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8月30日、中国政府は未成年のオンラインゲーム利用を週3時間に制限することを発表した。若いユーザー層を抱えるゲーム関連企業にとっては非常に厳しい規制となる。中国のゲーム業界は、これまで圧倒的な資本力とノウハウを持つテンセントを中心に回ってきたため、「テンセント帝国」とも呼ばれる。だが、その構図が大きく変わろうとしている。転換点となったのが、miHoYoが提供するオンラインゲーム「原神」の世界的な大ヒットだ。いま、中国のゲーム業界に何が起きているのか。
国営メディアが「ゲームは精神アヘン」、政府は厳格規制発表
2021年8月3日、中国の国営メディアである新華社傘下の経済参考報が、「精神アヘンが数千億元の市場に成長」と題した記事を掲載した。
テンセントのロングヒットゲーム「王者栄耀」の名前を挙げ、「ゲームは『電子薬物』であり、未成年に悪影響を与えている」という内容だった。民営メディアではなく国営メディア筋の論評であったため、テンセントは素早く対応し、その日のうちに次のような対策を発表した。
- 2017年から実施していた、18歳未満の未成年がゲームをできる時間は「平日は1.5時間」「休日は3時間」という制限を、「平日1時間」「休日2時間」に強化。
- 未成年が年齢をごまかしてアカウントを作ったり、大人が作成したアカウントをSNSなどで購入する行為を監視し、不正なアカウントは停止する。
すると、不思議なことに経済参考報の問題の記事は削除された。そして、「ネットゲームが数千億元の市場に成長」というタイトルに修正され、刺激的な「精神アヘン」「電子薬物」という言葉が削除された状態で
再掲された。
この一連の出来事による影響で、テンセントの株価は一時20%も下落し、巻き込まれた形で「網易」(ワンイー、ネットイース)などのゲーム関連企業の株価も全面安の展開となった。
企業にとって苦しい状況はさらに続く。8月30日には、中国政府のコンテンツ管理部門である国家新聞出版署は「金、土、日、休日の20~21時までの1時間しか未成年にオンラインゲームサービスを提供してはならない」という規制を発表した。これにより未成年は、平日にゲームで遊ぶことができなくなる。ゲーム産業にとって非常に厳しい規制となった。
「テンセント帝国」はこうして作られた
中国のゲーム業界は、テンセントを中心に動いていて、「テンセント帝国」とも呼ばれる。ゲーム開発に必要な資金が年々膨張する中で、ゲームスタジオはテンセントから資金を得て開発を行い、テンセントはそのゲームを配信することによって大きな収益をあげている。
中国では、日本のような家庭用ゲーム専用機が大きな市場にならなかった。言うまでもなく、違法コピーがまん延してビジネスにならないのだ。長い間、任天堂のファミコンなどを個人輸入して、輸入したゲームカセットや違法コピーしたゲームカセットで遊ぶ時代が続いた。
1998年に、韓国のエヌシーソフトが画期的なゲーム「リネージュ」を開発した。リネージュのソフトは無料でダウンロードできるほか、雑誌付録のCDに無料で収録される。しかし、遊ぶにはサーバにアクセスをする必要があり、課金をしないと遊べない。オンラインゲームにすることで違法コピーの問題をクリアするとともに、大勢のユーザーが協力して遊ぶという新しいゲーム要素も生まれた。
同じ年にPC用メッセンジャー「QQ」を開発したテンセントが創業する。QQは、無料でチャットとIP通話ができることから、ピーク時には月間アクティブユーザー数8億人、同時オンラインユーザー2億人というSNSに成長していく。
そして2009年、テンセントのその後を決めるQQ上のゲーム「QQ農場」が登場する。畑を耕して、作物の種を植えると、実がなり、収穫をするという農場シミュレーションゲームだが、画期的な点がいくつもあった。
【次ページ】中国ゲーム市場の特徴、世界配信に挑むスタジオの出現
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