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- 2023/10/26 掲載
ネットフリックス、第一生命、ネクステージのデータドリブンな「オフィス戦略」の全貌
データドリブンな意思決定が求められる総務
金氏によると、「人気の職種に関するリンクトインの調査で、総務管理担当という職種は、2022年の10位から2023年は2位にランクアップした」という。背景には「供給の少なさ」があると金氏は話す。総務は文字どおり、“何でも屋”という側面がある一方、オフィス戦略1つとってもデータドリブンな意思決定が求められており、そうした要請に応えるスキルを備えた人材は思ったよりも少ない。
一般社団法人FOSCが公開する「総務 Job Dictionary」で定められた業務標準などを参考に、金氏は総務の仕事を「各分野の専門性を持って、社員の生産性&Happinessに貢献する仕事」であると定義する。
また、昨今のトレンドは「働き方の選択肢の多様化」だ。働く場所の選択肢が増え、自分にとって最適な時間、場所で働く「フレキシブルワーク」の重要性が高まっている。オフィスの役割は、出社して働く場所から、コラボレーションする場など「自社にとって最適な場=企業文化を醸成する場」へと変わっていく。
一方、「働き方は画一的ではない」とも金氏は話す。米国のGAFAにおいてもオフィスワークを増やす企業もあれば、リモートワークにかじを切った企業もあるが、「違うことはよいことであり、どうやって生産性を高めるかについて、まだ最適解は見えていない状況だ」と金氏は話す。
では、オフィス戦略をはじめ、経営に貢献する総務の役割とは何か、パネリストとのディスカッションを詳しく見ていこう。
ネットフリックスはセンサーデータをもとに戦略を立案
最初のテーマは、「フレキシブルワーク」に関して、各社の出社率や、曜日ごとの出社状況の傾向についてディスカッションした。森村氏は、「平均して60%~70%の出社率で、金曜日の出社率が高い傾向がある」と話す。森村氏は、ネットフリックスでワークプレイスマネージャーとして日本のオフィスを担当している。ワークプレイスの目的を「私たち企業を前進させるオフィス環境と体験を創り出すこと」と定め、経営方針をワークプレイスに落とし込むことに取り組んでおり、たとえば、センサーデータをもとに、会議室の使われ方や時間、人数、席にいる時間などの稼働状況を分析し、1人ひとりが働きがいを持って働けるワークプレイスの仕掛けを考えている。
続いて、山谷氏は「4割がテレワークの状況だ」と話す。週に2日以上テレワークをすると、孤立感が高まるという研究結果などから「週に2回テレワーク」を推奨しており、曜日としては「月、金は比較的テレワークが多い」という。山谷氏は第一生命保険の総務部長として、老朽化した日比谷本社のリノベーションを契機に、従来の島型対向レイアウトからABW(Activity Based Working)型フリーアドレスの導入、豊洲本社への配置転換など「従業員がやりがいを持ってウェルビーイングを高める」オフィス変革プロジェクトを手がけてきた。
松本氏は「出勤100%をベースに、状況によってテレワークを使い分けている」と話す。松本氏が所属するネクステージグループホールディングスは、あきらめない人に、チャンスをつくるための「多角化経営」を掲げる。通販領域や金融領域、エンタメ領域などに13事業を擁し、各事業会社でワークプレイスに求めることが異なる中で、「グループとしてひとつにまとめながら、子会社のカルチャーを大事にする」難題に取り組んでいる。
松本氏は「コロナ禍は大きな転換点だった」と話す。テレワークを実施してみたら「意外と働けた」という実感を持った一方、生産性が高まったかというと「必ずしもイコールではない」ということだ。そこで、コロナ禍が落ち着きつつある今、グループ各社の大きな方向性が定まり、現在に至っている。 【次ページ】総務のKGIやKPI、定量的な指標の設定のポイント
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