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イーロン・マスク氏が、11月に買収したツイッターを「万能スーパーアプリ」に生まれ変わらせるとの構想をぶち上げている。その収益の3本柱が(1)広告、(2)サブスク、(3)金融だ。すでにサブスク施策を開始するなど、マスク氏の「夢物語」が歩み始めている。しかし赤字を垂れ流すツイッターの収益改善だけでもハードルは高く、その上、買収にかかる一連の騒動などで企業は広告出稿を抑えている模様だ。そんなツイッターをマスク氏はどのように再建し、どのようなスーパーアプリに変革させようとしているのか。マスク氏による中長期的な戦略を読み解く。
マスク氏の「夢」と「ツイッター買収」の深い関係
マスク氏は成功する事業のカギが経営者のビジョン、すなわち「壮大な物語(ナラティブ)」であることを理解している。
そのマスク氏がツイッターで語り始めたナラティブは、「非中央集権的で民主的なコミュニティー」「繁栄するクリエーターエコノミー」であるように見える。プラットフォームの規制緩和で言論や表現を活性化させ、そこに決済や銀行機能、さらには暗号資産取引をからませることで、市場経済的なエコシステムを形成しようとしている。
ツイッターの買収に先立って、ツイッター創業者のジャック・ドーシー氏に宛てたテキストメッセージで、「ツイッターを非中央集権的なものに作り替えたい」と表明していた。そもそもマスク氏はペイパル創業に関わった天才起業家集団ペイパルマフィアの一員であり、「金融の民主化と非中央集権化」は20年以上にわたり抱き続けてきた構想だ。業績不振であったツイッターを手に入れて、その夢をかなえようとしているわけだ。
マスク氏は買収後の最初の数週間でツイッター社内体制の刷新を図った。そして新たに任命するトップと、基本構想およびスーパーアプリの方向性をすり合わせた上で、ツイッターを人と人がつながる「コミュニケーションの場」から、「クリエーターエコノミーや決済のマーケットプレイス」へとアップデートし、マネタイズの泉にしようと目論んでいる。
収益の3本柱(1):広告
ツイッター買収前後のマスク氏の発言から、ツイッターのスーパーアプリは(1)広告、(2)サブスク、(3)金融を収益の3本柱とすることを見据えていることが明らかとなっている。同社の売上の9割は広告で占められるが、収入源としてのサブスクと広告の割合を近いうちに半々にしたい考えだ。
一方、広告については、買収に伴うツイッター社内の混乱やトランプ前大統領のアカウント復活などで広告主による出稿を一時停止する動きがある。さらにフォロワーの多い有名人や大手企業によるボイコットも伝えられるが、状況がもう少し落ち着けば、いずれ広告やユーザーは戻ってくるだろう。
なぜなら、出稿先・投稿先としての魅力がまだまだ大きいからだ。たとえばツイッターはニュースや最先端情報を得る場所として、FacebookやYouTube、TikTokよりも
人気がある。しかもユーザー層の
4割近くが25~34歳と、広告主にとっての主要なターゲット層を抱えている。
クリエイティブ広告の米HireInfluenceのクリス・ジャックス成長戦略部長が
述べたように、「ツイッター上の広告が所期の効果を上げているのであれば、あえて出稿をやめる必要はない」のである。
こうした中でも、収入源として拡大させたいサブスクの施策をすでに始動させている。
【次ページ】収益の3本柱:「サブクス」と「金融」
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