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  • 2020/12/10 掲載

仮想デスクトップ(VDI)比較選定のポイント、パーソル事例にみるワークスタイル変革

DaaS(Desktop as a Service)への評価は?

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働き方の多様化に伴い、さまざまなITソリューションが提供されてきた中で、仮想デスクトップインフラストラクチャ(VDI)は多くの企業が導入し、さまざまな形で利用されている。コロナ禍によって人々のワークスタイルはさらに大きく変化し、VDIもより注目されている。リモートワークを支えるITソリューションや実践事例とはどういうものなのか、VDIはじめ、DaaS(Desktop as a Service)などクライアント仮想化技術に詳しいIDC Japanのシニアマーケットアナリスト 渋谷寛氏とVDIやVPN導入などで全社的な働き方改革を支えてきたパーソルホールディングスのグループIT本部 本部長 内田明徳氏に話を聞いた。
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クライアント仮想化のキープレイヤー(後ほど詳解します)
(出典:IDC Japan)

コロナ禍で企業のワークスタイルはどう変わったか

 新型コロナウイルス感染症の拡大による緊急事態宣言で出社ができなくなったため、リモート環境の構築に奔走した情報システム部門の方は多いのではないだろうか。

 IDC Japanのシニアマーケットアナリストである渋谷寛氏は、「IDCの調査では、首都圏の企業の約60%が在宅勤務に着手したというデータがあります。しかし、そのうち25%は、緊急事態宣言解除後に出社して勤務するスタイルに戻ったそうです。一般的には、まだリモートワークのハードルが高いことがうかがえます」と説明する。

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IDC Japan
シニアマーケットアナリスト
渋谷寛氏

 そんなコロナ禍に、実際の企業の現場ではどのようなことが起きていたのか。総合人材サービス企業のパーソルホールディングスでグループIT本部本部長を務める内田明徳氏は次のように語る。

「当社では、日本の労働人口が減少するという課題がある中で、いかに生産性を高め、成長していくかという命題にコロナ前から取り組んできました。グループビジョンに『はたらいて、笑おう。』を掲げる私たち自身が世の中の新しい働き方をリードする存在として、たとえば場所にとらわれない柔軟な働き方への取り組みなどを少しずつ進めてきました」(内田氏)

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パーソルホールディングス
グループIT本部
本部長
内田明徳氏

リモートワーク環境の早期構築が求められた

 そのような中、今年の4月に緊急事態宣言が発令された。パーソルグループのビジネスは人材派遣や人材紹介など、「人に会う」ことがベースにあるものが多い。それだけに、顧客や派遣スタッフ、転職希望者などと対面で会わずにリモートへの対応へと変更していく必要があった。

 また、パーソルグループはM&Aで拡大してきた企業グループゆえに、擁する会社数が多く業態も幅広い。そのため、常駐する顧客先から社内ネットワークにアクセスする社員も多くいる。また、ダイバーシティの観点から、たとえば育児や介護で出社できない社員が自宅PCから仕事ができる環境を整備しようとする動きもあった。

「もともと2020年はオリンピックイヤーで、開催時期には東京の交通機関の混雑が予想されるため、6月コロナ禍より前から出社せずに自宅からリモートで働ける環境の整備を進めていました。2019年にVDIを刷新し、6月に向けてVDIを拡張し、またVPNも増強する計画でした。しかし、コロナ禍に対応するため、急遽プロジェクトを組み替え、ひとまずリモート環境の構築に必要な対応だけを優先的に行ったのです」(内田氏)

 その結果、現在VPNに関しては、元々数百人しか同時接続できなかったものが、今回の対応で約2万人が同時接続できるようになった。VDIも、1000同時接続から、対応後は2000同時接続できるようになった。

 さらに、リモートワークにおいてカギとなるWeb会議ツールのMicrosoft Teamsも、5月には全社へ展開。当初はネットワークに負荷をかけないために音声だけで使用していたが、ネットワーク増強を進め、現在は約1400人が顔を見て話せる環境になっている。

「グループ各社から『リモートで仕事ができる環境を早く整備してほしい』という強い要請を受け、われわれもそれに応えようとしてきました。緊急事態宣言の解除後も、この流れを継続していこうと動いている形です」と内田氏は話す。


そもそも仮想デスクトップ(VDI)とは?

 ここで、VDIとは何かをあらためて押さえておこう。渋谷氏は、クライアント仮想化の基本的な考え方をこのように説明する。

「クライアントのPC、つまりハードウェアから、OS/アプリケーション/データなどの“リソースを分離する”というのが基本的な考え方です。その切り離したリソースをサーバー側で集約・仮想化するというもの。そして、集約・仮想化したリソースをクライアントデバイスに“配信”するわけですが、画面イメージを転送するだけなので『データがデバイスに残らない』ことがポイントです」(渋谷氏)

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クライアント仮想化の構造
(出典:IDC Japan)

 その「配信」の仕方はいくつかあり、「アプリケーション仮想化」「プレゼンテーション仮想化」に並ぶやり方として「デスクトップ仮想化(VDI)」がある。「ただし、クライアント仮想化全般がVDIと呼ばれるケースもあり、話をする際に言葉の定義を統一したほうがよい」と渋谷氏は注意を促した。

 本来、クライアント仮想化は社内のLAN/WAN系で使うのが主流だった。そこに、社外からも使用したいニーズが出てきたため、インターネット経由で使うケースが増えてきた経緯がある。VDIとVPNはどちらもリモート環境におけるセキュリティ対策として語られることが多い。しかし渋谷氏は、「VDIにその側面がないわけではないが、どちらかというと多数のクライアント端末を管理する際に、サーバやデータセンター側でまとめて管理しやすい仕組みをつくることが主眼だった」と説明する。

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クライアント仮想化による配信の仕組み
(出典:IDC Japan)

 社内でVDIを使用するケースというのは、元々はアクセス権限のコントロールが目的だった。また、数多くのマスターイメージを管理しなければならないが、VDIを使用する場合はサーバー側で処理すればよいため、キッティングが不要で運用負荷の軽減にもなる。

 内田氏もこの点に同意しつつ、「端末が、たとえばウイルスに感染した際に、これまでなら端末を回収してフォレンジック調査をかけていました。VDIなら、そのようなケースでもバーチャルに切り離せばよいだけなので、セキュリティ観点でもメリットがある」と現場の視点から補足した。

【次ページ】クライアント仮想化の市場動向と5年後の予測
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