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  • 2019/10/01 掲載

徳島見送りはわかっていた? 全面移転は京都のみ。「中央省庁の地方移転」進まぬワケ

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安倍内閣が進めてきた中央省庁の地方移転で、結論が出ていなかった消費者庁の徳島県移転が見送られた。徳島県には代わりに常設の調査研究拠点が設置される。結局、全面移転が実現したのは京都府へ移る文化庁だけで、内閣の試みは官僚の抵抗を突破できず、絵に描いた餅に終わった格好。奈良県立大地域創造学部の下山朗教授(地方財政論)は「個別省庁の機能を移すことに議論が集中し、中央省庁分散の必要性に関する議論が置き去りにされたように見える。それでは移転しないという結論が出るのは予想通りではないか」とみている。
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消費者庁が2020年度から常設拠点を置くことになった徳島県徳島市の徳島県庁。全面移転は見送られた
(写真:筆者撮影)

全面移転の代わりに、徳島に常設機関を設置

 「国会対応などを東京で行うという方針に基づき、徳島に常設機関となる消費者庁新未来創造戦略本部を置く」。徳島県庁で記者会見した宮腰光寛消費者行政担当相(当時)は、消費者庁の徳島県移転を見送る意向を正式に表明した。

 新未来創造戦略本部は徳島県庁に試験的に設置している消費者行政新未来創造オフィスの50人体制を80人に増員し、消費者関係の調査や国際共同研究を進める。発足は2020年度からで、統括する職員を参事官級から審議官級に格上げする。消費者庁の働き方改革の拠点となる機能も持たせる。

 消費者庁は徳島県から誘致の提案を受け、2016年に徳島県神山町で試験業務を実施したあと、2017年に消費者行政新未来創造オフィスを設置した。その際、徳島県を実証フィールドとする研究プロジェクトに取り組むとともに、3年後をめどに移転の可否について判断するとしていた。

 宮腰消費者行政担当相は「2016年の政府決定で国会対応を東京で行うことが決まっている。徳島に限らず、地方で国会対応は難しい」と述べ、移転見送りが既定路線であったことを示唆した。

 これに対し、誘致側の飯泉嘉門徳島県知事は記者会見で「徳島へ移すことで消費者庁を消費者省に格上げし、他省庁と対等に渡り合える組織にしたいという思いがある。全面移転を求める姿勢は変わっていない」と述べた。徳島県消費者くらし政策課は「5Gの登場で時代が変わる。全面移転はあきらめていない」としている。



京都府など8道府県が7機関の誘致を提案するも…

 中央省庁の地方移転は安倍内閣が看板政策に掲げる地方創生の中核と位置づけられ、2015年に各都道府県から誘致提案を受け付けた。地方移住や民間企業の地方移転を促すうえで政府が範を示すのが狙いだ。

 自民党政権は過去にも政府機関の地方移転を模索したことがある。竹下内閣時代の1980年代、政府機関の地方移転を実施し、約70機関が東京を離れた。しかし、官僚の抵抗を抑えきれず、神奈川県や埼玉県など首都圏内の移転が大半を占め、首都圏を離れたのはわずか3機関にとどまっている。

 安倍内閣にとって地方創生は看板政策。「ふたを開けて何もなかったのでは、内閣の本気度が問われ、政権基盤を揺るがせかねない」(四国選出の自民党国会議員)として、かつての二の舞にならないよう結果を残したいところだった。

 地方から誘致提案があったのは、徳島県の消費者庁、京都府の文化庁のほか、和歌山県の総務省統計局、大阪府の中小企業庁、大阪府と長野県の特許庁、三重県の気象庁、北海道と兵庫県の観光庁。有識者会議で審議の結果、消費者庁と文化庁、総務省統計局の移転が議論の対象になった。

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文化庁が2021年度までに移転することが決まっている京都市上京区の京都府警本部本館
(写真:筆者撮影)

 文化庁の移転は国内の文化財の多くが関西にあることが理由に掲げられたが、消費者庁や総務省統計局の移転については唐突感が否めず、東京一極集中の是正ばかりが議論の前面に出ていた。

 このうち、消費者庁は2009年発足と歴史が浅く、職員や関連団体、族議員の数も他の省庁より少ない。中央省庁の中でも力が弱いことから、白羽の矢が立ったという見方が上がっていた。

【次ページ】官僚は激しい抵抗、地方省庁地方移転の進捗まとめ
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