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  • 2022/05/11 掲載

グーグルやメタが1,000億円投資、CO2回収・貯留プログラム「Frontier」とは

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グーグル親会社のアルファベットやメタ(旧フェイスブック)など、日本でもよく知られる米大手企業が、2030年までに9億2,500万ドル(約1,189億円)分の二酸化炭素回収・貯留を進める取り組み「Frontier」を開始するとして注目を集めている。この取り組みを主導するのは、評価額12兆円を超える米国2番目のユニコーン企業で、フィンテック事業を手がけるストライプ(Stripe)だ。Frontierとはどのような取り組みなのか。なぜテックジャイアントを差し置いてストライプがこれを主導しているのか。
執筆:細谷 元
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2030年までに9億2,500万ドル分の二酸化炭素を回収・貯留する計画
(Photo/Getty Images)

米大手企業がタッグを組んだ環境への取り組み

 グーグルの親会社のアルファベットやメタなど日本でもよく知られる米大手企業が、2030年までに9億2,500万ドル(約1,189億円)分の二酸化炭素回収・貯留を進める取り組み「Frontier」を開始するとして注目を集めている。

 この取り組みを主導するのが、フィンテック企業のストライプだ。同社は、電子決済ソリューションを主要ビジネスとし、Eコマース市場の拡大とともに、アマゾン、グーグル、ウーバーなどを顧客に取り込み、ビジネス規模を急速に拡大させてきた

 Frontierは、ストライプの完全子会社になる予定。ここにアルファベットとメタ、またコンサルティング大手マッキンゼーとEコマース大手Shopifyの計5社が参加する形で開始される。

 この取り組みでは、2022~2030年にかけて9億2,500万ドルを投じ、二酸化炭素回収・貯留ソリューションの購買を進め、二酸化炭素の削減を目指す。

 IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の推計によると、気温の上昇を1.5度に抑えるには、2050年までに年間60億トンの二酸化炭素を取り除く必要がある。しかし、現在までに回収・貯留された二酸化炭素量は、1万トンに満たないといわれており、回収・貯留技術の開発が急務となっている。

 このFrontierは、現在ストライプが独自に実施している環境への取り組み「Stripe Climate」とも連動すると見られる。Stripe Climateとは、ストライプの決済ソリューションを利用する企業が二酸化炭素回収・貯留技術を開発するスタートアップに収益の一部を投じ、技術開発を促進する仕組みだ。

 ストライプは、この取り組みですでに二酸化炭素回収・貯留技術を開発する有望スタートアップを洗い出し、ポートフォリオを構築している。Frontierでもこの知見やネットワークが活用されることが見込まれる。

 現在世界各地で森林再生や土壌隔離などによって、二酸化炭素回収・貯留が進められているが、これらの取り組みだけでは十分な効果が得られないことが指摘されている。このことから二酸化炭素回収・貯留技術による補完の重要性が認識されつつある。

二酸化炭素回収・貯留技術の開発を促進する枠組み

 Frontierに関して興味深いのは「Advance Market Commitment(AMC)」と呼ばれる枠組みにより二酸化炭素回収・貯留技術の開発促進が試みられる点だ。

 AMCとは、将来的に必要とされる技術を開発する企業に対し、事前に技術やソリューションの買い取りを保証することで、技術開発を促す契約の一種。かつて肺炎球菌ワクチンの開発において導入された枠組みだが、環境技術開発に対する導入はFrontierが初となる。

 ワクチンのように、必要とされる一方、開発コストやリスクが高く単一企業だけでは開発が困難とされる技術の開発促進に有効といわれている。

 Frontierでは、買い手が年間購買額を決定すると、その需要をFrontierがとりまとめ、ソリューションを購入する形で技術開発企業(売り手)に資金を投じる。売り手の技術により回収・貯留された二酸化炭素は、買い手側に移譲される。

 どの技術開発企業に、どれほどの資金が投じられ、どれほどの二酸化炭素が回収されるのかについては、まだ明らかにされていないが、技術開発企業のポートフォリオはすでに公開されており、これらの企業に資金が投じられる公算が大きい。

【次ページ】注目の二酸化炭素回収・貯蔵技術
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