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  • 2019/07/02 掲載

AIを使いたい小売・流通業へ、データサイエンティストが教える機械学習活用法

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人工知能(AI)の概念の一部であり、トレーニングすることでコンピューター自身にタスクを学習させる「機械学習」。過去のデータからパターンを見つけ、予測分析に生かすことのできるこの技術は、さまざまな業界で活用されています。本稿では、DataRobotで小売・流通業をメインに担当するデータサイエンティスト・中野高文氏が、5つの業務にわたる事例を基に解説します。「小売×機械学習」の可能性とは?
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小売・流通業においてどのように機械学習の活用ができるのか
(出典:Photo/Getty Images)


小売・流通業で機械学習はどう使われるか?

 人口減少、少子高齢化の影響で、日本の小売・流通業の市場は今後縮小していくと言われています。一方で、買い手のニーズは多様化しており、圧倒的な品ぞろえを持ち利便性の高いECでの購入にシフトしています。海外に目を向けても、ニーズの変化・多様化に対応できていないメイシーズ(米)やシアーズ(米)といった伝統的な百貨店が閉店し、アルディ(独)などのディスカウントストアやアマゾンやデジタルネイティブブランドなどのECが台頭するといった急速な変化が見られています。

 買い手のニーズの多様化に伴い、それを把握し的確なコミュニケーションを行うために機械学習を活用する企業が増えています。ECではCRMデータ、リアル店舗でもポイントカードやアプリにひもづいたID-POSデータを使って、高精度な機械学習モデルが生成可能です。

 マーケティングをマーケッターの経験や勘に基づいて行うのではなく、機械学習モデルの予測を活用することで商品を本当に必要としている顧客に的確なタイミングで推奨する1to1マーケティングが可能になります。

 また食品廃棄問題に代表される廃棄ロスや、品切れによる機会ロスを防ぐためにより正確な需要予測が必要とされています。機械学習を用いることで、人に依存せず高精度な需要予測が可能になるのです。

 それではこのような小売・流通業での機械学習活用事例を、「仕入れ」「広告宣伝」「販売」「顧客サービス」の4つのビジネスプロセスに分け、各プロセスでの活用方法を見ていきましょう。

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4つのビジネスプロセスにおける機械学習の活用方法

【仕入れ・在庫】需要予測

 仕入れのプロセスで機械学習を活用した代表的な事例として先に挙げた需要予測があります。需要予測は、企画・製造の段階(約1年前)、仕入れ前の段階(約数ヶ月前)、倉庫から店舗に発送する段階(約1週間前)など、複数のタイミングにわたり行われます。一般的に、予測する未来が遠いほど予測の難易度は上がりますが、用途に則した時点の未来を予測するモデルが必要です。

 不良在庫が多ければ、倉庫のコスト増、割引・廃棄による売上減少、キャッシュフローの悪化などマイナスの影響があります。逆に在庫が少なければ、販売機会の損失につながります。つまり在庫は収益に直結する問題です。正確な需要予測ができれば在庫の最適化が可能になります。

 機械学習を使った需要予測のアプローチでは、過去のトレンド、商品が発売されてからの期間、商品のプロモーション(CM)、商品の割引率、店舗での配置、カレンダー(土日、イベント)などのデータを使います。

 それらのデータを利用した機械学習モデルでは、これまでのルールベースや統計的なモデルでは実現できなかった、複数の要素を考慮した正確な販売数の予測が行えます。その販売数予測とモデルの精度に基づいて計算された安全在庫を使って適切な量の発注を行い在庫が最適化されます。

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「需要/売上予測」での機械学習活用

 実際、あるアパレルチェーンでは、店舗・商品単位ごとの需要予測に機械学習を取り入れたところ、以前の予測モデルに比べて約20%の精度向上が見られ、在庫が最適化されました。

【広告・宣伝】出稿量予測とターゲティング

 リアル店舗ではチラシ配布やテレビCMなどのマスマーケティング、ECではWeb広告が主流ですが、機械学習はどちらの領域でも活用されています。

 たとえばマスマーケティングでは目標とする売上を達成するために最適なテレビCM出稿量がわからないという問題があります。

 そこで媒体ごとの出稿量などを変数として売上を予測する機械学習モデルを生成します。それを使ってさまざまな出稿量のケースで売上をシミュレーションするのです。シミュレーションに基づいてRoIが最大化される出稿量を特定し、最適化します。

 マーケティングを行うセグメントを特定するターゲティングにおいては、リアル店舗の場合、チラシの配布エリアやDMを送付するセグメントの特定に使われています。

 ECの場合、CRMの購買履歴、Web訪問履歴などのデータから購入可能性の高い人を特定し、メールやオンライン広告配信を購入確率の高い人だけに配信することで、パフォーマンスの高いマーケティングが行われています。

 DMの配信事例では日本直販で機械学習を活用し売上50%増を達成するなど大きなインパクトを残しています。

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「ターゲティング」での機械学習活用

【次ページ】「販売」「顧客サービス」「卸売業」での活用法、機械学習に取り組む心得
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