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日本を代表する総合化学メーカーの花王。1887年に創業し、日本のトイレタリー市場をいち早く開拓してきた。同社は2000年頃から社員の健康施策に積極的に関わり、2008年にはトップメッセージとして「健康宣言」を発行するなど健康経営にも先進的だ。花王 健康開発推進部 健康開発推進部長/GENKIプロジェクト GENKIプロジェクトリーダー/花王健康保険組合 常務理事の守谷 祐子氏が、同社の健康経営の中身とポイント、歩き方と食べ方に着目したこれまでの施策、さらに高額医療費の割合の抑制などの成果について解説した。
本記事は2024年5月8日-10日に開催された「カイシャのミライ カレッジ 2024 Tokyo Spring」の講演内容をもとに再構成したものです
「花王グループ健康宣言」の4つの特徴
1887年に洋小間物商の長瀬商店として創業した花王。その3年後に発売した高級化粧品の「花王せっけん」は、日本のトイレタリー市場の幕開けを告げる代表的な商品である。
同社が今、目指しているのが人々の「清潔」と「美」、さらに「健康」を通じた豊かな生活文化の実現だ。
花王 健康開発推進部 健康開発推進部長/GENKIプロジェクト GENKIプロジェクトリーダー/花王健康保険組合 常務理事の守谷 祐子氏は、「この目標は健康な社員と家族があって、初めて達成できると当社は考えました」と語る。2000年頃から花王は社員の健康施策に力を入れ始め、2008年には「花王グループ健康宣言」を発表し、健康経営施策に力を入れてきた。
同社の健康経営施策の特徴は次の4つだ。まずは、前述の花王グループ健康宣言に代表される「経営トップ自らの意思表明」だ。そこでは、社員の健康に関する会社や健康保険組合、事業場の責任とともに、健康づくりに向けた「生活習慣病」「メンタルヘルス」「禁煙」「がん」「女性の健康」といった、5つの取り組みを明示。22年の改訂版では「シニアの健康」が取り組みに追加されている。
次が、「全社および各事業場で健康づくりを推進する体制の組織化」だ。同社の人事部門と健康保険組合は連携性が高く、共同で健康づくりや中期計画を策定している。また、事業場ごとに健康づくりの推進責任者を配置する。
「データに基づく取り組み」も挙げられる。同社では健診データや生活習慣、医療データなどの経年比較を、グループ会社別や事業場別、職種別に行った「花王健康白書」を毎年作成している。これを基に現状や課題を把握したうえで、健康づくりの推進責任者が職場の特性に応じた健康施策の立案に取り組んでいるという。
楽しみながら健康になれる仕掛けづくり
最後が、「社員が楽しみながら健康になる取り組み」だ。
同社は長らく「内臓脂肪と“暮らし”に関する研究」や「歩行と健康に関する研究」などに取り組んできた。そこで得られた知見を製品開発だけでなく、社員の健康施策にも積極的に反映させている。
「健康づくりの大切さは理解していても、行動に移す社員は多くはありません。その中でより多くの社員を巻き込めるよう、『歩き方』や『食べ方』の見直しで内臓脂肪を減らせる点に着目し、日々のランチなどでおいしく、楽しく実践できるようにし、定期的に減少効果を確認するといった施策を展開しています」(守谷氏)
心臓病や脳卒中、糖尿病などの命に係わる病気は内臓脂肪の増加から始まることが多いというエビデンスがあるという。特に生活時間の不規則な人や内臓バランスの悪い人に内臓脂肪は多く、女性は50歳を超えると急激に増える傾向にある。
内臓脂肪を減らす施策のために同社はツールを新たに用意した。まずは、腹囲測定と同時に測定可能な「内臓脂肪計」だ。病院などで実施される従来のエックス線CT法と比べ、測定の手間と時間を大幅に削減できる。原理特許は花王が保有し、製造・販売はパナソニックが行っている。
測定にあたっては社員が専用アプリの質問に答えることで、内臓脂肪と生活習慣の関係性の「見える化」も推進。
このほか、同社は歩き方と食べ方の改善のためのユニークな施策を打ち出している。
【次ページ】歩き方と食べ方の改善のためのユニークな施策
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