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労働人口の減少はどの業界でも明らかな課題として持ち上がっています。人口減少の傾向は今後も進行することが明らかであり、今までと同じ業務プロセス、同じ作業工数を必要としていては、安定的な企業活動を維持するのは困難になることが想定されます。特に物流倉庫をはじめとした労働集約型産業では一層の効率化に取り組むことが、経営効率および成長を図るために必須と言えます。一方、海外では進められている自動化や省人化といった業務革新が、日本国内で爆発的に実行されているわけではありません。今回は物流倉庫における物流DX推進と現段階で実現可能な業務革新策を検討します。
厳しすぎる物流環境、人口減少でも作業量が増加するワケ
物流倉庫の運営を左右する作業人員および仕事量を見ていきます。まずは労働人口の減少がどのような形で進行しているのか、数字で確認します。
生産年齢人口の推移
|
生産年齢人口 |
減少数 |
1990年 |
8590万人 |
- |
2020年 |
7341万人 |
-1249万人 |
2030年 |
6773万人 |
-568万人 |
上記の表を見ると、1990年から2020年で1249万人(15%)も減少し、2020年から2030年ではさらに568万人(8%)減少することがわかります。この流れはさらに進むことも見て取れます。
さらに人件費上昇の度合いを最低賃金の全国平均額から見てみます。
上記の図を見ると、2002年と比較して2011年が11%上昇、2021年を見るとさらに24%上昇しています。労働人口の減少がさらに進行することで、さらなる人件費上昇も想定されます。
労働集約型産業である物流倉庫では、この人件費上昇が倉庫作業の費用に直結しています。倉庫労働力の確保および倉庫作業コスト上昇の抑制のためにも、DXをはじめとした倉庫作業の効率化に取り組まなければならないことがわかると思います。
さらにもう1つ物流倉庫作業に影響を与える変化が「納品の小口化」です。流通において、小さい荷物を多くの件数で納品する多頻度小ロット納品化の進行は、物流倉庫のピッキング、梱包(こんぽう)作業が増加することを意味します。同じ物量を出荷するとしても納品1件当たりの物量が減少することで、出荷件数が増加し、物流倉庫で行われるピッキング作業および梱包作業量が増加するという状況です。
つまり、市場に出荷する商品点数(売上)が変わらず、物流倉庫の作業量は増加する中で、今までと同じ作業方法を今後も継続する場合、作業量増加に対応するための工数を増やさなければ出荷できないことになります。工数確保のためには残業または人員の増加が必要になり、作業に必要な人件費が上昇することになるのです。
物流倉庫DXで効率化できる「4つのポイント」
このような物流倉庫環境の変化に対して検討されているのが、物流倉庫のDXです。DXと一言で言っても幅広く、物流情報の活用、機械導入、ロボット導入までがあります。また、その領域についても企業間情報に関与するものから、物流倉庫の一部の工程にとどまるものまで多種多様なのが、日本国内の物流DXの現状と言えます。
物流分野で取り組まれているDXの施策は下図のように分類して検討されます。
物流倉庫のDXでは作業工程別に4つの有効性が期待されます。
- 物流情報システム活用による情報処理業務の効率化
- マテリアルハンドリング導入で人が担う作業を代替する業務効率化
- ロボット導入で人が担う作業を代替する業務効率化
- AI活用による判断と照合業務の効率化
物流倉庫では、人が実行している業務を情報システムや機械、ロボット、AIに置き換えて、その業務の精度または効率を向上させられるかが、ソリューションなどを導入する判断基準となります。
【次ページ】物流DXが進まないワケ、カギは2つの弊害
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