- 2022/03/23 掲載
「法改正は急務」伝説の弁護士2人に聞く、「同性婚」議論進まぬ日本はどう見えるのか(2/2)
このような価値観は、企業の間ですでに幅広い賛同を得ています。オーバーグフェル裁判では、379名の雇用主と雇用主を代表する組織が、婚姻の自由をビジネスおよび経済的な観点から支持するアミカス・クリエ意見書(注2)を提出しました。日本の経済界もこの価値観の重要性を認識しています。
今日現在、日本で営業する国内外の企業を含む128の事業者が、日本における婚姻の平等を確立すべきという在日米国商工会議所の意見書に賛同を表明しています。この賛同は、「日本における同性カップルが婚姻に基づく利益を享受できないのは差別的であり違憲である」と判断した2021年の札幌地裁判決においても言及されています。
札幌地裁の判決は日本の同性婚事情をどう動かすか
──日本で婚姻の平等を実現する上で、この札幌地裁の判決はどのような意義を持つと思いますか?ウォルフソン氏:平等への道のりにおいて、今、私たちは大きな節目に立ってます。事実、あと少しというところです。日本の人々は、LGBTQの家族や友人、同僚がいることに気づき、一般の人々(世論調査によると80%が賛同)、企業(上記参照)、日本弁護士連合会、そして1つの裁判所が婚姻の平等を支持する声を上げました。
今必要なのは、国会が行動を起こすこと。つまり、より多くの人々が責任をもってこの問題に取り組めるように正式に法律を定め、日本における婚姻の平等を実現させることです。
ボナウト氏:札幌地裁は同性カップルとその家族に対して不公平な取り扱いがなされていることを認めました。法が同性婚を認めるまでは、誰もが当然に享受するに値し、かつ保障されていると札幌地裁が述べている「個人の尊厳」と「法の下の平等」を享受することはできません。だからこそ、法が変わることは急務なのです。
同性パートナーシップ制度の限界、遅れをとる日本
──2021年12月7日、小池百合子知事は東京都が2022年に「同性パートナーシップ」制度を開始すると発表しました。2015年以来、同性パートナーシップをある程度認める地方自治体の数は飛躍的に増え、現在では6県147市区町村となりました。これは人口の約46%をカバーしており、東京都が同制度を実施すればさらに約1400万人がカバーされます。相当大きな取り組みと思えますが、これでは足りない理由を教えてください。ウォルフソン氏:そのような制度により、同性カップルが一緒に賃貸借契約を締結したり、同性パートナーが入院した際に面会したりすることができるようになるなど、重要な便益を享受できることはとても喜ばしいことで、同性カップルの保護を世間が望んでいるという事実を反映するものです。同性カップル関係の認知を広げるものでもあり、これは大いに必要とされていることです。
ただ、このような地方自治体レベルの制度は、同性パートナーの死亡時の財産相続権や同性カップルの子どもの親権など、婚姻と同等の権利と利益を提供するものではなく、他国に類をみない状況です。
日本はG7の中で、同性婚を法的に認めていない唯一の国です(なお、認めている6カ国中5カ国はこれを婚姻の自由として認めています)。現在、31の国(総人口12億人超)が同性カップルの婚姻の自由を認めています。日本は遅れを取りつつあり、世界的な競争力が減り、国内的には不公平性と分断が増す結果となっています。
ボナウト氏:これらの制度については評価できるとしても、「婚姻」という言葉自体を含め、婚姻の保護に代替できるものではないのです。結婚ができるということは、カップルとその子ども、親族、そしてコミュニティにとってかけがえのないことです。同性カップルの婚姻の支援は、時間と経験とともに改善されてきたに過ぎません。オーバーグフェル裁判では、米国連邦最高裁が、LGBTQ、同性カップルは、婚姻と結びついた「一連の恩恵」から締め出されていると認めました。
このような婚姻そのもの、そして、それに伴う保護と責任の両方を認めないことは、同性カップルを傷つけ、侮蔑するものであり、「平等についての中心的な教訓」という憲法の違反となっています。すなわち、結婚する権利が認められない限り、LGBTQの人々は、社会の他の人たちと同等であることはありえないのです。
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