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- 2015/05/08 掲載
ウォーターフォールとアジャイル、2つの開発手法を連携して使いこなす3つのポイント
ガートナー片山治利氏が解説
IT部門はビジネス重視に思考を変えることが必要
エンタープライズITの歴史を振り返ると、大きく3つの時代に分けられる。1つめが「職人技の時代」で、この時はエンジニア一人一人の技術に焦点が当てられており、管理対象となるのはプログラミングなどだった。またIT部門は社内ユーザーや社外の顧客との接点はほとんどなく、ITとしてのアウトプットは個別システムなど狭い範囲に限定されていた。
2つめが「産業化の時代」だ。この時代は開発のプロセスに焦点が当たっており、IT全体を管理することが求められた。IT部門は社内ユーザーとの関わりは増えてきたが、社外の顧客との接点は非常に限られており、成果はサービスやソリューションだった。
そして3つめが「デジタル化の時代」で、ここでは「新しいビジネスモデルがどうあるべきか」に焦点が当たっている。新しいITを活用して、ビジネスをリードしていくデジタルリーダーシップが求められており、IT部門は社内ユーザーと、パートナーとして協働し、社外の顧客に向き合う必要がある。そして今までにはないビジネス上の価値を提供することが要求されている。
現在グローバル企業は、デジタル化の入り口にいると言えるが、日本ではまだ「職人技の時代」や「産業化の時代」にいる企業が多い。しかし確実に「デジタル化の時代」へと向かっており、それに伴って、ITを取り巻く環境も大きく変わってきている。
デジタル化の時代には、IT部門は事業部門と協働すべきだと先述したが、この時に理解していただきたいのは、IT部門からビジネス部門に寄り添っていく、あるいはIT部門がビジネス重視に思考を変えていくことが大事だということだ。
この変化をIT特性の視点から見てみると、今までの長期安定志向から、瞬発力志向への変化が求められるということである。いわば前者はマラソンランナータイプで、品質や堅牢性を重視する。開発の主体はIT部門で、開発の方法論はウォーターフォール型となる。我々はこれをモード1と呼んでいる。
これに対して後者はスプリンタータイプで、スピードや流動性を重視する。そのためには失敗してもチャレンジを繰り返すことが許される環境が必要で、またビジネス重視、顧客重視で、より短期で成果を挙げることが求められる。ビジネス部門が主体となって開発を行う場合もあり、開発の方法論としては、アジャイル開発やリーン開発方式、小さなフォーターフォールを繰り返す反復型が挙げられる。こちらがモード2だ。
ただし繰り返しお伝えしたいのは、すべての日本企業が明日からすぐにスプリンタータイプになって欲しいということではない。あくまで企業にはモード1、モード2の2つのタイプ(=2つの流儀)が必要だということである。バイモーダル開発を重視する姿勢は、ガートナーの2014年CIOサーベイからも見て取れる。世界のCIOに比べると、日本のCIOはやや伝統的アプローチが多い傾向にあるが、モード2型のアプローチも一定程度採用されている。
アプリケーションは、変更の頻度に応じて3つのレイヤに分類する
実際に、アプリケーション開発のバイモーダル化について見ていく前に、少しガートナーの提唱する“ペース・レイヤ”という考え方について紹介しておきたい。ペース・レイヤは、アプリケーションを変更の頻度に応じて3つのレイヤに分類する考え方で、下から順番に記録システム→差別化システム→革新システムとなる。まず記録システムは、明確に定義された業務プロセスを持ち、法規制への対応などが変更の主な理由となる。そのため変更の頻度も低い。次に差別化システムは、他社との差別化要因を生み出すためのもので、差別化を維持するために1~3年といった一定頻度で変更していく必要がある。そして革新システムは、うまくいけばビジネスに非常に大きな変化をもたらすような業務やサービスを実現するためのもので、作っては直すという作業を繰り返し、うまくいかなければ破棄する。一番変更の頻度が高いレイヤだ。
ここに開発手法を当てはめてみると、やるべきことが明確な記録システム近辺はウォーターフォール型が向いており、先のモード1に相当する。一方、試行錯誤が必要な革新システムに向かうに従い、アジャイル型やリーン方式などが向くモード2となる。
【次ページ】通販テレビショップなどの事例に学ぶ
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