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サイバー攻撃は国家安全保障にも関わる重要な問題です。サイバー空間を安定して利用するために、国際行動規範案の議論などで協力が必要なためです。今回は、日本がインドやASEAN諸国とどのように連携し、「サイバーセキュリティ外交」に取り組んでいるかを解説します。
インドとサイバーセキュリティ協力を結ぶ意義
ここ10年間、日本とインドは関係を強化しており、その中でもサイバーセキュリティは両国連携における焦点となっています。
両国の協力を振り返ると、2006年に安倍晋三首相とマンモハン・シン首相が、文化、防衛、安全保障、技術・貿易に関して協力すべく、「
日インド戦略的グローバル・パートナーシップの強化」の共同声明に署名しています。
その後安倍首相は、2007年のインド国会において「
二つの海の交わり (Confluence of the Two Seas)」と題した演説を行いました。両首脳は「日本とインドの関係こそは世界で最も可能性を秘めた二国間関係であると、心から信じている」と強調しました。
2007年以降、日本とインドは毎年、外相間で戦略対話を行っています。2012年4月の
第6回日・インド外相間戦略対話では、サイバー攻撃は国家安全保障にも関わる重要な問題であり、サイバー空間の安定利用の確保上、国際行動規範案の議論などで協力が必要であるとして、サイバーセキュリティに関する日インド間の二国間協議の開始が合意されました。
その7カ月後の2012年11月には、東京で
第1回日インド・サイバー協議が開催され、国家安全保障と経済の観点からサイバーセキュリティ問題やサイバー犯罪について議論されました。
日本側からは、サイバー政策担当の特命全権大使をはじめとする外務省、内閣官房、警察庁、総務省、経済産業省、防衛省の関係者が、インド側からは外務省特別次官をはじめとする関係者が出席しました。これは、サイバーセキュリティ協力の重要性と本協力に対するさまざまな省庁の関心の高さを裏付けています。
2017年8月には、
第2回サイバー協議が開催され、サイバーセキュリティ政策、サイバー脅威の軽減における二国間及び多国間協力について話し合われました。
両国政府は、2018年に、東京で第3回サイバー協議を開催することで合意しており、サイバーセキュリティに関する二国間の議論継続への強い決意が示されています。
重要インフラの防御でも協力
両国が次に進めるべき協力分野は、重要インフラの防御です。インド政府は「デジタルインド計画(Digital India)」などでエネルギー、IT、交通インフラ分野の開発を進めています。
日本も政府開発援助(ODA)を通じてインドのビジネス環境、鉄道、下水道などの開発支援を続けています。
重要インフラは安全保障、経済、福祉の安定性・発展の要石であり、重要インフラの運用での産業界の果たす役割の大きさを考えると、官民でサイバー脅威情報を共有し、サイバー攻撃の阻止をしていかなければなりません。
弊社パロアルトネットワークスが2017年に行った調査レポート「
The State of Cybersecurity in Asia-Pacific (アジア太平洋地域におけるサイバーセキュリティの現状)」では、政府とのサイバー脅威情報共有の重要性を認識している組織の割合がアジア太平洋で83%にのぼっている一方、業界内で情報共有を行っている組織はわずか44%という結果でした。
しかし、サイバー攻撃の成功を阻止するには、サイバー攻撃に関する情報を共有しあい、その情報をサイバー防御のアクションに役立てていくことが不可欠です。
両国の産業界は、すでにサイバーセキュリティ協力に関心を示しています。2007年に始まった「日印ビジネス・リーダーズ・フォーラム」の
2013年の共同報告書では、サイバーセキュリティ分野での両国の連携拡大が求められました。
同報告書では、二国間のサイバーセキュリティ連携が必要とされる分野は特定されていませんが、上述のとおり、日印のサイバーセキュリティ協力に重要インフラの保護を含めていく必要があるでしょう。
【次ページ】ASEANのサイバーセキュリティ対策は次のステージへ
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