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法人向け:「AI収益化3本柱」とは
ザッカーバーグCEOは、4~6月期
決算発表会 で、生成AIの中長期収益化の3本柱として、「ビジネスメッセージング」「AI回答画面への広告挿入」「自社LLM(大規模言語モデル)の外販」を挙げた(図2)。
まず、「ビジネスメッセージング」では、Meta AIが自動的に会議資料やスライドを作成したり、メールを起草したり、データの翻訳・要約や分析を行うなど、業務アシスタントの役割を果たすと予想される。
法人向けであるため、利用企業がこの機能をカスタマイズして、一般顧客向けAIチャットボットなどカスタマー向けのサービスを提供することも想定している。これは、全体的にマイクロソフトのCopilotに類似しているようだ。ザッカーバーグCEOは、3本柱の中で「ビジネスメッセージング」が最も早く収益化できると見ている。
次いで「AI回答画面への広告挿入」だが、既存のコアAIによる広告表示最適化の延長線上に展開されるもので、ユーザーがMeta AIで行った検索結果の表示画面に関連広告を挿入するサービスだ。
Facebook、Instagram、WhatsAppにはAIがシームレスに組み込まれているため、個人情報や行動を追跡・共有されたくないユーザーがクッキーを拒絶しても、メタのAIがユーザー検索などを通して彼らの嗜好や行動を直接的に追跡して学習できる。
これは、メタのAIが「新たなクッキー」として機能することを示唆している。メタのアイデンティティは「人や企業をつなげるSNSプラットフォーム」であり、その主な収益源は広告だ。たとえ広告業界でクッキーの利用が制限されても、メタはAIによるユーザー追跡でより正確な広告ターゲティングを提供できる可能性が高いのだ。
またMeta AIは、「あなたがいいねしたかもしれないページ」「知り合いかも」「サジェストグループ」「フィードレコメンデーション」「フィードランク付けコメント」「マーケットプレイス」「お知らせ」などのおすすめやそれらの閲覧とも密接に連動しており、広告ターゲティングの精度をさらに向上させていくだろう。それは、メタのプラットフォームへの広告出稿がさらに増えることを意味する。
加えて、7月だけで
2000万回 ダウンロードされるなど、無償提供でファンが増えた「LLM(自社大規模言語モデル)」のLlama 3やその後継をいずれ有料化することで、メタのAI売上は何重にも増えることが予想される。
AI後発のメタが「グーグル・マイクロソフト」に大逆転か?
メタは、生成AI分野でOpenAIと提携して先行するマイクロソフトに対して、遅れをとってきた。生成AIアシスタントの「ビジネスメッセージング」に関しても、正式発表さえされておらず、法人向けCopilotの知名度と普及度にはかなわない。また、FacebookやInstagramなどの検索エンジンとしての市場シェアも、グーグルと比較して微々たるものだ。
しかし、その「弱み」が逆説的にAI収益化に役立っている。前述のように、Facebook、Instagram、WhatsAppの検索でMeta AIを強制したことは評判が悪い。しかし、ユーザーはこれらのプラットフォームを一義的に検索エンジンとしては見ておらず、メタ側の「よりユーザーのニーズに合致した広告表示のため」という説明は比較的受容されやすい。
翻って、世界の検索エンジン市場で90.48%もの圧倒的シェア(
8月現在 )を持つグーグルが、春先から検索結果にAI検索「AI Overviews」を表示しただけで大きな
反発 を受けた。さらに、「どのようにすればこのAI機能を停止できるか」という記事が広く共有される始末だ。
なぜなら、ユーザーはグーグルを一義的に検索エンジンとして見ているからである。グーグルはメタのように、ユーザーに選択肢を与えず生成AIを強制することは困難だろう。一方、メタはいつの間にかユーザーがMeta AIの利用に慣れることを狙える点で有利だ。
さらに、生成AIアシスタント分野に関しても、マイクロソフトが法人顧客にCopilotの1ライセンス当たり30ドルを課金しているのに対して、メタの「ビジネスメッセージング」は未だローンチされていない。だがメタは、戦略的に無償でLlama 3のサービスを提供している。ここでも、「無料トライアル」により、できるだけ自然な形でMeta AIの基幹であるLlama 3を普及させる意図が浮かび上がる。
メタは2024年の通年で370~400億ドル(約5.4兆円~5.8兆円)の設備投資を計画しているが、その内のかなりの部分をAI関連が占めると予想される。AIでは後発組のメタだが、ザッカーバーグCEOの巧みな普及戦略により、Meta AIがCopilotやGoogle AI Overviewsを追い抜く可能性もあるだろう。
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