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- 2023/07/20 掲載
弁護士 八代英輝氏に聞く、ChatGPTの登場で発揮される「企業法務」の真価とは
法務部門はコスト? ここまで違う、米国と日本での認識
個人情報保護法・知的財産権法・独占禁止法のほか、DX投資促進税制に関わる産業競争力強化法や行政面でのデジタル化に向けたデジタル手続法など、DXと法律は密接に関わる。日本における法務部門は「コストを削減しながらリスクマネジメントを行う部署」と考えられる傾向にある。コストセンターとも呼ばれ、事業戦略に積極的に関わるというよりは、ブレーキのような機能を果たす部署とされる。
一方、米国における法務部門は、プロフィットセンターとみなされる。企業にとってハンドルや羅針盤のような存在である。
DXは、デジタル化推進チームのような一部の部門だけが進めるものではない。企業全体でDXを進めるためには、法務部門が企業価値を高めるために重要な役割を果たすことを認識する必要がある。そして、法務部門が積極的に他部門とタイアップし、DXの基盤づくりに参画することが重要だ。
急増するクロスボーダー訴訟、狙われやすい日本企業
また、DXの進展により、企業の活動はボーダーレス化している。日本企業が海外に進出する機会が増えると、クロスボーダー訴訟も急増する点は看過できない。八代氏は現状について次のように語る。「クロスボーダー法務の大きな特徴は、一度訴訟に発展すると非常にコストがかかる点です。国や言語、法律制度も異なる状態で訴訟をするため、多大なコストがかかります。特に、日本企業は『米国で利益を上げている、お金を持っている企業』というイメージを持たれており、狙われやすい傾向にあります」(八代氏)
一度訴訟に発展すると、手間や費用がかかるだけでなく、企業のブランディングにも影響する。そのため、そもそも訴訟が発生しないように予防することが肝心だ。DXの進展により企業のグローバル化がますます進むことが予測される現在、日本企業には国際法務に精通した法務要員やインハウスロイヤーの育成が求められる。
さらに注目されているのが、AIやビッグデータを活用した知財戦略だ。今後、知財分野でのデジタル化が進むことが予想される。八代氏は、かつて弁理士の業務を行っていた経験から、AIによる特許調査の省力化・短縮化に注目する。
「特許調査では、特許に関する過去の膨大なデータを検索する必要があります。人間がやると時間もコストもかかる作業ですが、AIやビッグデータを活用すれば、作業を大幅に効率化できるでしょう」(八代氏)
同時に、知財を「IPランドスケープ化」することで、新規事業創出や経営に役立てられることも強調している。知財は、企業が持つ独自の強みだ。知財に関する膨大なデータベースを自由に扱えるようになれば、企業の成長や発展に知財を活用しやすくなる仕組みを整えられるだろう。 【次ページ】ChatGPTがリーガル分野で得意とすること
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