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  • 2013/05/21 掲載

今さら聞けないアジャイル開発の基本、発注側にも求められる変化

「わかりやすいアジャイル開発の教科書」の著者に聞く

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ソフトウェア開発の現場では今や一般的になった「アジャイル開発」。アジャイルの1つ「スクラム」は、一橋大学名誉教授の野中郁次郎氏がハーバードビジネスレビュー誌で発表した「The New New Product Development Game」に発想の基盤を持つ。しかし、導入事例が増える一方で、その実態をつかめず戸惑う人も少なくないようだ。そこで、3月に上梓された「わかりやすいアジャイル開発の教科書」の著者で、今もアジャイル開発の現場で活躍する前川直也氏、西河誠氏、細谷泰夫氏に、アジャイル開発の基本と魅力、そして発注者側に求められるポイントなどについて話を聞いた。

アジャイル開発のルーツは日本

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西河誠氏
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前川直也氏
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細谷泰夫氏
──そもそもアジャイル開発はどのような経緯で登場したのでしょうか。

西河氏:アジャイル開発は2001年に著名なソフトウェア技術者たちが集まって「アジャイルソフトウェア開発宣言」が宣言されたことがスタートで、これに関心をもった技術者も多くいたのですが、実際にソフトウェア業界に大きくアジャイル開発が拡がったのは「スクラム」がきっかけです。スクラムでは認定スクラムマスターという資格を制定するなど、体系化し導入しやすく組み立てられており、3~4年前に北米を中心とした第2次アジャイルブームを巻き起こしました。

 アジャイル管理ツールを開発・提供するAgileOne社は毎年統計レポートを発表しているのですが、それによると2年ほど前からブームが顕著になっており、今では新規プロジェクトはアジャイル開発するのが当然のレベルです。

 日本でも以前からアジャイル開発に興味があり、試行錯誤しながら取り入れていたメンバーがいたんですね。日本のアジャイル開発の第一人者、平鍋健児氏などが挙げられます。そんな彼らは、2009年頃の北米の第2次アジャイルブームを見て、マネジメント層を巻き込んだビジネスレベルの展開が日本でも可能なのではないかと考え、アジャイルジャパンを設立しました。私は実行員として参加しています。これが現在のブームの引き金になっているのかもしれません。

前川氏:すでに水面下で実践を積んでいた人たちがいたからこそ、アジャイルをやろうという機運につながったのだと思います。たとえばドラクエ10はアジャイル開発したというニュースがありましたが、大きなインパクトがあったと思います。大きな事例が見えて初めて挑戦してみようと思う人がでてきたのだと思います。

 そもそも、スクラム自体が日本を代表する経営学者の野中郁次郎氏がハーバードビジネスレビュー誌で発表した「The New New Product Development Game」を発想の基盤としているんです。実は野中氏はそれをご存じなくて、平鍋氏がお声をかけたときに世界で流行っていると初めて知って驚いたそうです。スクラムには、みんなで集まって1つの価値を作ろうという、日本的な和や調和が根底にあるんです。

アジャイル開発は手法ではなく考え方

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──その一方で、アジャイル開発にはTDD(テスト駆動開発)やリファクタリング、継続的インテグレーションなどさまざまな技法があり、取り入れやすいように見えるのですが、いざふたを開けてみると本質が見えず、分かりづらい印象があります。

西河氏:原因は、アジャイルは手法ではなく考え方や姿勢を説いたものだからだと思います。「アジャイルソフトウェア開発宣言」というのがあるのですが、これがまさにアジャイルの考え方を表現しています。アジャイルの目的は、顧客価値や目的を最大化することです。そのためには、発注側と受注側がコミュニケーションをとりながら、価値を最大化できるよう柔軟に動くことが重要となります。

前川氏:これまでのソフトウェア開発は予算や計画を決定してから、それを確実に実行することが求められました。しかし、それでは市場のニーズに機敏に対応できません。

西河氏:私は現在、家電と連携するスマートフォンアプリの開発を担当しているのですが、スマートフォンの進化は非常に早く、Androidは3か月に1回バージョンアップするなどハイペースで変化します。つまり、あらかじめ設計や計画を固めていると、アプリができあがるころには時代と合っておらず、ビジネス価値も最大化されません。

 アジャイル開発を現場に取り入れた結果、今は1~2週間でプロトタイプを作り、顧客に見てもらいながら変更を加え、同時にバージョンアップや新規アプリの情報も取り込んでいけます。そうすることで、当初考えていたものよりも良いアプリができあがります。

前川氏:考えを共有するという点も重要です。一部の人がビジョンや仕様書をまとめて、作る側はただ作るだけ、では今や変化に対応できません。また、ただ 「アジャイルやるぞ!」だけでも成功しません。アジャイル入れても失敗する理由は、何のためにアジャイルをやるのか、そもそも顧客が作りたいものは何かを理解・共有しており、作ったら作ったモノを顧客と一緒に確認するという、非常に“当たり前”のステップが抜け落ちているからです。

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