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三菱重工が苦しい経営を余儀なくされている。巨額損失を出した造船事業については、ようやく仕切り直しのメドが立ったが、今度は国産ジェット旅客機MRJを製造する三菱航空機が債務超過に転落。開発を継続するには、重工本体からの追加支援がほぼ必須の状況となった。三菱重工の現状と今後の展開について探った。
大型客船事業の巨額損失はようやくメドが付いたが…
三菱重工の2017年3月期決算は、売上高が前年比3.3%減の3兆9,140億円、営業利益が前年比51.4%減の1,505億円と、大幅な減収減益となった。純利益は前年比37.4%増の877億円を確保したが、ここには不動産の売却益などが含まれており、同社の経営状況をそのまま表わしたものとは言い難い。
これまで同社は、客船事業の巨額損失に悩まされてきた。2011年に米国のクルーズ会社であるカーニバル社から2隻の客船を受注。総トン数12万5400トン、3300人乗りの大型船で、本来であれば2015年3月に納入する予定だった。しかし、カーニバル側が求める内装を作れず、工事をやり直すという事態が頻発。受注金額をはるかに上回るコストが発生し、これが業績の足を引っ張っていた。
クルーズ船事業については累計で2,500億円以上の損失を出したが、今回の決算で、一連の損失にもようやくメドが付いた。ただ、客船事業においてこれだけの損失を出したという事実は、同社の造船部門に重くのしかかっている。
カーニバル社の案件では、Wi-Fiなど最新のネット接続環境を想定せずに基本設計を進めるなど三菱側の不備が目立った。これに加え、船の建造中に火災を起こすという不祥事も発生している。実は同社は2002年にも、建造中の大型客船を炎上させるという事故を起こしており、この時にも損失を計上している。大型客船事業における失敗は実はこれで2度目なのだ。
あまり報道されていないが、商船三井に納入したコンテナ船の船体が海上で損傷するというトラブルも発生しており、一部からは同社の技術力低下を指摘する声も上がっている。
こうした事態を受け、同社は昨年10月、造船事業の抜本的な見直しを発表した。造船事業のうち、10万トン以上の大型客船からは撤退し、内装工事などが簡便な中小型客船に特化することになった。LNG(液化天然ガス)運搬船など商船についても、専業メーカーである今治造船などと提携し、単独での事業を縮小する。
三菱重工は三菱財閥創業者の岩崎弥太郎が、明治政府から長崎造船所を借り受け、造船事業を開始したことが起源となっている(正式な払い下げは、弥太郎が没した翌年、弟・弥之助によって行われた)。造船事業は、いってみれば同社の祖業なのだが、大幅な事業縮小を余儀なくされた。
三菱航空機は自己資本を食いつぶし債務超過へ
だが同社が抱える難題はこれだけではない。国産初のジェット旅客機MRJを手がける三菱航空機が債務超過に転落しているのだ。
三菱航空機は三菱重工グループの航空機製造会社で、MRJの開発を担当している。MRJは当初、2013年に初号機を購入する予定だったが、設計変更が相次ぎ、開発スケジュールを5度も延期。現在は2020年半ばの納入を目指すという状況になっている。
機体を顧客に納入することができないので、三菱航空機は売り上げを立てることができず、開発費用がそのまま累積損失となっている。同社の自己資本は資本金が500億円、資本準備金が500億円の合計1,000億円だが、2016年3月期の決算では累積損失が約1,000億円に達し、自己資本がほぼ消滅した。2017年3月期の決算では、追加で510億円の損失が発生したので、債務超過に陥っている。
同社は三菱重工の傘下にあり、市場では重工と一体とみなされている。三菱航空機が債務超過に陥った以上、増資など何らかの手段で三菱重工が資金援助を行うことになるので、開発に大きな支障はないだろう。ただ、三菱航空機が債務超過に転落したという事実は、市場に対して相応のインパクトを与える可能性がある。少なくとも、三菱重工がどこまで資金面での支援を続けるのかという部分に市場の関心が集まるのは間違いない。
先ほど解説したように、客船事業の損失処理は何とかメドが立った状況であり、もうひとつの懸念事項であった原発建設に関連した約7,000億円の損害賠償についても、最終的には160億円程度に落ち着いている。今のところ、MRJへの追加投資を妨げる致命的なマイナス要因は存在していない。ただ同社に十分な財務的余力があるのかという話になると何とも微妙だ。
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