クレームを幸運に変える「ラッキーコール」システムを構築

　山崎は早速、社員のスケジュール管理システムとして「サイボウズ」を導入。全社員のスケジュールが一目でわかるようした。ダブルブッキングがなくなったうえに、情報共有が簡単になった。

　また、「サイボウズ」のデータベース「デヂエ」を使い「ラッキーコール」というシステムを構築している。これは、顧客からのクレームがあったときなどに即座に対応するためのシステムだ。クレームについて通常はアスクルが対応するのだが、山崎文栄堂では自分たちの顧客を自分たちで大事にしたいという理念があり、直接対応している。クレームが解決するまで、データベースとして追えるようになっている。クレームは嫌なものと考えがちだが、きちんと誠意をもって対応することで、次のチャンスにつなげるものという意味合いを込め、ラッキーコールと名付けられている。

　急な案件や顧客との問題、トラブルがあったときには、山崎を含め関係者の携帯電話に一斉に情報が行く「ボイスメール」（声のEメールシステム）を組み合わせることで、外出中や土日でのトラブルでも迅速な対応が可能となった。


IT投資は少しずつ積み重ねていくことが必要

「当社はITに大したものを使ってないんですよ。その代わり“社員全員が”使っているのが大きなところです。これがないと仕事ができないくらいまで共有し、徹底的に使っていくことが大事なんです。ただ、ITというと、口で言えばいいのにメールにしたり、その良いところを理解せず使われたりしていますよね。じつはアナログでやったほうがいいこと、デジタルでやったほうがいいことの両方があるので、それを使い分ける必要があります。

たとえばうちでは、お客様情報などなどのデータのインプットはデジタル、実際のお客様への対応といったアウトプットは直接お会いするというようなアナログ的方法をとっています。ITを導入したおかげで“明るく”なりましたね。今後もお客様と社員が元気になれるIT投資を目指しています。しかし、お金をたくさんかければいいってものじゃありません。大金を投資したシステムは、容易には捨てられないし、簡単に変えるわけにいかなくなる。すると、進化が止まってしまう。進化が止まることは会社で一番まずいことです。それを避けるためにも、IT投資については、少なく積みかさねて行くことを心がけています」と山崎は語る。

　山崎にはITで実現させたいことがある。それは、「仕事を楽しくすること」「お客様を感動させること」だ。そのために、全社でクレームだけでなく、楽しさや感動を共有するシステム作りに励む。今の山崎文栄堂を見れば、町の文房具屋のきめ細やかさを残しながら、確実に成長し進歩してきているのがわかる。「オフィスのソムリエ」を目指す山崎文栄堂が担う素敵なオフィス作りに、明るい社員たちとITが役立っている。


[会社プロフィール]
■データ
株式会社山崎文栄堂
代表者名　代表取締役社長　山崎　登
設立年月日 1974年4月1日
資本金 1000万円
売上高　25億円（2005年度8月期）
本社所在地 〒150-0002　東京都渋谷区渋谷4-5-5
従業員総数 22名（2006年3月末現在）
電話番号 03-5464-7110（代表）
ホームページ　http://www.bun-eidou.co.jp/

■事業内容：
・オフィス用品通販 アスクル（東京西エリアトップエージェント）
・結果を出すオフィス空間『結果が出るオフィス』事業
（販売先総数： 約2万5000社）

山崎氏のインタビューは、早稲田大学 小尾教授監修の書籍『日本の情報システムリーダー50人 ビジネス戦略とIT活用の実例』（ソフトバンク クリエイティブ）に掲載されています。お求めはこちらから。