0
会員になると、いいね!でマイページに保存できます。
横浜市は「デジタルの恩恵をすべての市民、地域に行きわたらせ、魅力あふれる都市をつくる」ことを基本目的とした「横浜DX戦略」を策定、推進している。変革との取り組みには特に「組織カルチャーの変革」が欠かせないが、同市は「デジタル人材の確保」「アカデミアと連携した職員のリスキリング」など大きく4つの施策を推進している。そこで、同市のDX推進の旗振り役であるデジタル統括本部長 下田康晴氏に、DX人材育成の具体的な取り組みや、DX実現後のあるべき自治体の姿などについて話を聞いた。
サンドボックスで挑戦「デジタル区役所」
2022年9月に「デジタルの恩恵をすべての市民、地域に行きわたらせ、魅力あふれる都市をつくる」ことを基本目的として「横浜DX戦略」を発表した横浜市。その中の代表的な施策の1つとして掲げるのが「デジタル区役所」だ。これは「書かない・待たない・行かない そして つながる」をコンセプトにした取り組みで、横浜市の18区のうち西区と港南区はデジタル区役所の「モデル区」に選ばれている。
下田氏は西区と港南区での実証実験の目的として「大きく3つある」と話す。1つは、新しい区役所をどう創造するかという議論を「机上で方針を固めてから始めるのではなく、どのアプローチが一番よいかを現場発でスピーディに試行していくこと」だ。「本庁の局ではどうしても理屈で物を考えてしまいがち。場当たり的な進め方かもしれないが、まずは現場で試行錯誤して、議論する中でスピーディに検証していくことを重要視した」と下田氏は述べる。
2つ目は、「書かない・待たない・行かない そして つながる」というデジタル区役所のコンセプトを、統括本部を含めた本庁サイドが「どのような支援体制でサポートすればよいかを見極めること」にある。
そして3つ目は「プロトタイプを実際に試してみる」アンテナショップとしての役割だ。新しいアプリや働き方など、全区で試行するには大規模になってしまうプロジェクトを、「スモールスタートし、プロトタイプを実際に触りながら、支援の設計図を描いていくことができる」と下田氏は話した。
そして、実証実験を通じて「現場での運用が可能だと判断したものについては、次年度から18区に横展開していく」流れだ。
はじめから精緻な設計図を描かずに、現場で一番困っている課題の見極めから、解決策をスモールスタートして同時に導入のプロセスを探るという進め方をすることにより、「モデル区での検証結果からヒントを得て、これからの新しい区役所像を描くことを期待している」ということだ。
いわば、デジタルデザインのプロセスに不可欠な「サンドボックス」のような役割を果たしていくと下田氏は述べた。
このように横浜市DX戦略では、デジタル区役所でも一貫して(1)観察・共感→(2)問題定義→(3)アイデア創出→(4)試作・試行→(5)検証と修正を経て実装、運用という「デザイン思考」を用いてサービス開発に取り組んでいることがわかる。
【次ページ】市職員約3万人が変わる「組織文化変革」4つのポイント
関連タグ