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- 2022/09/29 掲載
イーロン・マスクのスペースXが「衛星」で狙う、携帯電話「圏外ゼロ」への妙手
スペースX、衛星と携帯電話をつなぐ仕組み構築で米通信大手と提携
既存の携帯電話ネットワークは、基地局による中継で成り立っており、基地局がない山間部などでは、通信ができない場所も依然多く存在している。このようなモバイル通信ができない場所は「モバイル・デッド・ゾーン」と呼ばれているが、米国では近い将来なくなる可能性がある。スペースXと通信大手Tモバイルが衛星インターネットを介したモバイル通信サービスの提供に向けタッグを組んだからだ。
米CNBC2022年8月25日の報道によると、スペースXのイーロン・マスクCEOとTモバイルのマイク・シーベルトCEOは、スペースXの第2世代衛星とTモバイルの帯域を活用し、新しいモバイルサービスを提供することを明らかにした。新サービスによりモバイル・デッド・ゾーンをなくすことを目指すという。
翌日には、イーロン・マスク氏は自身のツイッターで「来年ローンチされる衛星インターネット、第2世代スターリンクで携帯電話と直接通信できるようになる。これにより世界中のモバイル・デッド・ゾーンをなくすことができるだろう」と発言している。
スターリンクは以前、本連載でも触れたが、スペースXが提供する高速衛星インターネットサービスのこと。このネットワークは、同社が現在までに打ち上げた2700機以上の衛星により成り立っている。
マスクCEOによると、来年打ち上げ予定の第2世代スターリンクには非常に大きなアンテナが備え付けられており、携帯電話と直接通信することが可能となる。
TモバイルのシーベルCEOは、同社に割り当てられたミッドバンド帯域の一部をスターリンクの衛星に統合する予定であると発言。これによりTモバイル利用者は、米国本土48州、アラスカ、プエルトリコ、ハワイ、また海上の遠隔地で、モバイルメッセージや特定のメッセージアプリを使えるようになるという。
シーベルCEOは、最終的には音声通信もできるようになり、これらの機能を人気プランに組み込む計画があると述べたが、具体的な価格にまでは言及していない。
これらの衛星通信サービスを利用するために、新しい携帯電話に買い換える必要はなく、既存の携帯電話で利用が可能とのこと。また、マスク氏によると、スターリンクターミナルを使ったときほどの帯域ではないが、モバイルゾーンでの利用者が少ない場合、テキストだけでなく、動画も少しだけ扱える可能性があるという。
Tモバイルは今後「相互ローミング」を提供することも計画している。海外の通信事業者がスペースXと提携している場合、その通信事業者の利用者が米国を訪問した場合、米国で衛星通信サービスを利用できるようになるものだ。これに関して、マスク氏とシーベルト氏は、2社を中心とするアライアンスに参加することを海外の通信事業者に呼びかけている。
船のクルーズ大手もスターリンク導入へ
スペースXのスターリンクはモバイル領域だけでなく、飛行機内や船内のWi-Fiサービスも大きく変えようとしている。マスク氏とシーベルト氏の共同発表から間もない8月30日、米クルーズ大手ロイヤルカリビアン・クルーズが船内でスターリンクの衛星インターネットサービスを提供することを発表。海上でのインターネット通信環境の強化を目指す。
ロイヤルカリビアンのジェイソン・リバティーCEOは、スターリンクが船内のネット利用体験を大きく変えるゲームチェンジャーになると指摘、船内で動画ストリーミングやビデオ通話を可能にするものだと述べている。
【次ページ】船やトラックでも利用できるスターリンク
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