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  • 2016/04/20 掲載

プログラム自動生成ツール/テスト自動化ツールを比較・導入する際の4つのポイント

ガートナー片山治利氏が解説

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「アプリケーション開発(以下、AD:Application Development)の自動化」が徐々に広がりつつある。アジャイル型の開発手法の採用も増えつつあり、「プログラム自動生成ツール」や「テスト自動化ツール」を採用する企業も増えた。より速く、より効率的にADを行うことで、企業は他社に先駆けてソフトウェアを開発し、市場での優位性を確保でき、新たな革新的市場を開拓できる可能性を得ることができる。ここではAD自動化の現状と、AD自動化ツール選択のポイントについて考えてみたい。
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アプリケーション開発の自動化が広がっている

AD自動化ツールが最も有効な領域はどこか

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 まず、AD自動化の対象となるアプリケーション領域について整理しておこう。要は“AD自動化ツールをどんなアプリケーションの開発時に使うか”だが、これを考える上で役に立つのが「ペース・レイヤ」で、変更の頻度に応じてアプリケーションを3つのレイヤに分ける考え方だ。

 1つめが記録システムで、日々のトランザクションを粛々と記録するシステム領域だ。ここに属するアプリケーションは他社と同じ機能でよく、変更の頻度は一番低い。

 2つめが差別化システムで、他社との差別化や独自性が必要となるシステム領域だ。この領域のアプリケーションは、差別化を維持するために一定の頻度で手を加える必要がある。一般的に記録システムと差別化システムに該当するのが、基幹系アプリケーションだ。

 そして3つめが革新システムで、この領域では、今までにないアプリケーションを実験的に作っては修正する、ということを繰り返す。よって変更の頻度は一番高い。

 アプリケーションのデリバリー方法も、各レイヤによって適性が異なる。たとえば記録システムは、他社と同じものでいいのでパッケージやSaaSが利用できる。しかし、差別化システムや革新システムは、独自性が求められるので、自分たちで開発する必要がある。ここに自動化の余地が生まれてくる。とはいえ革新システムでは今までにないアプリケーションを作り出すことになるので、コーディングが向いている側面がある。結果、AD自動化ツールの採用には、基幹系アプリケーションの差別化システムの領域が最も有効と言える。

 そしてもう1つ、これからのデジタルビジネスの時代には、企業は2つの流儀(=バイモーダル)を使い分ける必要がある。従来型の品質/堅牢性重視のモード1と、スピード/流動性重視のモード2だ。ペース・レイヤとの関係でいえば、記録システムに近いほうがモード1で、主な開発手法はウォーターフォール型だ。一方、革新システムに近いのはモード2で、主な開発手法はアジャイル型となる。

 今後企業はAD自動化の対象システムを考える上で、この3つのアプリケーション領域と2つの流儀を念頭に置いておく必要がある。実際、これに取り組もうとする企業は増えている。以下は、現在/今後のアプリケーション開発手法と現在/今後のアプリケーション開発ツールについて調査を実施した結果だ。アジャイル型開発を採用するとした企業が23.7%おり、プログラム自動生成ツール、テスト自動化ツールの採用を予定する企業が半数近くにのぼった。

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アジャイル型開発、プログラム自動生成ツール/テスト自動化への調査
(出典:ガートナー)


差別化システムにAD自動化ツールを採用した2つの事例

 では実際にどのような効果があるのか。AD自動化ツールを採用した大手企業の事例を2つ、紹介しておこう。いずれも基幹系アプリケーションの差別化システムの領域だ。

 1つめが、AD自動化ツールを使ってCRMアプリケーションを短期開発したソフトバンクの事例だ。

 同社は2015年、クラウド型コンタクトセンターのサービスを提供開始したが、当初顧客管理はサービスの運営部署であるBPO部門がExcelを使って行っていた。しかし、案件単位の情報共有や進捗管理など、処理プロセス上でさまざまな課題があり、情報の一元管理や入力効率の向上、データの信頼性の確保などに対応する必要があった。

 しかしこの領域は、小規模で低予算ということもあり、IT部門の手がなかなか回らなかった。そこで最初はCRMパッケージを導入しようとしたが、機能が多過ぎて、コストが見合わずに断念。そこで採用されたのが、Javaベースのプログラム自動生成ツールである国産のWagbyという製品を使って、CRMアプリケーションを開発する方法だ。ツールの採用理由は、操作が覚えやすかったこと、価格が非常に安かったことだ。

 この開発プロジェクトでは、Javaの経験がないあるIT部門の担当者1人が、SI企業の支援を受けながらAD自動化ツールを使ってわずか1か月で、案件管理やマスタ管理といったCRMの基本機能と工数管理の機能を作り上げた。さらにプロジェクト中は、ユーザー部門から出される要件に対して“それはできない”と答えたことが一度もなかったという。ユーザーの要望をすべて聞いた上で、差別化につながるアプリケーションを1人月で作ったというこのスピード感が、今の日本企業に求められていることだろう。

 2つめは、事業部が主導して基幹系アプリケーションを作ったパナソニック エコソリューションズ社 ハウジングシステム事業部の事例だ。

 同事業部では、ハウジング商材を製造連結会社からOEM直販することで売上拡大を目指そうと考えたが、製造連結会社にはその際に必要となる受注、発注、出荷、生産指示といったシステムがなく、当然エコソリューションズ社とのシステム連携も図られてはいなかった。

 そこで同事業部は、ウルグアイ製のGeneXusというAD自動化ツールを採用し、SI企業の支援も受けて製造連結会社に必要なアプリケーションを開発した。開発の進め方としては、基本設計の後、プロトタイプを作っては修正するという反復型の手法を採り、非常に少人数で約3か月で完成させた。本番稼働後のメンテナンスも事業部で内製化している。

 ただし、全社的なIT統制とのすり合わせや、エコソリューションズ社の経理システムとの連携には工夫が必要だったという。やはり事業部でツールを使う場合には、全社IT部門とも相談をして、ツールの使い方の標準化を図るなど、一定のルール作りを行うことが求められることになる。

 今、IT部門は事業部から「売上拡大のために新サービスを立ち上げるので、そのための基幹系アプリケーションを作ってほしい」と言われることがあるが、それを3か月で提供することができるだろうか。この事例は、AD自動化ツールの採用が、ビジネスニーズに俊敏に応えられることをまさに実現した好例だ(※なお、GeneXus採用はパナソニックグループ全体の取り組み方針ではない)。

 ほかにもさまざまな事例はあるが、以下に実際の事例で用いられた各種ツール一覧を記載しておく。

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今回の事例で採用されている自動化ツール
(出典:ガートナー)


【次ページ】AD自動化ツールの選択時に留意すべき4つのポイント
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