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- 2023/09/04 掲載
三菱電機“驚き”の知財戦略、特許「独占」は「時代遅れすぎ」と言えるワケ
今の時代だからこそ、知財部門は「前線」へ行くべき理由とは
家電から宇宙まで幅広い事業を展開する総合電機メーカー、三菱電機。同社はさまざまな分野の課題解決に資する技術を数多く有しており、国内外で取得した特許は約7万件にのぼる。そのような同社の知財を守り続けてきたのが知財部門だ。契約や審査、ライセンス供与、知財侵害係争、訴訟対応などのバックオフィス業務で同社を支えてきた。しかし、知財部門の業務効率化により、戦略的なリソース再配置が必要な状況になりつつある。これを好機として捉えたのがOpen Technology Bank(OTB)と呼ばれる取り組みだった。
OTBは、同社が知財を起点に社外・社内の連携を推進することを目的に、2021年度より開始した新しい活動だ。保有する技術資産をパートナー企業にライセンスし、三菱電機の特許・ノウハウと、パートナー企業の技術・知恵・アイデアを掛け合わせることで、新たな価値やビジネスの創出と、多様化する社会課題の解決を目指す。
同社でOTB事業に携わる同社知的財産渉外部 部長の片山秀彦氏は、OTB事業の意義について、以下のように話す。
「知財部門は会社を守っていくのが役割だというイメージが一般的です。しかしただ守るだけでなく、知財を戦略的に活用することで、事業経営へよりダイレクトに貢献できるようになります。さらに、そうした活動はグローバルな社会課題を解決し、サステナブルな未来を実現する可能性も持っています。今こそ知財部門は、勇気を持ってフロントラインの業務に関与していくべきです」
では片山氏が携わるOTB事業とは具体的にどのような取り組みなのだろうか。
知財を「競争」ではなく「共創」に活用するメリットは
片山氏が「相手先に訪問すると、知財ライセンス部門の担当者というだけで『何かクレームを言われるのではないか』と身構えられることもありましたね。知財は残念ながら、他社との協調関係を阻害する1つの要因になっていたと思います」と振り返るように、従来の知財活動では技術独占、権利行使、模倣防止など、他社との「競争」が主眼にあった。しかし、技術革新のスピードがますます加速する現在、環境変化へ柔軟に対応しながら多様化する社会課題を解決していくためには、1社単独だけでなく、複数の企業が手を携えた「共創」のアプローチが求められる。他社排除や独占といった敵対的な場面でのみ持ち出すのではなく、他社との連携ツールとして知財をポジティブに活用するために、OTBの活動が生まれたのだ。
OTBの活動の狙いとしては、まず既存事業範囲外の企業とのパートナーシップ創出に向けた“入り口”を担うことが挙げられると片山氏は話す。また、社外との交流を通じ、ビジネス創出に向けた「新たな視点」を得ることも目的の1つだという。
そして、それらの結果として生まれる“出口”が、両社合意した条件のもとパートナー企業の事業で同社が保有する特許・ノウハウを活用する「ライセンスアウト」や、パートナー企業からも技術提供を受けて相互にミッシングピースを補完する「クロスライセンス」である。
そのほか、既存技術のブラッシュアップや仮説検証のために共同実証や共同開発を実施する「PoC・共同開発」、さらには同社技術へのニーズや市場性を確認できた場合に新規で行う「事業化・製品供給」なども挙げられる。OTBの“出口”はライセンスだけにとどまらず、多くの可能性を秘めているのだ。
OTBについて片山氏は、自社の利益だけを主眼に置いたものではないと強調する。
「OTBは、パートナー企業さま・三菱電機・社会の“三方良し”を実現するための取り組みです。パートナー企業さまは、OTBを活用していただくことで、開発期間の短縮による事業スピードの向上や開発コスト削減といったメリットが得られるでしょう。弊社にとっても、既存技術の新規用途やニーズの発掘、他社ネットワークの構築、副次的効果としてのライセンス収入獲得といった多くのメリットがあります」(片山氏)
片山氏はまた、「弊社とパートナー企業さまの共創は、社会課題の解決にも寄与できるでしょう。OTBは全ステークホルダーがWin-Winになり、さらなる好循環を生み出すサステナブルな取り組みなのです」とも指摘する。 【次ページ】約40件の技術をライセンス提供可能?
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