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- 2023/12/11 掲載
不況で進化「中国クーポン戦略」が面白い、「新規顧客40%増」絶大な効果生む仕組み
「消費マインドの萎縮」と戦う飲食チェーン
2023年に入って、中国の消費者のマインドが大きく変わった。消費者物価指数(CPI:店頭での実勢価格)、生産者物価指数(PPI:出荷価格)を比べると、2022年は原材料費が高騰し、両者とも同時に上昇した。原材料費の値上がり分を消費者に転嫁ができていた状態だ。しかし、2023年に入ると、生産者物価指数は上昇傾向であるのに、消費者物価指数が下落を始めた。値上げに疲れた消費者が高いものは買わなくなり、値下げされた商品、優待クーポンのある商品を買う傾向が強くなったため、小売店は価格を下げざるを得なくなっているのだ。
さらに、商品種類別の消費者物価指数(CPI)を見ると、食品と生活用品という必需品では下がる傾向にあり、衣類や住宅用品といったすぐに必要ではない商品では微増傾向にある。
このような消費マインドの萎縮の中で、中国企業、特に飲食チェーンの「クーポン手法」が進化している。
中国で生き残る飲食チェーンの巧みなクーポン戦略
中国で成長する飲食チェーンは、どこもクーポン戦略が巧みだ。特に、スマホ決済やモバイルオーダーが登場して、注文と決済がスマートフォン内で完結できるようになってからは、電子クーポンが注文/決済アプリ内に収納できるようになり、高い効果が出るようになっている。紙のクーポンは、消費者に保存や提示といった手間をかけさせるため、クーポンを利用するのは、その飲食チェーンをよく利用する常連顧客ばかりになりがちだ。クーポン配布は新規顧客の獲得などが目的であるのに、紙のクーポンでは常連顧客の客単価を下げるだけの結果になってしまうことが多い。一方、電子クーポンでは、新顧客の獲得、新メニューのお試し、リピート率の向上など、チェーン側の目的にそった設計がしやすい。
日本ではあまり見かけないが、中国や欧米では「買一送一」「buy one get one free」という「1つの値段で2つ買える」セールスプロモーション手法が昔から見られる。この「買一送一」は、不人気商品の在庫一掃にも利用されるが、賢い商店主は巧みに新規顧客の獲得に結びつける。それは、2つもらっても消費しきれない商品で買一送一を行うことだ。
2017年に創業し、2023年のQ2、Q3で、スターバックス(中国)の売上を抜き、ついに中国No.1のカフェチェーンとなった「瑞幸珈琲」(Luckin Coffee:ラッキンコーヒー)は、この買一送一を巧みに利用してきた。 【次ページ】「スタバ超え」果たしたラッキンの賢いクーポン戦略
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