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- 2024/07/04 掲載
1.4億円でも引き抜き失敗? 生成AIで大波乱の「AI人材」争奪戦、狩り場は「あの会社」
連載:米国の動向から読み解くビジネス羅針盤
![photo](https://www.sbbit.jp/article/image/142766/bit202406211105572511.jpg)
AI利用率「20→72%」、生成AIは「1年で倍増」
OpenAIのChatGPTが火をつけた世界的なAIブームは、衰えを知らない。米コンサルティング企業のマッキンゼーの調べによると、世界の企業や組織におけるAIの利用率は、2017年の20%から2024年には72%に達した。生成AIでは、2023年の利用率33%が、2024年には65%と倍増している(冒頭の図1)。またAIブームの主要なけん引役を務めるマイクロソフトの発表では、同社アンケート調査の回答者のうち、75%が「生成AIを実際に仕事で使っている」と答え、そのうち46%が「生成AIを使い始めたのは、過去半年の間」とするなど、将来的な需要が急速な成長を続ける可能性が示唆されている(図2)。
![画像](https://www.sbbit.jp/article/image/142766/l_bit202406211106520770.jpg)
このようにAIの利用率が高まる中、テック大手各社はAIの需要持続を予想し、AIこそが「次なるメシの種」と見定めた。そして、データセンターの大量建設やAI対応のデバイス・半導体の開発などハードウェア面での対応を加速させている。
一方、ソフトウェア面では、LLM(大規模言語モデル)開発やAI演算処理に適したGPU(グラフィックス・プロセッシング・ユニット)向け開発環境の整備、AIフレンドリーなクラウド環境の構築、AI検索エンジンの開発、プロンプトの開発・最適化(プロンプトエンジニアリング)、そして究極的なAGI(汎用人工知能)の構築など、需要の高まりとともにAIのエンジニア不足が顕著となっている。
求人広告は2年で75倍、前代未聞のオファーも?
求人プラットフォームの米Indeedによれば、2023年4月からの1年間で、生成AI人材募集の広告出稿が10倍に増加した。2022年4月からの2年間では、なんと75倍の伸びである。ところが、特に生成AI分野では、開発に必要な知識や経験を持つ人材の数が圧倒的に不足しており、即戦力となる人物の希少価値が高まっていると、米ウォール・ストリート・ジャーナル紙が伝えた。そのような人材には各社から魅力的なオファーが殺到している。
人材リクルート企業の米アインステレン・タレントの共同創業者で、自身も人材発掘を手掛けるアレックス・リーブリー氏は、「大手IT企業は、入門レベルのAI人材に少なくとも10万ドル(約1,570万円)の年俸を提示しており、高レベルのAI専門家に対しては100万ドル(約1億5,700万円)近い報酬で引き寄せている」と語る。
さらに、キャリアコーチ企業である米ワーク・イット・デイリーのJ.T.オダネルCEOが「軍資金が足らないので引き抜きと慰留が困難」と指摘する中小規模のスタートアップは、自社の株式を大量に与えることで優秀なAI人材を確保しようとする動きもある。
先のリーブリー氏によれば、「あるスタートアップは、ML(機械学習)の専門家に自社の発行済み株式の4%を譲渡するという、前代未聞のオファーに打って出た」という。この社員は、給与に加えて株式の配当金を得られるほか、株主として経営に影響力を及ぼすことも可能になる。
しかし、AI人材の誰もが引く手あまたであるわけではない。求められるAIスキルは特殊なものが多く、そのようなスキルを持つ人材は少ないのが実情だ。
![photo](https://www.sbbit.jp/article/image/142766/660_bit202406211107297054.jpg)
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