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電子化の波は行政手続にも及んでいる。平成30年度税制改正では、会計業務や給与・労務業務で電子化に関する指針が示されたが、こうした変革により、「企業においても従来の紙を前提としたバックオフィス業務が変わろうとしている」と話すのが、弥生 代表取締役社長 岡本 浩一郎氏だ。2020年代に迎える業務の“大転換期”に企業はどう備えるべきか、岡本氏に聞いた。
2020年代に予定される大変革とは
平成30年度税制改正によって、行政手続きの電子化について明確な指針・施策が示されたが、これについて「特に顕著なのが、電子化に関する動きが明確になった点だ」と岡本氏は述べる。
具体的には、大法人(資本金の額等が1億円を超える法人)の電子申告が2020年度から義務づけられる。これまでも、電子申告は「推奨」されていたものの、これが「義務」となり、より強制力を持つよう変更された。
また、個人事業者の会計業務では、2020年度より青色申告特別控除が見直される。基礎控除が10万円増額されるのに対し、青色申告特別控除が10万円減額される。しかし、電子申告を行えば、特別控除分の10万円は減額されないため、「個人事業主にとっては、電子申告の税務上のメリットが明示された」と岡本氏は話す。
そして、企業の給与・労務業務では、年末調整業務の電子化が大きなポイントだ。2020年度より、保険料控除証明書などの年末調整書類の電子データによるやり取りが可能になる。
「企業にとっての業務が変わるという意味では、この年末調整業務の電子化が最もインパクトが大きいといえるでしょう」(岡本氏)
年末調整業務は、本来、従業員が個人で行うべき納税申告を、事業者が代わって行うものだ。これまで紙による大量の事務処理が発生する業務を企業が代行することは、行政、従業員双方にとってメリットがあったが、業務の電子化が進み、給与支払いデータが電子化され、クラウド上に集約されるようになれば、いずれ行政にこれらを電子データのまま報告するだけで事業者の手続きが完了し、年末調整業務を企業が行わなくても良くなる時代が到来すると岡本氏は述べる。
海外では、納税や年金の申告手続の電子化が進んでいる。たとえば、オーストラリアでは2018年7月より、シングルタッチペイロール(Single Touch Payroll)とよばれる制度が、従業員数20名以上の企業を対象に開始された。
これは、国税局への給与支払報告を電子化するもので、従業員へ給与を支払ったと同時に、業務ソフトを通じて国税局に給与情報が報告される仕組みだ。
「この制度は英国のRTI(Real Time Information:リアルタイム給与情報申告)にならった制度だといわれ、給与を支払った事実を、支払ったタイミングで、電子データで報告してくださいというのがポイント。今の日本は、1年に1回、紙または電子的に報告することになっていますが、行政側で、給与支払いの事実がデータとして把握できるようになるメリットから、日本でも将来、こうした制度が導入されることが考えられます」(岡本氏)
電子化によって可視化が可能になり、社会全体が効率化していく
こうしたさまざまな行政手続が電子化されると、これまで紙ベースでやり取りされていた申告書類が電子化し、デジタルデータとして蓄積、収集が可能になる。
これによって行政側には、従業員に支払った給与や源泉徴収額などの情報がリアルタイムに把握できるようになり、行政手続の効率化が期待できる。また、手作業による作業の抜け、漏れといったこともなくなる。
事業者側には、もちろん、膨大な年末調整業務から開放されるメリットがある。岡本氏は、行政手続の「透明性の向上」と「社会システムの効率化」というポイントを挙げる。
「企業は、給与に応じた年金保険料を当局に納める必要がありますが、先述のオーストラリアの例では、給与の支払い情報を電子的に報告することで、当局は納付すべき年金保険料をすぐに把握することができます。これと、実際の納付状況を突合することで、未払いの状況をすぐに把握することができるのです」(岡本氏)
電子化によって収めるべき税金や保険料を誰が納め、誰が収めていないか、透明性が高まり、追跡可能になることで、不正が減り、社会制度の公平性が高まる効果が期待できるのだ。
そして、「効率化」については、単なる年末調整業務の効率化にとどまらず「社会システム全体の効率化」が期待できる。
「行政に対して紙の書類で提出していたデータが電子化することで、リアルタイムでの可視化が可能になり、これまでの紙をもとにしたアナログの業務の流れがゼロベースで見直され、ひいては社会システム全体が効率化されていきます。もちろん、すぐには変わらないと思いますが、2020年代を転換期として、確実にそちらの方向に進むと思われます」(岡本氏)
【次ページ】電子化による効率化に成功した企業と、そうでない企業の「差」が広がっていく
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