- 会員限定
- 2017/10/16 掲載
イスラエルが「サイバーセキュリティ大国」となった背景にある「8200部隊」の影
イスラエル国防省のサイバー軍:8200部隊
チェックポイント(Check Point)、パロアルトネットワークス(Palo Alto Networks)、インパーバ(Imperva)、サイバーリーズン(Cybereason)、アイシーキュー(ICQ)──これらの企業はある共通点がある。日本でもなじみのあるセキュリティベンダーの名前が含まれているが、上記の企業はすべて、設立・創業、あるいは幹部社員やCTOに、「8200部隊」の出身者が関わっている。8200部隊(Unit8200)は、アメリカでいえば国防総省の下部組織であるNSA(National Security Agency)に相当する、イスラエルのサイバーセキュリティ機関である。
名前からイスラエル軍の一部隊のようだが、イスラエル軍とは別組織となる。組織の規模は数千人といわれ、エルサレムの南100kmほど、ベエルシェバからは30kmほどにあるネゲヴ砂漠に拠点があるが、当然Googleマップには載っていない。
サイバー攻撃の防御や、ときには他国へのサイバー攻撃も
イスラエル軍直属の組織・部隊ではないが、軍との関係は強く、国や軍に対するサイバー攻撃の防御や、ときには他国へのサイバー攻撃も実施している。2010年にイランの核開発施設を狙ったとされるStuxnet(スタックスネット)は、この8200部隊が開発したマルウェアによって実行されたと言われている。
サイバー防御だけでなく諜報活動や攻撃も行うという非常にものものしい部隊だが、イスラエル産業界にとってはなくてはならない存在でもある。8200部隊は、徴兵制を利用して人材を確保している。そこでサイバーセキュリティやハッキングについて高度な訓練を受け、実践・実戦に配備される。
8200部隊で5年、10年とキャリアを積んだ人材は、退役して起業したり、関連企業に好待遇で迎えられたりしている。冒頭で列挙した企業がそれらだ。特にサイバー戦の最前線で培われたハッキング能力やスキルは、高度な防御技術にも直結するため、先端セキュリティソリューション、コンサルティング、SOC、フォレンジックと、世界中の国や企業からニーズがある。
【次ページ】 機密保持より人材の入れ替えを重視。オリンピックを控えた日本はイスラエルを頼らざるを得ない?
関連コンテンツ
関連コンテンツ
PR
PR
PR