0
会員になると、いいね!でマイページに保存できます。
人口減少と地方経済の疲弊が地方自治体の財政を苦しめる中、都道府県知事の約6割を中央官僚出身者が占めている。今年行われた各地の知事選挙でも官僚出身の知事候補が相次いで当選したが、選挙戦では国とのパイプの太さを競い合う場面が相次いで見られた。近畿大法学部の丹羽功教授(政治学)は「官僚出身の知事は堅実に地域課題に取り組み、成果を出すという長所を持つ。そうした行政能力が官僚を知事に擁立する一因」とみている。財源を国に依存せざるを得ない地方の苦しい台所事情が、その傾向に拍車をかけていると考えられそうだ。
島根県知事選で元官僚同士が激しい舌戦
「国との太いパイプを生かします」。故竹下登元首相を中心に竹下王国と呼ばれる保守陣営の固い結束で知られた島根県で、44年ぶりの保守分裂となった4月の知事選。無所属4新人が立候補する中、激戦を繰り広げた保守系2陣営からたびたびこの言葉が飛び出した。
舌戦を展開したのは、竹下亘衆議院議員をはじめとする自民党の国会議員らが擁立した元総務省消防庁次長の大庭誠司氏=自民推薦=と、竹下王国に反旗を翻して自民党県議らが担ぎ出した総務省消防庁国民保護室長の丸山達也氏。ともに総務省で同じ釜の飯を食べた同僚だ。
両氏とも県政最大の課題に人口減少を挙げ、政策に大きな差が見えなかった。丸山陣営は国とのパイプをアピールする一方で、立憲民主党などの県議の支援も取り付けて「オール島根」を強調したが、大庭陣営は中央官僚時代の経歴の差を有権者に訴えた。
有権者からすると、どちらのパイプが太いかを競い合っているように見えたかもしれない。結果は大庭氏約12万票に対し、丸山氏約15万票。約3万票差の接戦の末、丸山氏が大庭氏を振り切った。
山梨、徳島、岩手の知事選も官僚出身者が当選
今年行われたその他の知事選でも、中央官僚出身候補の躍進が地方で目立った。1月の山梨県知事選は新人で財務省出身の長崎幸太郎氏、4月の徳島県知事選は現職で総務省出身の飯泉嘉門氏、9月の岩手県知事選は現職で外務省出身の達増拓也氏が選挙戦を制している。
7日告示の高知県知事選では、財務省出身の尾崎正直知事が出馬を見送ったが、後継者として総務省出身の浜田省司氏が立候補し、野党統一候補の松本顕治氏と舌戦を繰り広げている。
このうち、現職を破って初当選した長崎山梨県知事は選挙戦のさなかから国とのパイプの太さを強調していた。4月の記者会見では、国から2019年度予算の公共事業費が内示されたのを受け、山梨県への配分額が前年度を24.1%上回ったことを強調した。
記者から国とのパイプの効果かどうかを問われたのに対し、長崎知事は「その第一歩だ。今後も山梨の事業を政府に説明し、理解を求めていく」と述べ、あらためて太いパイプを持つことを示唆した。
【次ページ】47都道府県知事の経歴一覧表、官僚出身知事が近年増加しているワケ
関連タグ