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  • 2017/12/26 掲載

南アフリカが「スマートシティ」推進、ケープタウン、ヨハネスブルグに注目

フロスト&サリバン連載 ~ICTとの融合で特定の産業がどう変化するか~

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「アフリカ」といえば「発展途上の国々」というイメージが強い。しかし、そのアフリカでいま急速に進んでいるのが都市部への人口集中と「スマートシティ化」だ。ICTの進化によって、アフリカの各都市で高度にデジタル化・ネットワーク化された交通インフラや政府機関、医療機関、エネルギーインフラが着々と発展を遂げつつある。フロスト&サリバン ジャパン 成長戦略コンサルティングマネージャの伊藤祐 氏が「アフリカのスマートシティ化」について解説する。

執筆アシスタント:フロスト&サリバン ジャパン 田中 光

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いまアフリカでは、都市部に急速に人口が集中している。それにともなって「スマートシティ」に注目が集まっている
(© chombosan – Fotolia)


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急速に都市化が進むアフリカにはビジネスチャンスが

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 アフリカでは現在、急速な都市化が進んでいる。2030年までに3億5,000万人以上(全体の約50%の人口)が都市部に移住すると予想されている。

 この都市人口の上昇により、アフリカの各都市には、適切な住宅サービス、社会サービス、医療サービス、エネルギーを提供しなければいけないという課題が生まれている。

 これらの課題は、ビジネスチャンスでもある。デベロッパー、医療サービスプロバイダー、都市計画コンサルタント、ソフトウェアベンダーなどがアフリカに熱い視線を送っており、実際に動いているプロジェクトも少なくないのだ。

 一方で急速なインフラ整備には大きな投資が伴うため、投資効率の極大化を目的として、アフリカの主要都市にスマートシティの多くのコンセプトが適用されようとしている。

 では、具体的にアフリカではどのような「スマートシティ化」が進んでいるのか。スマートシティに関する概要について解説した後、具体例を見ていきたい。

スマートシティとは? スマートシティを構成する8つの要素

 フロスト&サリバンは、スマートシティの構成要素として次の8つを定義し、これらを有している都市を「スマートシティ」と呼称している

1. スマート政府:
さまざまなインセンティブや助成金を自ら発案し、市民のQoL(Quality of Life)向上を念頭に置いた各種デジタル施策を開発、実施、主導できる政府機関のこと。

2. スマート市民:
デジタルテクノロジーを通じて日々の生活の向上に取り組み、社会への貢献意欲が高い市民のこと。

3. スマート医療:
Eヘルスやモバイルヘルスソリューションを使った先進的な医療イニシアティブのこと。

4. スマートエナジー:
IoTやビッグデータアナリティクスを活用することで、エネルギーの需要供給状況をタイムリーに把握し、効率よくエネルギーを生産・配分すること。

5. スマートテクノロジー:
他の構成要素をサポートするために使われるテクノロジー。高速ワイヤレス通信やIoTセンサー、収集データを一覧化できるプラットフォームなど。

6. スマートインフラストラクチャ:
自動化・効率化された輸送ネットワーク、通信、水道管理、エネルギー網など、各種都市機能を円滑に管理するインフラストラクチャのこと。

7. スマートビルディング:
IoTを活用して建物内の状況をモニターし、エネルギー効率の最大化とエコ化を両立しているビルのこと。

8. スマートモビリティ:
車載デバイス間における通信機能や、AIを用いたドライバーサポート機能を搭載したモビリティのこと。

 スマートシティの割合は、依然、欧米が多くを占めているが、実はアフリカにもスマートシティの波が押し寄せている。次に、上記の構成要素を有しているアフリカのスマートシティを紹介していく。

ヨハネスブルグ:「犯罪都市」がデジタル人材育成とスマートヘルスケアに注力

画像
ヨハネスブルグの概要

 南アフリカ共和国の主要都市であるヨハネスブルグは、犯罪率が非常に高い都市として悪名高い。しかし、その一方でスマート化に力を入れている都市でもあることはあまり知られていない。

 ヨハネスブルグでは、アパルトヘイト政策が全面廃止された後、アフリカーナー居住区に多くのアフリカ系カラード(有色人種)が移住した。しかし、多くのカラードが職を得ることができなかったため、一部の失業者により犯罪が多発し、市内の治安が極端に悪化した。よって、依然として犯罪都市の印象は強い。

 しかし、そのような状況下にある一方、白人や一部の時代の流れにうまく乗ったカラード達は、最も危険なダウンタウンから10キロ程度離れたサントン地区に移住した。現在サントン地区は経済の中心となっており、スマートシティとして発展を続けている。特にヨハネスブルグが力を入れているのは、「スマート市民」および「スマート医療」である。

<スマート市民>
 現在、ヨハネスブルグ市は、今後のIT時代に活躍する人材の育成を行っている。その一環として、ICTリテラシーの普及と一般市民のWi-Fiへのアクセス促進に取り組んでいる。87の図書館のうち、66箇所に無料の高速Wi-Fiホットスポットがあり、その他にも408の無料Wi-Fiホットスポットが存在する。

 また、若者にテクノロジーに触れてもらう機会を提供する目的で「Jozi Education Digital Interns」というプログラムがある。このプログラムは、スマートシティの開発の基礎段階として、市が2015年1月に開始したものだ。具体的には、才能を持つ若者にベンチャーキャピタリストや起業家と対面してもらい、ハッカソンを運営してもらったり、デジタルソリューションを考えてもらうというものだ。

 こうして、現在、ヨハネスブルグには75以上の革新ラボやグローバルビジネスインテグレーターが存在し、世界最大のイノベーションネットワークを担っている。

<スマート医療>
 現在、ヨハネスブルグ市内の118の公立病院で、集中型電子患者記録システムが導入されている。これにより、医療スタッフは患者データに即座にアクセス可能になった。その結果、患者の平均待機時間が1人あたり10分程度に短縮されている。

 また、正しい衛生知識を積極的に普及させ、乳幼児死亡率の低下を目指す「Mom Connect」という情報サービスがある。同サービスには、米国保健省、南アフリカ保健省などの政府機関と、ジョンソン・エンド・ジョンソンなどの民間企業が協力して情報を提供している。

 掲載される情報は、南アフリカ共和国を対象とした、妊娠に関するさまざまなアドバイスや子どもの健康、衛生、伝染病などに関するものである。また、HIV/エイズ、結核、マラリアなどの感染病に関する、正確な情報も得ることができる。このサービスにより、乳児死亡率は40年前の1/3にまで改善した。今後もさらなる乳児死亡率の低下が期待できるだろう。

【次ページ】ツワネ、ケープタウンも、注目のスマートシティ
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