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  • 2016/09/20 掲載

マシンラーニングが変える2020年のビジネス ヘルスケアなどAI活用5分野への影響とは

フロスト&サリバン連載 「TechVision:世界を変革するトップ50テクノロジー」

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テクノロジーの進化が企業のビジネスを変え、最新テクノロジーの理解と活用が企業の成否を分ける時代となった。本連載では、フロスト&サリバンが特定した今後数年間で大きなビジネス機会が見込まれる「TechVision:世界を変革するトップ50テクノロジー」の中から、これからのビジネスを変革するテクノロジーとその適用例を解説する。第一回目は、フロスト&サリバンジャパン ICTリサーチ部門 ディレクターのマーク・アインシュタイン氏が「IoT」「人材」「ビジネスモデル」「活用分野」の観点から「マシンラーニング」を解説する。
フロスト&サリバン ジャパン マーク・アインシュタイン

フロスト&サリバン ジャパン マーク・アインシュタイン

フロスト&サリバン ジャパン ICTリサーチ部門ディレクター。通信・デジタルメディア業界において10年以上の経験を有し、マーケットや経営コンサルティング、経営分析における専門知識を持つ。主な専門領域は、スマートフォンおよびタブレット端末の市場動向、モバイルコンテンツ分析などが含まれる。

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フロスト&サリバンが発表した「TechVision:新興テクノロジートップ50」。特定されたトップ50のテクノロジーは、今後2~3年間で世界的にビジネスに大きな影響を及ぼし、今後5年間で数兆ドル規模のビジネスチャンスをもたらすことが予測されている。


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「IoT」を管理する「マシンラーニング」

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 2016年は「IoT(Internet of Things)」の年として記憶されることになるだろう。自動販売機、牛、原子炉、経口摂取薬などの多様なものがインターネットに接続されている現在の状況を鑑みると、IoTはICT産業の次世代における中心的な地位を急速に確立しつつあると言える。

 規格・企業間の提携、ビジネスモデルといった面で、今後IoTが辿る道のりは長い。しかし、人工知能(AI)の研究課題である「マシンラーニング(機械学習)」がIoTに与える影響に関心が高まっている。ここでいうマシンラーニングとは、「人間によるインプットなしに時間とともに改善していくことができるソフトウェア・アルゴリズム(ソフトウェアの問題解決のための段階的手法)」を指す。

 IoTの中心的な役割が、「あらゆるモノをインターネットに接続する機能」から、「接続されたモノの管理」へと急速に移行しつつあるため、「IoTを管理するためのマシンラーニング」が現在これほど話題になっているのだ。現実の世界におけるマシンラーニングの活用が、この新たなテクノロジーの将来的な可能性を示唆している。

マシンラーニングをめぐる世界的「青田買い」

 マシンラーニング市場は急速に拡大しており、フロスト&サリバンの2015年の推計によると、マシンラーニングの世界市場規模は、2015年の3億米ドルから、2020年までには60億米ドルまで成長する見通しだ。それゆえ、業界では投資や企業買収が盛んに行われている。2015年に実施された人工知能に対する投資額は、グーグル、フェイスブック、バイドゥ、マイクロソフトによるものだけで90億米ドル近くにのぼり、現在ではスタンフォード大学、カーネギーメロン大学、トロント大学などの一流大学で人工知能を専攻する大学院生が、卒業前に引き抜きにあうことも多い。マシンラーニングの学位を有する人材の不足に加えて、大手のテクノロジー企業の影響力が業界内で増大していることにより、高額でのM&Aが今後加速していくだろう。

「明瞭なマシンラーニング活用法」と「不明瞭なビジネスモデル」

 従来、マシンラーニングは、オンライン検索、Eコマース、広告を中心に導入されおり、マシンラーニングに最も多くの投資を行っているのがグーグル、フェイスブック、バイドゥ、マイクロソフトである理由はここにある。

 しかし現在、これまでマシンラーニングと関連がなかった産業において、IBM Watson(以下、ワトソン)が主導する、従来とは異なる活用法が、急速に確立されつつある。5月、米国の大手法律事務所BakerHostetlerはワトソン上に組み立てられた「世界初のAI弁護士」を活用することを発表した。AI弁護士は、弁護士やパラリーガル(法律事務職員)が大量の法律文書を短時間で検討できるように補助するだけでなく、最も関連性が高い事例を、時間とともに独力で「学習」する。

 同様に、シンガポールのDBS銀行は、顧客関係の管理にワトソンを活用している。DBSの営業担当者は、顧客が興味を持ちそうな800部に上る大量の投資レポートを読むために、毎日2時間以上費やす必要がある。しかし、ワトソンはこれらのレポートを分析して提案を行い、さらには経験から学習することもできるため、膨大な時間を節約できる。

 医療業界においてもマシンラーニングに対する関心が高まっている。米国のクリーブランド・クリニックのように、ガン患者一人ひとりに合わせて個別化された治療を提供するために、ワトソンを活用しているところもある。産業におけるマシンラーニングの新しい活用法が、毎日のように生み出されている。IT業界でのマシンラーニングの受け入れも進み、運用コストも下がり続けているため、この傾向は今後も継続するだろう。

【次ページ】「不明瞭なビジネスモデル」と「今後マシンラーニングが変革する5分野」
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