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  • 2024/07/04 掲載

1.4億円でも引き抜き失敗? 生成AIで大波乱の「AI人材」争奪戦、狩り場は「あの会社」

連載:米国の動向から読み解くビジネス羅針盤

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生成AIを中心とするAIブームが過熱する中で、AI人材の争奪戦が激化している。メタのマーク・ザッカーバーグCEOがお目当ての人材に直々にメールで勧誘する「三顧の礼」を尽くす一方、テスラの総帥イーロン・マスク氏は「AI人材を引き抜かれないよう苦労している」とこぼすほどだ。その報酬額も高騰しており、入門レベルでも10万ドル(約1,570万円)、高レベルには100万ドル(約1億5,700万円)近くなるという。そこで今回、データや逸話などを読み解き、AI人材争奪戦の傾向と実態を分析する。
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図1:世界の企業や組織におけるAIの利用率は、2017年の20%から2024年に72%へ拡大し、生成AIでは2023年の33%が2024年には65%と倍増した
(マッキンゼーの調査より編集部作成)

AI利用率「20→72%」、生成AIは「1年で倍増」

 OpenAIのChatGPTが火をつけた世界的なAIブームは、衰えを知らない。米コンサルティング企業のマッキンゼーの調べによると、世界の企業や組織におけるAIの利用率は、2017年の20%から2024年には72%に達した。生成AIでは、2023年の利用率33%が、2024年には65%と倍増している(冒頭の図1)。

 またAIブームの主要なけん引役を務めるマイクロソフトの発表では、同社アンケート調査の回答者のうち、75%が「生成AIを実際に仕事で使っている」と答え、そのうち46%が「生成AIを使い始めたのは、過去半年の間」とするなど、将来的な需要が急速な成長を続ける可能性が示唆されている(図2)。

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図2:生成AIを「仕事で使っている」と答えた割合は……
マイクロソフトより編集部作成)

 このようにAIの利用率が高まる中、テック大手各社はAIの需要持続を予想し、AIこそが「次なるメシの種」と見定めた。そして、データセンターの大量建設やAI対応のデバイス・半導体の開発などハードウェア面での対応を加速させている。

 一方、ソフトウェア面では、LLM(大規模言語モデル)開発やAI演算処理に適したGPU(グラフィックス・プロセッシング・ユニット)向け開発環境の整備、AIフレンドリーなクラウド環境の構築、AI検索エンジンの開発、プロンプトの開発・最適化(プロンプトエンジニアリング)、そして究極的なAGI(汎用人工知能)の構築など、需要の高まりとともにAIのエンジニア不足が顕著となっている。

求人広告は2年で75倍、前代未聞のオファーも?

 求人プラットフォームの米Indeedによれば、2023年4月からの1年間で、生成AI人材募集の広告出稿が10倍に増加した。2022年4月からの2年間では、なんと75倍の伸びである。

 ところが、特に生成AI分野では、開発に必要な知識や経験を持つ人材の数が圧倒的に不足しており、即戦力となる人物の希少価値が高まっていると、米ウォール・ストリート・ジャーナル紙が伝えた。そのような人材には各社から魅力的なオファーが殺到している。

 人材リクルート企業の米アインステレン・タレントの共同創業者で、自身も人材発掘を手掛けるアレックス・リーブリー氏は、「大手IT企業は、入門レベルのAI人材に少なくとも10万ドル(約1,570万円)の年俸を提示しており、高レベルのAI専門家に対しては100万ドル(約1億5,700万円)近い報酬で引き寄せている」と語る。

 さらに、キャリアコーチ企業である米ワーク・イット・デイリーのJ.T.オダネルCEOが「軍資金が足らないので引き抜きと慰留が困難」と指摘する中小規模のスタートアップは、自社の株式を大量に与えることで優秀なAI人材を確保しようとする動きもある。

 先のリーブリー氏によれば、「あるスタートアップは、ML(機械学習)の専門家に自社の発行済み株式の4%を譲渡するという、前代未聞のオファーに打って出た」という。この社員は、給与に加えて株式の配当金を得られるほか、株主として経営に影響力を及ぼすことも可能になる。

 しかし、AI人材の誰もが引く手あまたであるわけではない。求められるAIスキルは特殊なものが多く、そのようなスキルを持つ人材は少ないのが実情だ。

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次のページでは、具体的な事例を紹介しつつ、AI人材争奪戦の最前線に迫ります
【次ページ】引き抜き合戦で狙われたのは「あのテック大手」

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