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遅れる日本…何から対応すべきか?
欧州、米国、中国など、グローバルで企業を超えたデータ共有の取り組みが進む中、日本の取り組みにはまだまだ課題も多い。日本においてはデータの競争・協調の振り分けが進んでいないことや、企業間連携においても契約や連携の範囲などが明確でないことが多く企業を超えたデータ連携が進みづらい要因となっている。
日本企業として、(1)自社の競争力の源泉としてクローズドにする情報と、(2)他社と共有することによって新たな価値を生み出す情報、を振り分け、他社とのデータ連携を加速していくことが求められる。
今後これらのデータ共有基盤の取り組みで開発・実装されているコネクタを介したデータ共有が国際標準として浸透していくことが想定されており、これらへの対応が遅れた国が出てくる場合には、グローバルでデータの活用や連携に支障が生まれる可能性がある。
また、これらの取り組みは標準としての協調領域を開発する動きではあるが、その裏ではこれらデータ共有の基盤を前提としたソリューションやサービスが欧州企業により着々と開発されている。インダストリー4.0や製造業のデジタル化に日本全体として遅れてしまったように、今後これらのデータ共有の世界が一気に来た際に、日本企業として競争力のあるソリューションの提案ができず存在感を失いかねない。
これらを回避する上でも、これら協調領域・標準のコネクタなどのインフラなどは徹底的に使いこなすことが求められる。
その上で、それらを使いこなした各社の競争領域の部分や具体的なユースケース策定においてはじめて、日本の強みを発揮する議論を行っていく姿勢が重要だ。東南アジアをはじめとした海外に対する日本の強みの出し方のポイントは協調領域と競争領域の間にある。協調領域のコネクタなどは徹底活用した上で、これらをいかに使いこなすのか、といった観点で成熟度モデルや企業評価のスキーム作りや、データ共有をリードし推進する人材の育成、キャパシティビルディングなどがグローバルで日本が政策上では強みとして発揮していくべき領域となり得る。
先行する欧州に学ぶ、成功体験の増やし方
ここまで欧州を中心にデータ共有の取り組みを紹介してきたが、欧州企業は競争・協調領域の振り分けがうまく、日本と構造が異なるのでマネすることはできないと感じる人もいるかもしれない。しかし、欧州勢もIDSAの創設期から試行錯誤の末に、多くの失敗や苦労を経て今の姿がある。IDSAの取り組みが生まれた頃は、日本と同じく欧州勢もどのデータが秘匿で、どのデータを共有すべきかの振り分けが進んでおらず、データ共有に関する懸念や躊躇があったという。
その中で、発注者・サプライヤーの間のFAXやメールのやり取りをデータ連携によって効率化するなどの、企業の秘匿情報に踏み込まない協調領域の部分から徐々に共有の取り組みを進め、そこから範囲を拡大していったのだ。
データ共有の議論を日本で進めていく上でも一足飛びでは実現しない。項目としては、CO2モニタリングはじめとした規制としてやらなければならない領域や、秘匿・競争力の源泉ではない部分の協調領域から進め、そこから踏み込んだ競争力の源泉につながる競争領域へと広げていくことが求められる。
また、データ共有の範囲としても欧州として、まずは2社間の共有から、成功体験を積み、そこから徐々に複数企業間へ広げていっている。重要なのはなぜデータ共有をしなければならないのか、するとどんなメリットがあるのかといった企業のインセンティブ設計である。これらデータ共有を企業経営に活用する「文化」をステップバイステップで構築していくことが求められる。
東南アジアとの連携が打開策になるかもしれない理由
またこれらのデータ連携の取り組みを進めていくには、東南アジアなど新興国で先に進め、その動きを日本に還流させる動きも一手となる。日本においては国内市場の過度なライバル意識や、領域の重なりなどから同業も含めた他社とのデータ連携に抵抗感を示すケースが多い。今までの業界横断連携が日本ではなかなか進まなかった背景はここにある。
しかし、新興国市場では、国内では競合としてしのぎを削っている企業間の連携が進むケースや、サプライチェーンなどが整備されていないことからデータ連携をせざるを得ない背景が存在する。東南アジアや、インドなどアジア各国でのデータ共有の仕組みづくりを、日本の産学官をあげて取り組み、そこから日本へ還流させデータ共有の取り組みを加速することが重要ではないだろうか。
日本はこうした政策コンセプトなどをスピード感をもって他国に展開し仲間づくりをしていくことを苦手としてきたが、上記のようにまず日本から進めるのではなく、他国から進める順序の転換により他国での日本としてのデータ共有の産業イニシアチブを転換していくことも有効だ。
日本は従来ケイレツをはじめとした企業を超えた連携や、三方よし・CSRなど社会・環境とビジネスの両立に強みを持ってきた。これらの強みをインダストリー5.0や、データ共有時代に競争力に転換し、再びグローバルで存在感を発揮することを期待したい。
※本記事は筆者個人としての意見であり、所属組織の意見を代表するものではありません
■お詫び[2022/09/16 14:28修正]
一部情報に誤りがありました。ご迷惑をおかけした読者ならびに関係者にお詫び申し上げます。
【元】DATE-EX
【修正後】DATA-EX
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