題点を洗い出してみた。
【業務効率】萩原正男氏 ビッグシェフ株式会社 取締役 営業本部長
萩原正男氏 ビッグシェフ株式会社
取締役 営業本部長
 まず、生産指示をFAXで行っているという非効率が真っ先に挙げられる。また、取引先ごとに条件が大きく異なっていることがIT化を妨げている状況も見えてきた。例えば、出荷に使う箱は取引先によって指定され、大きさもまちまち。このため、複数の製品を混載する場合、取引先によって詰め方を変えなくてはならない。販売管理についても、通常の価格、大量購入時の価格、セールの価格などの条件が違う。

 このような業務には、市販の販売管理ソフトでは対応できない。市販製品を使うにしても相当カスタマイズの必要がある。かといって、フルオーダーメイドのシステムでは、コストがかかりすぎてしまう。

 さまざまな検討を行った結果、今野氏らが出した結論は、意外にも市販の汎用データベース製品「FileMaker」をベースとして、システムを構築するというものだった。FileMakerというと、お手軽なデータベースソフトというイメージがあるかもしれない。しかし、FileMakerにはパーソナルユースからサーバー製品まで、業務のスケールに合わせたラインナップが用意されている。実際にFileMakerを利用した電子カルテシステムや顧客管理システムなどが多くの分野で使われているのである。

「FileMakerを選択した大きな理由の1つは、データベースのテーブル構成を柔軟に変更できる点です。将来的には原材料の在庫管理機能を追加したいと考えていますし、トレーサビリティの機能が必要になるかもしれません。FileMakerなら、こうした変更にも対応しやすいのです。開発効率についても、他製品を使った場合に比べて、1.5倍程度アップできるというデータがあります。」

 取引先データベースには、取引先ごとに異なる条件を数値化して持たせる。販売管理や生産指示も、この情報を元にして適切に行われるように作り込んでいく。パッケージ製品を使うよりも柔軟に、なおかつオーダーメイドよりも効率的にシステム開発が進んでいるという。


セキュリティとメンテナンスを
考えてMac OS Xを選択


 もう1つ、このシステムのユニークな点は、サーバーにXserve G5を採用していることだ。このマシンは、Mac OS X Serverを搭載している。Windowsが圧倒的なシェアを占めている中、あえてサーバーにMacを使うのは奇妙に思えるかもしれない。しかし、最近大学やプロバイダー事業などではMacの大量導入事例が増えている。Mac OS XはUNIXをベースとしており、信頼性が非常にすぐれている。今野氏によれば、ウイルスに狙われにくいこと、遠隔地からリモート管理しやすいこともMac OS X Serverを採用した理由だという。製品は一見割高に見えるが、メンテナンスコストを考えると、Macの方が割安で、中小企業に適しているという結論に達したそうだ。ただし、端末のほとんどは、安価なWindowsマシンを使う。Xserve G5は本社に設置し、工場とはVPNを使って接続する。

 9月現在、システムは基本設計が完了した段階で、11月にプロトタイプが稼働する。使い勝手を詰めていって、12月には本システムが完成する予定だ。
【業務効率】システム概要図
システム概要図



会社名:ビッグシェフ株式会社
所在地:東京都豊島区南大塚3-43-1
主な業務内容:ドレッシング・ソース類の製造・販売
TEL:03-5952-1771


●脚注
■VPN
Virtual Private Networkの略。データの暗号化によって、インターネット上に仮想的な専用線を構築すること。高価な専用線を引かなくても、同レベルのサービスを実現できる


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