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  • 2016/10/24 掲載

IoTよりインパクト大!スマートマシンはなぜ「破壊的テクノロジー」なのか

GLOCOM 林雅之氏に聞く

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IoTが進展すると、次はスマートマシンの世界がやってくる──そう語るのは国際大学グローバル・コミュニケーション・センター(GLOCOM) 客員研究員で、総務省 AIネットワーク化検討会議(今後は、AIネットワーク社会推進会議 影響評価分科会)の構成員でもある林雅之氏だ。スマートマシンとは、人工知能(AI)を搭載し、自律的に行動する電子機械のこと。ガートナーによれば、スマートマシンはITの歴史において、最も破壊的なテクノロジーだという。スマートマシンとはいったいどのようなもので、これからの社会やITの世界にどのようなインパクトをもたらすのか。林氏に聞いた。
(聞き手:編集部 松尾慎司、執筆:西山毅)

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国際大学グローバル・コミュニケーション・センター(GLOCOM)
客員研究員
林 雅之 氏

スマートマシンの世界ではインテリジェントにサービス化され、自動化される

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──昨年10月に『スマートマシン 機械が考える時代』を上梓されました。このスマートマシンとは、いったいどのようなものなのでしょうか。

林氏:一言でいえば、AIを搭載し、ロボット/自動運転車/ドローンなどに代表される自律的に行動する電子機械、ということになります。日本ではIoTと混同して解釈される傾向が見受けられますが、私はIoTとスマートマシンには、大きな違いがあると考えています。

 まずIoTは、センサーなど静止したものから大量のデータを収集して分析するものですが、スマートマシンは、動いているマシン自体がリアルタイムにデータを収集/分析し、搭載されたAIがインテリジェンスに判断を下して、自律的に次のアクションを起こしていくものです。この点でスマートマシンは、ソフトウェアだけでなく、物理マシンも一緒に捉えた考え方だと言うことができます。

 また、あらゆるモノやコトがインターネットに繋がるのがIoTの世界だとすれば、それらがインテリジェントにサービス化され、自動化されるのがスマートマシンの世界です。

 さらにIoTに限らず、これまでのITはその効果を半年から1年、長くても3年といった短期的な視点で捉えていたと思いますが、スマートマシンは10年、20年といった中長期スパンでの取り組みが必要で、制度面の整備も併せて進めることで初めて、その効果を期待できるものだと考えています。

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IoTによるデジタルビジネスの時代を経た後にスマートマシンの時代が到来する

スマートマシンによるインパクトはIoTをはるかに凌ぐ

──スマートマシンによって得られる効果とは、どのようなものなのでしょうか。

林氏:スマートマシンの効果は、AI系とマシン系に分けられます。まずAI系ですが、搭載されたAIによってスマートマシンが自律的かつインテリジェンスに動くことで、知的労働の自動化が進みます。ある調査では、2025年に世界で5.2~6.7兆ドルの市場規模になると予想されています。

 一方のマシン系はクラウド利用をベースとするもので、2025年にはロボットで1.7~4.5兆ドル、自動運転車で0.2~1.9兆ドル、ドローンで820億ドル(米国内)と予想されています。

 これに対して2025年のIoT市場の予測は2.7~6.2兆ドルで、スマートマシンのAI系だけでもこれを上回っています。スマートマシンの市場インパクトがいかに大きいかを理解することができるでしょう。

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スマートマシンがもたらす市場インパクト

 ここで1つ注意しておきたい点があります。私はスマートマシンの効果をAI系とマシン系に分けてお話しましたが、スマートマシンを話題にする時、多くの人がAI系の話だけ、あるいはマシン系の話だけにしか、焦点を当てていません。両者が完全に分離してしまっているのです。

 スマートマシンは、AIとマシンが連携して初めて成立するものです。そしてそれが与える産業などへのインパクトを考えていく。今はまだ2つのストーリーが繋がっていませんが、両者を合わせた全体の世界観が必要なのです。

スマートマシンの構成イメージ、SDIはAIDIに

──林さんは総務省 AIネットワーク化検討会議の構成員も務められていますが、それがまさにAIとマシンの連携を考える取り組みの1つということなのでしょうか。

林氏:おっしゃる通りです。AIネットワーク化検討会議は2016年2月に立ち上げられたもので、会議の目的としては、技術的な研究というよりも、AIとマシン、あるいはAI同士が連携して社会に浸透していく時に、雇用や経済にどんなインパクトをもたらすのか、またどんなリスクがあるのかなど、社会的な影響について議論するものです。

 主な議題としては、AIネットワーク化が進展した「智連社会」における人間像とは、どのようなものか、AIネットワーク化の進展が社会にもたらす影響を評価するための指標とはどのようなものか、あるいはどんなリスク・シナリオが想定されるかなどで、今年6月にはAIネットワーク化検討会議の報告書「AIネットワーク化の影響とリスク-智連社会(WINSウインズ)の実現に向けた課題-」も公表しました。

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総務省によるAIネットワーク化検討会議の取り組み

──そうしたAIとマシンの連携が求められるスマートマシンは、具体的にどのような形で構成されるものでしょうか。

林氏:ベースとなるのはクラウドネイティブなプラットフォームで、その上にビッグデータ分析やAIのプラットフォーム、そして業種別のアプリケーションが載るイメージです。

 もちろん下位のインフラ領域も重要で、ネットワークの設計やセンシングの技術、ロボットや自動運転車など各マシン向けのOSやミドルウェア、さらにはハードウェアとしてのマシンをどうするかなどを考える必要があります。

 このようにスマートマシンはレイヤーが非常に横断的になるので、1社だけで作ることはできません。そこで各構成要素を取りまとめるインテグレーターが必要になります。このスマートマシンインテグレーターが、スマートマシンをファイナルコンシューマに届けていく。スマートマシンの発展と普及には、こうしたエコシステムを作る必要があります。

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スマートマシンの構成イメージ

 もう1つ、インフラの視点から言えば、スマートマシンが普及した世界はAI Defined Infrastructure、つまりAIによって定義され、自動化されたITインフラがベースになる世界だと私は考えています。

 ネットワークやデータセンタ、クラウドなどの運用がどんどん自動化されていき、今まで人間が設計していたデザインパターンを、AIがこうしたリソースがあるということを判断して、システムやクラウドの環境を自律的に構築運用していくイメージです。こうした部分は、まさにAIの得意とする領域でしょう。

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SDIはAIDIへと進展していく

【次ページ】スマートマシンによって実現される社会とはどのようなものか
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