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GEはかつての工業的な企業から、デジタル企業へと転身を図ってきた。同様に従来型産業に従事してきた企業も、デジタルに触手を伸ばそうとしている。GEデジタル シニア・ソフトウェア・マネジャーのデビッド・ビンガム氏は「その中で企業が考えるべきことは、自社の中にどんな新たな能力があるかということだ」と指摘、「またデジタルに取り組むことで生まれる新たな複雑性や課題についても考える必要がある」と強調する。こうした企業側の現状を踏まえ、GEが顧客とともにシステム開発を効果的、効率的に進めるための手法として、採用しているプロセスがあるという。
顧客エンゲージメントプロセスで「信念」を忘れてはならない
産業デザインやHCI(ヒューマン・コンピューティング・インタラクション)の分野で修士号を持つビンガム氏は、アプライアンス製品や家電製品に取り組むため、10年前にGEに入社したという。
「インダストリアルデザインの世界で有名なデザイナーに、ドイツ人のディーター・ラムス氏がいる。独ブラウン社で長年にわたってインダストリアルデザイナーを務め、家電分野のデザインを担当していたが、彼は“良いデザインとは何か”を考え、共通の特徴をリストアップした」
たとえば良いデザインには、邪魔にならない、有用性が高い、首尾一貫している、といった特徴があるという。
「私は彼の考え方にならい、こうした良いデザインに至るための“良いデザインプロセスとは何か”を考えた。そこでは、協力的であること、非常にクリエイティブであること、リスクに強いこと、必要最小限のプロセスであること、といった点が挙げられると考えている」
GEデジタルでは、システム開発において、顧客企業とのエンゲージメントを構築するための“良いプロセス(=エンゲージメントプロセス)”があるという。
「まず企業が何らかの行動を取ると、それに対する結果が出る。その結果に基づき、新たな行動を起こすと、また新たな結果が得られる。こうした行動を促すのは、企業の信念だ。得られた結果は、もちろん取った行動に基づいて考えなければならないが、その行動を起こすに至った信念からも捉える必要がある。エンゲージメントプロセスを考える上では、顧客企業の信念というものを忘れてはならない」
ビンガム氏は、システム開発にデザイナーが関わる理由として「システムに人が関わっているからだ」と説明する。
「エンジニアは複雑性の主人であり、デザイナーは簡潔さの主人だ。デザイナーは人という観点から、物事を明確化したり、将来どうなるかを考えたりする際の一助となる」
【次ページ】イントロから始めて、ループへと入っていくエンゲージメントプロセス
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