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- 2015/11/30 掲載
マツダが、独VWによる「ディーゼル風評被害」をチャンスに変えられる理由
北米、ヨーロッパで稼ぐマツダの好決算
独自の環境技術「スカイアクティブ」を搭載した新型「ロードスター」「CX-3」「デミオ」は国内販売実績上々。北米ではこれも「スカイアクティブ」搭載のSUV「CX-5」の改良モデルや新型「マツダ2」(日本名はデミオ)の販売が非常に好調だった。為替の円安による効果は想定以上で、原材料安でコスト削減も進み、営業利益は9%減の減益予想が増益にひっくり返っている。最終利益の減益は、前期に計上した税務上の繰越欠損金がなくなって、今期から税負担が増えるという税務会計上の理由。
マツダは2016年3月期の通期業績見通しを、売上高は1,200億円積み増して7.1%増から11.1%増の3兆3,700億円に、営業利益は200億円積み増して3.5%増から13.4%増の2,300億円に、経常利益は150億円積み増して1.1%増から8.2%増の2,300億円に、当期純利益は150億円積み増して11.8%減から2.4%減の1,550億円に、ぞれぞれ上方修正した。前期から5円増の15円の予想期末配当も、前期から20円増の30円の予想年間配当も修正していない。4~9月期の通期見通しに対する進捗率は、営業利益は54.7%、最終利益は56.9%だった。
主要市場の北米、ヨーロッパで好調で、国内市場でも投入したばかりの新車が好評で販売台数が増加している。為替の円安効果、原料安によるコスト削減効果も出ていることから、業績見通しを上方修正した。
ディーゼル車で「ニッチトップ」になれる
マツダと言えば、その技術の代名詞は「昔、ロータリーエンジン。今、スカイアクティブ」。どちらも、日本メーカーでひとり「我が道を往く」マツダにとって新旧の看板技術である。ロータリーエンジン車は今秋の東京モーターショーで復活をアピール。新しい環境技術「スカイアクティブ」によって排気が浄化された「クリーンディーゼル」車は今や、マツダの最大の戦略商品と言える。国内販売が好調の「CX-5」「デミオ」はディーゼル車の販売比率が高く、今年2月には国内乗用車販売台数に占めるディーゼル車の割合が日本の乗用車メーカーで初めて5割を超え、現在もその水準を維持している。
その2月の新車発表会で「CX-3」がお披露目された際、小飼雅道社長は「『CX-3』は国内ではディーゼル仕様車のみ販売する。ディーゼルの普及にチャレンジする」と発言し、居合わせた人たちを驚かせた。なぜなら、その時点で国内新車登録台数(登録車)に占めるディーゼル車の割合は3%にも満たなかったからである。
企業の成長戦略の一つに、すき間の小さな市場でトップシェアを取る「ニッチトップ」というのがある。当たるかどうかわからないというリスクはあるものの、もしその市場が急拡大すれば、後から他社が参入して追いかけてくる前に大きな先行者利益を手にすることができる。マツダが目指したのはまさにそれで、「我が道を往く」のが好きな、いかにもマツダらしい戦略と言えるだろう。
その2月の時点では自動車業界周辺で大きな話題だったのは究極のエコカー「燃料電池車(水素自動車:FCV)」で、「環境にやさしいクルマ」と言えばもっぱらハイブリッド車(HV)や電気自動車(EV)のキャッチフレーズ。その一方でディーゼル車のイメージは良くなかった。
かつて石原慎太郎東京都知事(当時)が、記者会見で煤煙の黒いススが入った試験管を振って見せて大型ディーゼル車の乗り入れ規制を訴えたことも生々しい記憶に残り、燃費の良さなどのメリットが帳消しにされ「空気を汚すクルマ」という、文字通りの汚名を着せられていた。そのため日本では、ディーゼル車はニッチな存在になっていた。
だが欧米、特に西ヨーロッパでは、ディーゼル車はニッチどころか主流になっている。90年代までは30%以下だったディーゼル車の比率は21世紀に入るとにわかに上昇し始め、2013年にはガソリン車を逆転した。VWもBMWもルノーもフィアットも現在、新車販売台数に占めるディーゼル車の比率は5~6割に達している。
ヨーロッパでは、ディーゼル車に「空気を汚すクルマ」という悪いイメージはない。煤煙のススも、粒子状物質(PM)も、光化学スモッグの原因になる窒素酸化物(NOX)も除去するクリーンディーゼル技術が確立している上に、燃焼効率が良いためガソリン車よりも二酸化炭素の排出量が小さく、その分、燃費も良いというメリットがある。燃料の軽油も価格が安い。それが「エコカー」としてヨーロッパでの人気につながっている。
マツダは、国内市場でそれに賭けた。燃料電池車でもHVでもEVでもなく、あくまでも内燃機関で、スカイアクティブで環境性能を高めたクリーンディーゼルに。
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