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  • 2016/02/01 掲載

米ボーイング会長が明かす「ボーイング 787は顧客のインスピレーションから生まれた」

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2015年で創業100周年を迎えた米ボーイング。世界トップの航空会社として、約16万人の従業員が民間航空機事業や防衛/宇宙/安全保障事業などに従事している。「しかし我々の100年は、まさにここから前に進むための機会だと捉えている」。そう語るのが同社会長のジム・マックナーニ氏だ。「過去の教訓から学び、長く明るい未来を作るために我々の役割を果たしていく」。その際に求められるのが、強力なリーダーシップだという。イノベーションの陰には、強いリーダーのブレない信念がある。

顧客中心のイノベーションを目指す

photo
ボーイング 会長
ジム・マックナーニ氏

 「第17回 日経フォーラム 世界経営者会議 2015」で登壇したマックナーニ氏は、冒頭でイノベーションとリーダーシップの関係について言及し、「すべての産業界におけるチャンピオンの陰にはイノベーションのストーリーがある。そしてそれを作ったのが、リーダーの忍耐や強靭性に他ならない」と指摘した。

「しかし現在は、100年前あるいは10年前とでさえ大きく異なる。ビジネスあるいはビジネスリーダーの持つ意味はまったく変わってきている。一方で所得水準や教育レベルの上昇が世界中で起こっており、これによって新しい顧客が生まれ、新しいモノやサービスも生まれた。かつてなかったビジネス成長の機会が数多くある。しかしそれは同時に非常にアグレッシブな競争相手も生むことになる。今日のグローバルビジネスにおいてリーダーは、さまざまな難しい問題に対処していかなければならない」(マックナーニ氏)

 それはボーイングにおいても同様で、顧客(=航空会社)はより高い性能や品質、効率性、信頼性を低価格で提供してもらうことを求めている。同社は環境にも配慮した製品をより低コストで作っていかなければならない。

「こうした環境の中で、我々はより少ない資源で、より多くの価値を提供できるように、顧客中心のイノベーションを実現したいと考えている。それは顧客が求めるもの、つまり“そういうものならお金を払ってもいい”と言ってもらえるようなイノベーションだ。一方でより効率よく運行できる製品ややり方、あるいは生産性の向上など現状を改善していくための取り組みも絶えず続けている。これをベースに既存の製品を割安にし、そして自己資金でカバーできるようなイノベーションを起こすことを目指している」(マックナーニ氏)

ボーイング787「ドリームライナー」は“航空業界のマジック”

 そんな同社が起こした代表的なイノベーションの例が、次世代の中型ジェット旅客機であるボーイング787「ドリームライナー」で、世界初の商業運航は、2011年10月のANA(全日本空輸)による成田-香港間のフライトだ。

「ドリームライナーは我々の最新ジェット機だが、これは顧客のインスピレーションで生まれた典型的なイノベーションの例だ。より少ない資源で、より多くの価値を提供している」(マックナーニ氏)

 2000年頃、ボーイングは高度な技術の開発に取り組んでおり、構想中だったほぼ音速で大陸間を飛ぶ「ソニック・クルーザー」という旅客機にその技術を使おうと考えていたという。しかし米国で同時多発テロが起こり、燃料費も上昇する中で明らかになったのは、顧客が求めているのはスピードではなく、効率を上げること、運用コストを下げることだったという。また目的地に向かう時に、乗客が望んでいるのは複数の乗り継ぎをハブで行うことではなく、都市間を直接結んで欲しいということも分かった。そこで同社は、ソニック・クルーザーの開発を2002年12月に中止し、顧客ニーズに沿った新たな技術の使い道を考え出した。

「顧客の声を聞くことで、我々はインスピレーションを得た。最先端のテクノロジーや材料、エレクトロニクス、空気力学を駆使して燃料を20%減らし、メンテナンスコストを30%減らすことを目標にした。これは大きなブレイクスルーだった」(マックナーニ氏)

 こうして誕生したドリームライナーは、同じサイズの航空機と比較した場合、騒音60%減、排気量20%減を達成した。腐食に対する機体の耐性も高く、機内の湿度を高く保つことができるために乾燥を抑え、乗客により快適な空間を提供することができる。

「こうした数々の機能性によって、ドリームライナーはホワイトボディの航空機の中では最も多くの受注を得ることができた。世界中の61の顧客から合計1124機の注文を受けており、これまでに41の顧客に対して343機を納めてきた。現在ドリームライナーは1日に600回のフライトをしているが、トータルでは35万9000回で搭乗した乗客数は約6800万人だ。この規模でのイノベーションは“航空業界のマジック”だと言える」(マックナーニ氏)

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