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- 2013/11/07 掲載
アジャイル型開発やリーンの実践事例、マネックスCTO ピーテル・フランケン氏が語る
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4つの課題に対して有効な「アジャイル」と「リーン」
はじめにアジャイルとリーンの概要について簡単に触れておこう。前者は一般的にアジャイル開発という言葉で使用され、アジャイル(=agile:俊敏な、機敏な)という名の通り、コアとなるシステムを小さく作ってまずは動かし、ビジネス側のフィードバックを受けながら繰り返し改善を加えることで完成形に近付けていくというシステム開発手法だ。一方、後者は『リーン・スタートアップ』という書籍でも紹介されたように、リーン(=lean:引き締まった、無駄の無い)の意味通り、投下コストを最低限に抑え、短期サイクルでの仮説検証を繰り返すことで、市場や顧客が求める製品/サービスをより速く提供することを目指すマネジメント手法である。Gartner Symposium/ITxpo 2013で登壇したフランケン氏はアジャイルとリーンを次のように評価した。
「これらの手法は、時間管理、リスク管理、コスト管理、顧客の声を理解する、という4つの課題に対して非常に有効となるものだ」
「代わりにプロジェクト期間を短くして、何回も繰り返すというやり方のほうが、環境変化に合わせてより柔軟に要求を変更していくことができる」
また大きなITプロジェクトは、リスクを想定し、その対策を立てるのも大変だ。さらに失敗した時には莫大なコストがムダになり、ビジネスチャンスも逸することになる。
「そこでスモールスタートを切れば、リスクを潰していくことも容易だ。また規模が小さければコスト管理もしやすく、仮に間違いが発生しても、大きなお金をかけることなく軌道修正することができる」
さらにインターネット時代に入り、企業が提供するITは社内ユースだけでなく、“顧客が直接利用するもの”という性質も帯びるようになってきた。
「その顧客の声をどう聞くか。一回作って終わりではなく、何回もフィードバックを受けながら、顧客のニーズにより合致した仕組みを作り上げていくことが重要だ」
アジャイルで約1年間に4回のβ版を提供し、顧客向けサイトを完成
次にフランケン氏は、自身がCTOを務めるマネックス証券のアジャイルに対する取り組みについて言及した。「我々は2週間サイクルでソフトウェアを作り、ユーザーからフィードバックを受けて、改善を繰り返す。プロジェクトマネジャやエンジニアなど、プロジェクトチームは同じ室内にいて、進捗状況をメンバー全員で共有しながら開発作業を進めている。そして成果物を3か月間単位でリリースする」
各タスクは、さらにメンバーごとのタスクにブレイクダウンしてポストイットに書き、ボードに貼って、TO DO/DOING/DONEといった進み具合に応じて、貼る場所を移動させていく。1つのポストイットは約2~3日間のサイズだ。
「こうした体制と進め方で、約2週間で1つのソフトウェアを作り、その後、社内ユーザーもしくは顧客に出すということを繰り返すのが基本的なやり方。非常にフレキシブルで、ちょっと違うとなった場合でも変更しやすい。ゴールはユーザーや顧客に対して、一番いいサービスを提供すること」
この手法によってマネックス証券が実際に構築したものが、個々の顧客に対して最適な資産設計をアドバイスするための「MONEX VISION β」というツールだ。
2010年1月、まず100名の顧客に限定してβ1版を提供し、その声を聞いて改善を行った。次に同年3月にβ2版を1000名限定で提供、改善を行い、同年10月にβ3版を全顧客に対してリリースした。ここまでが約10か月間だ。
さらに3か月後の2011年1月のβ4版では他社サイトも一元管理できるアグリゲーション機能を追加、同年10月には2011年度グッドデザイン賞を受賞した。
「こうしたプロジェクトを進める時に、社内でいくら考えても最適な将来像を描くことはできない。顧客に使ってもらい、その声を聞きながらでなければ絶対に作れなかった」
【次ページ】ボランティアグループでの活動に「リーン」を有効活用
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