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米ピュー・リサーチ・センターの調査では、米国Z世代のソーシャルメディア利用が下落傾向にあることが判明。インスタグラム、フェイスブック、TikTokなど既存のソーシャルメディア利用が下がっていることが示唆されている。この状況下、Z世代ユーザーを急速に取り込む新しいソーシャルメディアがいくつか存在する。Z世代の間で注目される新興ソーシャルアプリの動向を追ってみたい。
TikTokも無視できない新興アプリ
TikTokが2022年9月15日に米国ユーザーを対象に新機能「
TikTok Now」をローンチした。この新機能、実は欧米のZ世代の間で人気となっている新しい写真ベースのSNS「BeReal」のクローン版といわれている。
こうした報道をきっかけにBeRealへの関心が一層高まってくることが予想される。
BeRealは、2019年に元GoProの社員らが立ち上げたソーシャルアプリで、加工・編集しない写真をシェアするというのが特徴だ。ありのままの姿を友人にシェアするというシンプルなコンセプトがZ世代の間で受け入れられ、急速にユーザー数を伸ばしている。
最新情報によると、ユーザー数は1500万人で、2022年4月以降からアプリのダウンロード数が急増。いわゆるホッケースティック型の成長軌道を描いてユーザーを増やしている。
iOSの「無料アプリ」でトップ、BeRealとは
BeRealは、アレクシス・バレヤット氏とケビン・ペロー氏が立ち上げたフランス発のソーシャルアプリ。ローンチ時期は、2019年12月~2020年1月頃だ。
アプリ分析企業Apptopiaのデータ(2022年4月)によると、BeRealのダウンロード数は2022年に入り急増、これまでのダウンロード全体のうち65%が同年に発生した。月間アクティブユーザー数は、年初来で315%の増加となった。一方、BeRealが
TechCrunchにシェアした直近情報(2022年4月23日時点)によると、年初来のダウンロード数は767万回となり、2022年のダウンロード数は、全体の74.5%を占めるという。国別のダウンロード数をみると、最多は20.5%のフランスだが、米国も19.7%と僅差で迫っている。
また
TechCrunchが2022年9月20日に
フィナンシャル・タイムズの報道として伝えたところでは、BeRealのユーザー数は1500万人いるとされる。
さらに、
WIREDの2022年7月24日の記事では、BeRealアプリがiOSの「無料アプリ」カテゴリでTikTokを抜き、トップに躍り出たと伝えている。
【次ページ】ダウンロード数年初来で315%急増の要因
ダウンロード数年初来で315%急増の要因
BeRealは、スマートフォン利用を前提に、1日1回写真を投稿する通知が送られてくる。写真を投稿できるのは通知から2分以内で、加工・編集したものではなく、撮ってだしの写真が求められる。
メインとなるユーザー年齢層は大学生。口コミ、SNS、キャンペーンプログラムなどさまざまなチャネルを通じてユーザー数を伸ばしている。WIREDは、TikTokで複数のBeReal関連動画が拡散しており、これが最近のダウンロード数の急増に影響した可能性を指摘している。
一方
TechCrunchは、BeRealが実施しているキャンペーン「大学生アンバサダープログラム」と広告/マーケティングの影響を指摘。大学生アンバサダープログラムとは、アプリ紹介などを行った大学生に対価を支払うというもの。米ブラウン大学では、アプリを紹介した大学生に30ドル、アプリのダウンロードとレビュー投稿をした大学生に50ドルが
支払われたという。
BeRealのウェブサイトでは、大学生アンバサダーを募集するページを確認することができ、現在も進行しているキャンペーンであることが分かる。
ホッケースティック型でダウンロード数が急増しているBeReal。オーガニックでは難しい成長軌道であり、広告やマーケティングにもかなりの資金を投じていることが示唆される。
その資金源となるのは、BeRealが2021年にシリーズAで調達した資金だ。同ラウンドでBeRealは、アンドリーセン・ホロヴィッツとアクセル・パートナーズなどから3,000万ドルを調達。最新情報によると、BeRealは現在、収益化に向け、いくつかの施策を準備しているという。インスタグラムなど既存ソーシャルメディアとの差別化から広告モデルではなく、有料機能やサブスクリプションモデルが検討されている。
新興アプリがZ世代に受け入れられる理由
BeRealと同じカテゴリで、Z世代の関心が高まっているソーシャルアプリはいくつか存在する。自撮りではなく、友達を撮影し投稿する「他撮り」アプリPoparazziはその1つ。
2021年5月にApp Storeでトップに
ランクインするなど、昨年から米国で話題となっているソーシャルアプリだ。2022年6月時点の
情報によると、ダウンロード数は500万回以上、同アプリ上での写真・動画のシェア回数は1億回に上るという。ユーザーの95%が14~21歳とZ世代が中心だ。
Poparazziの共同創業者のアレックス・マ氏が
Protocolの取材で、同アプリの開発コンセプトを語っているが、ここからZ世代の間でなぜPoparazziやBeRealなどの新しいソーシャルメディアが受け入れられるのか、その理由がみえてくる。
マ氏は、インスタグラムやTikTokは1%のインフルエンサーが99%の視聴者のためにコンテンツを提供する空間になっており、友人どうしでつながる空間ではなくなったと指摘する。インフルエンサーのコンテンツは視聴されるが、自分ごとではないためシェアされることも少ないという。
またインフルエンサー側からしても、広告モデルである限り、投稿する際はできるだけ多くの「いいね」や「コメント」を獲得するプレッシャーがつきまとい、ありままの自分を表現することが難しく、これもZ世代がPoparazziなどへの関心を高める理由になっている。
マ氏は、目的の違いからフェイスブックやインスタグラムは競合とは認識していないと語る。これら既存のソーシャルメディアは広告モデルという構造上、人々のアテンションを獲得するために競争しているが、Poparazziは5~10年後も友人どうしの空間を提供し続ける長期的な視点で事業を行う構えだと意気込みを見せている。
ピュー・リサーチ・センターの
調査によると、18~25歳の年齢グループでは、ソーシャルメディアの利用回数は下落傾向にあることが明らかになっている。これはフェイスブックやインスタグラムなど既存のソーシャルメディア利用回数が下がっていることを示唆するもの。世代交代という現象はさまざまな分野で起こるが、ソーシャルメディア市場でも、新興アプリによる世代交代が起こりつつあるのかもしれない。
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