• 2021/06/28 掲載

160以上の企業・団体が「同性婚」賛同、共通して挙げる“企業視点のメリット”とは何か(2/2)

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160を超える企業・団体が賛同、「正のスパイラル」とは

 2018年9月に公表された上記の提言の賛同企業・団体は、1年後に56、2年後には倍増して108、2020年11月には「Business for Marriage Equality」という企業の賛同を可視化するための新たなイニシアティブが加わり、賛同企業・団体数が160を超えています。

 いずれの企業もほぼ共通して賛同の理由として、「社員の多様性の尊重」→「社員が本来の力を最大限に発揮できるインクルーシブなカルチャーの醸成」→「高いパフォーマンスの発揮」・「多様な思考が創造する柔軟かつ有益なアイデア」→「顧客の成長・発展に貢献」→「社会が直面する重要な課題の解決に貢献」という、ダイバーシティ&インクルージョンに立脚した正のスパイラルの存在を指摘しています。

 他方、制度がないため、同性パートナーを有する日本人が、米国、カナダ、台湾に流出し、また、LGBTQに対する法的保障がない不安から、家族などの心配・反対にあって、日本への転勤に踏み切れない海外のプロフェッショナル人材の存在など、制度がないための負のスパイラルもまた見えてきます。

 いずれの企業も同性パートナーを有する社員に、育児休暇や結婚祝い金など、企業の自主努力で行える範囲で、取り組みを進めていますが、「企業として独自の取り組みを行うだけでは、性的指向や性自認によって格差がない、より公正な社会は実現できない」ことに気づきはじめています。

図解:データで見る、世界における日本の位置づけ

 ここで、日本が他の先進経済国と比較して本当に例外少数派なのか、データに基づき、確認したいと思います。日本のみがG7諸国で同性パートナーの関係を保障していないこと(イタリアは法的パートナーシップとして、その他の国はすべて婚姻として保障)はすでに広く知られています。

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G7での比較

 G20では、欧州連合を除く19カ国中、同性間の関係を法的に保障していないのは、中国・ロシア・インド、中東のトルコ・サウジアラビア、アジア圏のインドネシア・韓国・日本のみで、欧州・南北アメリカ圏諸国は同性間の関係を法的に保障しています。

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G20での比較

 OECD加盟国はどうでしょうか? OECD加盟国38カ国中、同性間の関係を法的に保障していないのは、韓国、ラトビア共和国、スロベニア、ポーランド、スロバキア、トルコ、リトアニア共和国のみです。

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OECD加盟国での比較

 さらに切り口を変えてGDPでみてみましょう。GDP上位20カ国をみると、中国・インド・韓国・ロシア・インドネシア・サウジアラビア・トルコを除く世界GDPの約46%を占める国々で、同性間の関係が法的に保障されています。

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GDP上位20カ国(2020年)での比較

 なお、2020年にOECDが公表した報告書「Over the Rainbow? The Road to Inclusion」は、LGBTIの権利保障に関するOECD諸国の法整備状況を調査・数値化したものですが、同報告書によれば、調査対象35カ国中、日本は34位(最下位はトルコ)に位置づけられているという事実にも留意が必要です。

注:上記で示した「同性間の関係を法的に保障している」とは、「婚姻またはパートナーシップ制度により法的に保障している」の意味とする。各国の法的保障の有無は、「ILGA World」公表の「State-Sponsored Homophobia 2020: Global Legislation Overview Update (Geneva: ILGA, December 2020)」に準ずる。

足踏み状態の日本、企業の声が社会を動かす

 2000年以降、世界の先進国はLGBTQの権利保障に大きく舵を切ったといえます。日本は未だ法制度面では完全な足踏み状態にあるのみならず、自民党の理解増進法案の議論をみて後退するのではないかという懸念さえ聞こえてきます。

 少子高齢化などに伴い、日本経済は必然的にグローバル化し、DX、AIなど経済の仕組みが質的に大きく変容を遂げる中で熾烈な人材競争が展開しています。ダイバーシティ&インクルージョンが、単なる理念や企業の自主努力にとどまれば、日本はますます他国に遅れをとる重大かつ現実の懸念があります。

 2015年に同性婚を実現した米国では、全米で同性婚の可否を決定する最高裁判断を迎えるにあたって、379社の企業が最高裁判所に同性婚を求める上申書を提出しました。2017年12月に同性婚が実現したオーストラリアでは、851の企業・合計2229の団体が、雌雄を決する国民投票において、同性婚賛同の声をあげました。いずれの場合も企業は重要なステークホルダーであり、企業の声が社会を大きく動かしました。

 最後に、ある企業の賛同メッセージで本稿をしめくくりたいと思います。

「企業として独自の取り組みを行うだけでは、性的指向や性自認によって格差がない、より公正な社会は実現できません」。「(当社で)働くLGBT等の性的マイノリティだけでなく、その家族や友人たちを勇気づけ、世論を変え、社会を変える力となれるよう働きかけていきます」。
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